其の302:鬼才アレックスと会う^^

 タイトルに「アレックス」と書きましたがキューブリックの映画「時計じかけのオレンジ」の主人公のことではありません。「レポマン」や「シド・アンド・ナンシー」で知られるパンキッシュな映画監督アレックス・コックスのことであります。その彼が5年ぶりの新作「サーチャーズ2.0」のPRで来日していて(=本人曰くドラマ「濱マイク」の演出以来だそうな)試写会終了後に登場、質疑応答が行われたわけ。その試写会場にいた筆者もつい2つほど彼に質問し、ご本人と短時間ながら通訳を介してトークしたのであ〜る(=自慢っす)。そんなことも大いに関連して予定を大変更「サーチャーズ2.0」を紹介!なんせ来年の1月公開予定なので、いまの時点でこの映画観てる日本人、まだ数百人程度しかいないと思うんだけど・・・今回はなんか誰も観てない映画なのに平気でランクインしてる「映画秘宝」の年間ベスト10みたいな「掟破り」な回ということで(笑)。


 米・ロス。落ちぶれて日雇い仕事で日々の糧を得ている中年俳優メル(コックス組のデル・ザモラ)は、ひょんなことから同じく落ちぶれた年配俳優フレッド(同じくコックス組のエド・パンシューロ)と知り合う。フレッドの部屋でTVをみていた2人は、往年の脚本家フリッツ・フロビシャー(歌手としても活動していたサイ・リチャードソン)がモニュメント・バレーにある宿泊施設でサイン会を開く告知CMを見る。メルとフレッドは子役時代、ある西部劇作品で脚本を担当していたフリッツに現場で虐待されていた過去があった。「あいつに復讐してやろう!」フレッドの提案に乗ったメルは娘を巻き込んで(=車のドライバー代わり)一路、モニュメント・バレーを目指すー!
 ちなみに御大は監督・脚本のほか編集から出演(台詞あり)の1人4役をこなしております^^


 多少なりアレックス・コックスのこと&西部劇に詳しい映画オタクであれば思わずニヤリとしてしまう内容ー彼は無類の「西部劇ファン(マカロニウエスタン含む)」で有名だし、モニュメント・バレーはジョン・フォード作品で御馴染みの「西部劇の聖地」。そしてタイトルの「サーチャーズ(SEARCHERS)」とはジョン・ウェインが<復讐>の鬼と化した名作西部劇「捜索者」(’56)の原題!彼が自分の趣味全開で楽しみながら製作している姿が目に浮かぶ(筆者は)。どうも日本の配給会社は今作にカッコいいポスターとキャッチコピーを用意していますが、その実態はロードムービーのスタイルをとったオフビートのコメディー。「脚本家を殴りにいく年寄り俳優」という設定自体、全然ハードじゃない(笑)。「何故、脚本家と俳優にしたのか?監督がプロデューサーを殴りに行く方がリアルじゃないか?」という筆者の質問に、アレックスは笑いながら「その方がより馬鹿馬鹿しくなると思ったから」だって(笑)。


 来日したコックスはメタボとは無縁の細身にオールバック。ラフな服装で笑顔を絶やさず、以前写真でみた姿と変わらず若々しかった。すでにもう50代ではあるのだが・・・インディーズ魂は健在!なんと今作は自らのHPに企画と条件を掲載して(!)出資者を募り(=ハリウッドスター2人のキャスティングと大型予算を組むといってきた大手スタジオを彼は袖にした)結果、あのロジャー・コーマン(もう80代!!)を<エグゼクティブ・プロデューサー>に迎えて製作開始。初めてデジカメを使って(コーマンからの「35ミリカメラを貸そうか?」という提案を断った)10名ほどのクルーでたった15日間で全ての撮影を終わらせたそうだ。自らデジカメを回してた晩年の石井輝男を思い出したわ(涙)。


 タランティーノを思わせる映画談義あり(=多少、架空の作品も交じっているのでご注意)、マカロニウエスタンのオマージュあり(=音楽は絶対エンニオ・モリコーネを意識してる)、アメリカ批判に文明批判あり(=登場人物たちが携帯電話依存症)となかなか面白い映画でしたよ(途中、あるシーンで中だるみしたのが残念だったが)。これから日本でも本格的に宣伝がスタートするのでこれ以上内容については書きませんけど(クライマックスは「ジャンゴ」と同じ衣装を着た脚本家相手に何故か低レベルの「続 夕陽のガンマン」状態になって爆笑)上映後の「質疑応答」では、復讐西部劇で一番好きな映画はセルジオ・コルブッチの「殺しが静かにやって来る」とか(筆者と同じ!)、イーストウッドよりはブロンソンが好きとか(みうらじゅんが喜びそ〜)「いまのアメリカの著作権の考え方はなってない」とか色々興味深い話が聞けて良かった。
 

 筆者がした質問の2つ目「劇中、室内の場面でセルジオ・レオーネの映画「ウエスタン」の巨大ポスターが貼ってありましたが、あれは監督のコレクションですか?」するとコックス「あれはフランスの××に貼ってあったものを××××(=アブないので自主規制)」。「インディーズ映画は友人の持ち物そのほか、フルに活用しなくてはいけない」・・・う〜ん、なるほど(笑)!
 ちなみに次回作(来年、撮影開始予定)は「レポマン」の女バージョンということで(今回の娘役の女優も出るらしい)無事に映画が完成することを祈ります^^


 <どうでもいい追記>そういえばYOSHIKIが音楽を担当する予定の劇場版アニメ「ベルばら」の製作はどうなったのだろうか(来年1月に「ボトムズ」の映画をやるのは嬉しいが)?あと日本文学史上最大最凶の大怪作「家畜人ヤプー」の実写映画化は・・・全然進んでないんだろ〜な(アブなすぎて誰も手ぇ出せんやろ)。