其の285:実は洋画の「片腕マシンガール」

 「闇の子供たち」に続いて現在公開中の新作「片腕マシンガール」をご紹介!なんせ多忙なんで一気に観ないと上映終わっちゃう(苦笑)。今作はスタッフ、キャスト共オール日本人でありながら金を出したのはアメリカ!よって正確には「洋画」という近頃珍しい「逆輸入映画(=日本語の台詞に英語字幕がつく)」なのです。
 本来、日本での上映予定がなかった事を知っていたので(今年3月の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」では上映された)小躍りしながら観に行った(笑)。タイミングを逃すと観られなくなる作品をチェックするのも映画オタクならではの醍醐味である^^


 唯一の肉親である中学生の弟をいじめで失った女子高生のアミ(新星・八代みなせ好演!)は、いじめグループのリーダーであるヤクザの息子とその両親へ復讐に向かうものの反撃され、逆に片腕を斬り落とされてしまう。なんとか窮地を脱出した彼女は、弟と一緒に殺された級友の両親に助けられ共に復讐を誓う。アミは彼らが製作した特製ハンド・マシンガンを装着し(笑)、いざ最後の闘いへー!!
<注>わりかしメジャーな俳優さんは諏訪太朗ぐらいなので(=すぐ殺されるけど)その他の俳優名は割愛しました。


 <あらすじ>にも書いたようにお堅い評論家などからは「残酷!」、「悪趣味!」等と一笑に付されて終わりそうな生き地獄のような内容(苦笑)。あくまでシャレの分かる人向けの映画だと最初に言っておきます^^
 アメリカサイドから「日本テイストを入れつつ、残酷アクションを製作してほしい」との依頼を受けて製作された今作だが・・・誰もがロバート・ロドリゲスの「プラネット・テラーinグラインドハウス」とクエンティン・タランティーノの「キル・ビル」を誰もが想起するだろう。
 「プラネット〜」のヒロインは失った<足>の代わりにマシンガンを装着するし(=どうやって引き金を引くのかは「マシンガール」同様不明)、斬りおとされた頭や腕からは「キル・ビル」の「青葉屋」のシーンの如く大量の血がビュービュー吹き出す(でも今作の血の量は「キル・ビル」の10倍増)。で、それが共に<ギャグ>として演出されているのも共通!もっとも「キル・ビル」の<血の出し方>は「子連れ狼」が元ネタなので、再度日本に戻ってきた形になる。
 多少の意識はあったようだが(=ゴーゴー夕張の武器「空飛ぶギロチン」も形を変えて登場。元ネタはジミー・ウォング主演作から)、あくまでこれらの設定や演出は監督・脚本を努めた井口昇のオリジナルで70年代の和製復讐ものを多分に意識したという(口調も何気に「任侠もの」風)。


 井口昇は当初「AV監督」として頭角を現し(=筆者は多少「AV業界」や「ポルノ映画」事情を知っているので、その辺については全く偏見はない。あくまで上から最初に撮らせてくれるのが「裸絡み」だけの事で。周防正行黒沢清滝田洋二郎井筒和幸根岸吉太郎も全てポルノからキャリアをスタートさせているしね)1998年、自主映画作品「クルシメさん」が高く評価され、映画やテレビドラマの演出を手掛けるようになる。
 手掛けた作品の中でも「楳図かずお恐怖劇場 まだらの少女」(’05)、「おいら女蛮」(’06)、「猫目小僧」(’06)など漫画の実写化作品が多い。その意味では「片腕〜」も一昔前の永井豪あたりが書きそうな漫画みたいな話ではある。


 今作はオファーを受けた井口が、何気に温めていたアイデア・・・片腕の女の子が水着でやるカンフーリベンジもの、その名も「片腕巨乳」(爆笑)を提案したところ、日本人プロデューサーから「そのタイトルじゃ女優をキャスティングしにくいから(笑)、ちょっと内容を変えて腕にマシンガンつけるとかどう?」との発案によって本格的に製作スタート。それでもタイトルとその内容から大半の主演候補がどん引きしたという(笑)。


 映画の冒頭、いじめっ子集団はヒロインに腕は切られるわ、マシンガンで蜂の巣にされるわで「つかみ」はOK!更にヤンキーが喜びそうな数々の日本テイスト・・・ヒロインの「セーラー服」に「服部半蔵の末裔のヤクザ」(笑)に、刺客の「忍者軍団」まで登場。さらにヒロインは腕を「テンプラ」にされるし、粗相した料理人は指を詰められて「スシ」作らされる(大笑)!で全編真っ赤の「血まみれ」^^
 中でもAVギャル・穂花(=先日のCX「27時間テレビ」で夜中に明石家さんまと電話でトークした人)の武器<ドリル・ブラ>はあちらで大ウケだったそうだ。


 バイオレンス・スプラッター・アクションの快作だと筆者は思うし、井口監督も続編のアイデアもあるそうなので是非続きを作ってほしいね!いっそシリーズ化して「殺人ロボット」とかも出すと更にジャパニーズ風でいいなぁ(笑)。


 <追記>もうまもなく公開されるのが天才ミシェル・ゴンドリーの最新作「僕らのミライへの逆回転」。レンタルビデオ店に勤めるジャック・ブラックが事故で身体に磁気を帯びたことによって、店のテープの映像が全て消えてしまう珍事が発生!そこで仕方なく仲間と共に消えた映画の数々ー「ゴースト・バスターズ」や「ロボコップ」ーを自ら出演して撮影、貸し出したところ意外にも大評判を呼ぶ、というコメディー。どこから、こんなアイデアが出てくるのだろうか!?やはりゴンドリーは只者ではない。