其の317:韓流式ラブコメ「彼女」シリーズ考察

 最近では「韓流ブーム」も落ち着いたようで余り言われなくなりましたな。筆者も韓国映画はそんなに数多く観ているわけではありませんが、ヨン様以前に韓流ブームの先駆けとなったアクション映画「シュリ」は面白かったし、「殺人の追憶」は全てにおいて<完全な映画>だと思う。一昔前は「桑の葉」とか日本ではエロい映画しか公開されていなかったのが嘘のようだ(笑)。
 そんななか「韓国式ラブコメディー」を得意とする監督がクァク・ジェヨン(男)。一連の「彼女」シリーズは日本でもウケました。そこで「彼女」3部作について書いてみようと思う。思い起こせば柳沢きみおの「翔んだカップル」やあだち充「みゆき」等はリアルタイムで連載読んでた世代だし^^。それにこのブログは、ほぼ男目線で選んだ作品ばかりなので、たまには女性に喜ばれる映画も選ばないとな(笑)!
 ちなみに先日公開された「最強☆彼女」は割愛。ヒロインは「火山高」(=ぶっちゃけ駄作)でデビューしたシン・ミナだし、映画会社の都合で完成してから2年も公開が遅れた「いわく付き」でもあるので(苦笑)。あと「猟奇的〜」と「僕カノ」の間に撮った「ラブストーリー」(’03)もヒロインの性格が異なるのでカット。


 日本で一躍クァク・ジェヨンの名を知らしめたのが「猟奇的な彼女」(’01)。美人なのに口が悪く、すぐ手を出す破天荒な女の子(=チョン・ジヒョン)にボンクラ男がふり回されるお話(笑)。メジャー作なので多くは書きませんが、人気ネット小説を基に比較的低予算で製作されたものの記録的大ヒット(=韓国国内だけで500万人を動員)!チョン・ジヒョンを一躍スターダムにのし上げ、日本ではTVドラマになるわ、ハリウッドとインド(!)でリメイクされるわ・・・まぁ、凄いですわ。前半はさんざん笑わせてくれるものの、後半突如としてどシリアスと化し、すったもんだあった挙句にハッピーエンドというジェヨン・パターンを確立させた記念すべき1本。

 
 「猟奇的〜」の成功を受けて製作されたのが「僕の彼女を紹介します」(’04:略して「僕カノ」)。ヒロインは前作同様、チョン・ジヒョン(そういえば彼女は、これまたハリウッドでリメイクされた「イルマーレ」にも出ていたな)。ストーリーも「猟奇的〜」と大して違わない(苦笑)。劇中、X JAPANの曲が日本語で堂々と流れるのも見所のひとつ!
 ところが・・・この映画、正直言えば「チョン・ジヒョンのPV(プロモーションビデオ)」(哀)!ネタバレするからボカして書くけど、中盤「ラブコメでは、ほぼ想定外の出来事」が発生!前半までの「笑えるいい話」を完全にブチ壊している(苦笑)。ジヒョン人気に監督が安易にのっかったのかもしれない。タイトルの真の意味も映画の最後でようやくわかる仕掛けで(=しかも前作にリンク)、「猟奇的〜」を観ていないとお話にならないし。残念ながら「失敗作」と言わざるをえない。


 そんなこともあってかジェヨンとジヒョンはコンビを解消するが、2006年のジヒョン主演作「デイジー」の脚本を書いたのは他でもないクァク・ジェヨン(笑)!大々的に海外ロケを行ったことが話題になったが・・・肝心の出来は人から聞いたところではイマイチらしい(苦笑)。筆者は未見なので、これについてはここまでにします^^。

