其の289:世代限定お薦め作「ベスト・キッド」

 賛否両論あろうことを承知の上で書くのが・・・「ベスト・キッド」(’84)!つい先日、久しぶりに見直しましたが、この時代の作品だけあって、いま見ればタルいところも多々あれど(=2時間7分。昔の映画は大抵2時間あった)リアルタイムで観ただけに、当時の自分自身のこともフラッシュバックされてきて、なかなかイケるのよ(笑:歌を聴いて懐かしむ発想と一緒)。但し「1」限定!ヘンな沖縄が舞台の「2」や、もはや燃えカスの「3」はダメ。いきなり主人公が女の子になった「4」は論外。でも、いまとなってはヒロインが若き日のヒラリー・スワンク(=アカデミー女優)ということで「お宝映像」かもしれないけれど。この時の経験が「ミリオンダラー・ベイビー」につながった・・・ということはないだろう(笑)。


 母子家庭のダニエル(ラルフ・マッチオ!)は都会からカリフォルニアの片田舎へとやって来た。新しい生活を始めた彼の前に現れたのが、同じ高校に通うお嬢様のアリ(エリザベス・シュー!)。ところがアリと親しくなったことで彼女の元彼ジョニー(ウィリアム・ザブカ)らが激怒、ダニエルはいじめの標的にされてしまう。彼らは地元でも屈指の空手道場「コブラ会」のメンバーだった。
 ある日、ダニエルがジョニーたちに捕まり、あわや危機一髪・・・のところで彼を助けたのは、ダニエルのマンションの管理人ミヤギ(ノリユキ・パット・モリタ)だった。盆栽いじりが趣味の一風変わったこの老人は「空手の達人」だったのだ!いじめっ子たちから身を守るためミヤギに弟子入りしたダニエルだったが、何故か毎日ペンキ塗りや車のワックスがけをやらさせる。ジョニーたちが参加する「空手トーナメント」にむけての特訓なのだが・・・果たしてダニエルは強くなれるのか!?


 1983年に公開されたフランシス・フォード・コッポラ監督作「アウトサイダー」はトム・クルーズのほか多くの若手スターを輩出した作品として知られているが、ラルフ・マッチオもその中のひとり(1962年生まれ)。今作の出演依頼を受けた時には「タイトルを聞いて(=原題は「カラテ・キッド」)子供向けの漫画作品かと思った。」そうだが・・・いま考えるとこのシリーズが彼のキャリアの全盛期だったなぁ。DVDの「特典映像」で久々に顔をみたけど・・・もうおっさんだった(笑)。
 ヒロイン・アリ役のエリザベス・シュー(「バック・トゥ・ザ・フューチャー2&3」、「リービング・ラスベガス」)はこの作品がデビュー作(当時20歳の大学生)。「ベスト・キッド」シリーズも「007」同様、毎回ヒロインが変わるんだけど、彼女だけは引き続き起用して欲しかったわ(余談だが、彼女がこのあと出演した動物パニック映画「リンク」は何気に傑作)。
 でもラルフ、エリザベス・シューよりもさらに<いい味>出しているのが謎の日本人ミヤギ役、ノリユキ・パット・モリタ!家の内装ほか、基本設定はどうみても「アメリカ人が想像する日本人」の域を出ていないんだけど(=これが進んだおかげで「2」は台無し)、尊敬される日本人っていうのがいいね^^。オーディションの時、「何故だか、この役を自分は完璧に演じられる」と思ったそうで、ある意味<トランス状態>で演じたことで役を得ることが出来たのだという。
 今作以後、B級アクション作品に出演したマーティン・コブやスティーブ・マックイーンの息子、チャド・マックイーンも出演してますが・・・これ以上、書くとコア過ぎるのでこの辺で。


 当然、本編で1番燃えるのは「特訓シーン」ですが(勿論、映画のような練習で空手がうまくなるわきゃない)この映画の監督はジョン・G・アヴィルドセン!そう、あの「ロッキー」の監督だ。特訓シーンで観客が燃えるのは言わずもがな^^さらに音楽は同じく「ロッキー」のビル・コンティ、主題歌は「ロッキー3」を担当したロックグループ、サバイバー!!筆者的には「アイ・オブ・ザ・タイガー」よりこちらの曲の方が好き^^


 映画評論家なら「友好的な異文化の融合」とかダニエルとミヤギに「父子関係」を見出して論じたりするんだろうけど(時に評論家は製作者が全く意図していない論説をぶち上げたりするからなぁ)筆者はそんなお固いことは書かない。何気に作品を見直して新鮮に思ったのは「いじめ描写」にあった。

 別れた彼女に新しい男が出来たから、そいつをいじめるというのは理不尽な限りだが、そんな「お子ちゃま」ジョニーの行動に対し仲間は「お前、おかしいぞ!もうこんなことやめよう」とキチンと意見をする。
 また「空手トーナメント」ではダニエルが足が負傷していることを知った「コブラ会」の先生(マーティン・コブ)はジョニーに「足を狙え」と命令、ジョニーは「えっ!?」という表情を見せる(=ちばあきおの漫画「キャプテン」で、主人公らを追い詰める相手中学の監督と同じ言動)。勿論、先生にジョニーが逆らえるわけもなく、実行に移してダニエルを窮地に立たせるがー最後の最後には素直にダニエルの栄誉を称えるのだ。その辺りの描写が「ほほえましい」。いまのいじめ(=最近はマスコミに余り取り上げられないけど)は陰湿過ぎるでしょう?相手が死ぬまで徹底的にー心身共々ー痛めつけてゆく。でもね、昔は喧嘩をしても「相手が泣いたら終わり」という<暗黙の了解>があった。そんな子供の中のルールは・・・いつ失われたのでしょうね??

 
 インターネットに携帯電話えとせとら・・・便利なグッズに囲まれた、いまの若い人が観たら「大甘青春映画」に感じられるかもしれないがー筆者たちの世代の方が不便な分、より熱い時代だった気もするのだが・・・別に同意も反論もしないでいいですから(笑)!