其の294:「ランボー」の原点?「デス・レース2000年」

 金原ひとみ芥川賞受賞作の映画化「蛇にピアス」(監督は演劇界の巨匠、蜷川幸雄御大)を観ましたが・・・う〜ん、微妙な出来。体中にタトゥー&ピアスを入れる若者3人の「異色青春映画」ですが・・・登場人物の誰ひとりにも全く感情移入できなかった(苦笑:耳に角状のピアス入れたら顔洗うときには邪魔そうだけど)。
 主演は月9「太陽と海の教室」にも出ていた吉高由里子。彼女は頑張っていたと思うけど、Hシーンもいっぱいあるし(おっぱい出してる)「太陽〜」からのファンはちょっと驚くかも(それでも原作よりはかなりマイルドらしい)。まぁ、つっこみどころもヤマほどあるけど、あいにくヒットしなかったみたいなのでこれ以上ムチ打つのはやめますわ。
 ちなみに小栗旬藤原竜也もチンピラ役でちょこっと出演してるけど・・・「ナイトシーン」なんで、小栗くんなんて顔がハッキリ見えません(苦笑)。ファンの方は目を凝らして観てくださいね。


 「蛇にピアス」と比べると70年代のB級カー・バトル映画「デス・レース2000年」は単純明快でいいわ^^(=何故かDVDでは「デスレース2000」とタイトル変わってる)。これ、近日日本でも公開される映画「デス・レース」の元ネタ。その昔からトム・クルーズ主演で「デス・レース3000」というタイトルでリメイクが企画されつつ、ようやく完成したわけ(笑:トムはクレジットなしで製作側に回ったらしい)。「ロッキー」でブレイクする前のシルベスター・スタローンが準主役で怪演している事はオタクの間では有名な話!さらに「ベスト・キッド」のコブラ会の先生こと、マーティン・コブも出てるよ。誰も言わないけどね(苦笑)。

 西暦2000年(=もう過ぎましたな)。アメリカは合衆国から連邦に変わり、大統領による独裁政治が敷かれていた。そんな政府が民衆の娯楽として年1回主催しているのが「デス・レース」!3日間かけて、武装したスーパーカーアメリカ大陸を横断するのだがスピード制限一切なし、他車の邪魔してよし、順位のほか通行人を轢き殺すとさらに得点が加算されるという狂気のレース大会。このレースで名声を得ているのが全身黒づくめの謎のレーサー、フランケンシュタイン(=「キル・ビル」のデビッド・キャラダイン)。そのライバル、マシンガン・ジョー(=スタさんよ)は今回こそ優勝しようと意欲に燃えていた。こうしてレースは開始されたのだが、政府転覆を図るレジスタンスたちは独裁政治の象徴であるレースの妨害を図るー!フランケンの意外な正体と予期せぬラスト(?!)もどうぞお楽しみに^^

 設定と冒頭までの「あらすじ」を書きましたが、今作は当ブログに度々登場するロジャー・コーマン大先生が製作総指揮!ということは=「低予算」。未来都市は誰もがわかる「書き割り」を合成してるし、レースに出場するスーパーカーといっても走るのは5台だけ(笑)。しかも、その車がイラストならまだしも角とか牙とかついてる張りぼて同然のもの(爆笑)。でも、そのチープさも今作ではシュールで愉快愉快!「チキチキマシン猛レース」の実写版という感じ(あるいはタツノコプロの「とびだせ!マシーン飛竜」か)。

 ロジャー・コーマンの「コーマン方式」は予算はローバジェットながら「バイオレンス」と「エロ」を加えて「売れる娯楽作品」に仕上げること。評論家だと「アメリカが古代ローマ帝国同様に描かれ、それが民衆と政府の関係云々」とか書くだろうけど、コーマンにそんな深い思想は絶対ないって(笑)!!
 今作でもコーマン方式は律儀に守られており「バイオレンス」として車の爆発や銃撃、轢き殺される人々(=子供と老人は轢くと得点が高いという嫌な設定)がテンコ盛り!
 また「エロ」はレーサーには必ず異性のナビゲーターがつくという設定なので(=ペアによってはヤってる設定)、登場する女性の大半のヌードが見られる。さすが70年代の映画だなぁ(笑)。

 スタローン主演作の特徴として「単純なキャラクター」、「行動動機が愛や友情絡み」といったものの他に「主役の台詞が少ない」もあると思うが今作ではスタさん、しゃべるしゃべる(苦笑)。おまけに主人公と殴りあってボコボコにされるから・・・大分、のちのイメージと違う(=ちなみにデビッド・キャラダインは「燃えよ!カンフー」でカンフーマスターにキャスティングされたほど実際に強いのだそうだ。その「燃えよ〜」のファンだったのがタランティーノで故に「キル・ビル」にオファーしたという訳)。
 マシンガン・ジョーはフランケンシュタインと比べて人気がないという事で終始不機嫌。でブーイングした観客に向かってネーミング通りマシンガンを乱射する(こらこら)。そのポーズが後年の「ランボー」そっくり(驚)!!「デス・レース〜」の出演が後の作品に影響を与えた・・・という事はないだろう(笑)。監督のポール・バーテルって・・・他になに演出したんだろう??知らん。

 何度も書きますが低予算ながら「特異な設定」に「個性的なキャラクター」、適度に挿入される「暴力とエロ」&「つい笑っちゃう描写」で一気に見られる(尺も78分とコンパクト^^)。初期のジョン・カーペンター作品同様、映画(特に娯楽作)は予算じゃないことをコーマン映画は教えてくれる・・・多分(笑)。