 
 そして昨年(’08)公開されたジェヨンの新作が「僕の彼女はサイボーグ」(略して「僕サイ」)。日本資本による「邦画」で、キャスト、スタッフともほぼオール日本人!!日本にやってきたジェヨンが各地で長期ロケを行った末に完成したSFラブコメディーである。
 物語は冴えない大学生のジロー(=小出恵介)の前に突然、グラマーな美女が現れる(=綾瀬はるか)。なんと彼女の正体は、老年のジローが若き自分を守るために未来から送り込んだサイボーグだったのだ・・・!
 とまぁ、これどう考えても設定は「ドラえもん」。「のび太」をオタクのボンクラ(=ジローは「エヴァ」のフィギュアを買ったりしてる)、「ドラえもん」を可愛い巨乳サイボーグに置き換えれば図式は同じ(爆笑)!!ちなみにジェヨンは日本の漫画やアニメの大ファンだと公言しており(=中でも「稲中」の大ファン)「ドラえもん」のほか「銃夢」、「OZ」あたりを参考にしたそうな。「OZ」は・・・日本人の筆者も読んだことない(苦笑)!

 またジェヨンはハリウッド製SF映画も大好きだそうで、綾瀬はるかが現代にやってくる場面は「ターミネーター」まんまだし(但し、全裸ではない)最後の方は「エイリアン2」の某キャラのあるシーンを流用してる(=ネタバレ防止の為、具体的には書きません)。で、「猟奇的〜」同様ゲロ吐きもあり(苦笑:この人、きっとゲロが好きなんだろうね)。

 で、今作でも終盤にはまたまた「想定外のとんでもない事態」が!!ドラマ「冬のソナタ」もそうだったけど、どうも韓国の監督は非現実的なドラマチック過ぎる設定を考えるのがお好きなようで・・・。「冬ソナ」じゃヨン様はうまい具合に何度も交通事故に遭うけど(苦笑)今作では突然、レストランでマシンガンを乱射する男が現れるわ(=動機不明)、後半の「とんでもない事態」は「冬ソナ式交通事故」の遥か上を行っている(本当)!!タイトルからして「サイボーグ=SF」だから、リアリティーなくてもいいのかもしれんが(そんなことはないだろう)。

 異国にきて外国人を演出したジェヨンも凄いし(=でも、画面のそこかしこに微妙な韓国臭が・・・)綾瀬はるか(=サイボーグ役ゆえ「まばたき」を我慢したという)も小出恵介も好演したと思う。ふたりはTBSの連ドラ「白夜行」の時から筆者が贔屓にしている俳優だし^^。でも、やっぱり3本の中で1番出来がいいのは「猟奇的な彼女」だ。

 
 こうしてシリーズを製作順で観ていくとキャラ設定<主人公:ボンクラだけど優しい青年、ヒロイン:美人だけど性格がぶっとんでて怪力>+ストーリー展開<前半:コメディー、後半:シリアス>という「猟奇的〜」で培った黄金パターン(?)にのっとって作られていることがお分かり頂けるだろう。そして、それらが回を増す毎にエスカレート!「僕サイ」では遂に未来社会にまで話が進んだから・・・次の舞台は「銀河系のどこかの星」か(笑)?
 ちなみにクァク・ジェヨンの夢は「猟奇的〜」でヒロインが書いたシノプシスとして、一部劇中でも描かれるSF「デモリション・ターミネーター」を完全映像化することだそうだ(=「デモリション〜」と「僕サイ」は最終的な舞台が2137年ということでリンクしている)。でもこのタイトル、どう考えてもシルベスター・スタローンシュワちゃんの出演作からきてるよねぇ・・・!?なんとなく将来的に本当に完成したら、「タイトルをパクった!」とかハリウッドに因縁つけられて訴えられたりして(苦笑)。

 
 
 <どうでもいい追記>①:ハリウッド版「ドラゴンボール」の予告編観たけど・・・あれは「ドラゴンボール」では断じてない(怒)!鳥山明先生がいくらフォローしてもダメなもんはダメ!!!
 <どうでもいい追記>②:実写版「ヤッターマン」は予告編観た限り・・・う〜ん、微妙。三池崇史監督は大好きな監督のひとりだが「ヤッターマン」は大傑作か超駄作かのどちらかだろう。「普通」という中間は、まずない!
 <どうでもいい追記>③:なんと「ベスト・キッド」がリメイクされるそうだ。ラルフ・マッチオの役がウィル・スミスの息子で、「ミヤギ役」はジャッキー・チェンが演じるという(驚)!!だ、大丈夫か!?全然前のテイストと違うんですけど!?!?