其の284:オープン、ユア・アイズ!「闇の子供たち」

 週1回は徹夜するハードな職場環境に変わったため、すっかり更新が遅くなりました(焦)。ところが多忙であればあるほど映画を観たくなるのが映画オタクのさが(苦笑)。そこで公開されてまもない映画「闇の子供たち」を観賞(北京オリンピックをあてこんだのがミエミエの「カンフー映画」に興味なし)!
 「夜を賭けて」、「血と骨」で知られる作家・梁石日ヤン・ソギル)の同名小説の映画化ですが・・・本当に恐ろしいものを観てしまった。「篤姫宮粼あおい妻夫木聡が出ているから観に行く人や、デートで観るカップルは観た後・・・気分が盛り下がること必至のヘビーな社会派超問題作である。

 
 日本新聞社バンコク支局の記者・南部(江口洋介)は東京本社の社会部から<あるネタ>の調査を依頼される。それは近く日本人の子供がタイに渡り、臓器移植手術を受けるらしい、とのこと。早速、闇社会に通じる男に金を握らせ元仲介者に接触した南部。その彼によるとドナー(=臓器提供者)となるタイの子供は生きたまま臓器を取り出されるという!南部はバンコク社会福祉センターで働き始めたばかりの音羽宮粼あおい)や何故かタイでふらふらしているフリーカメラマン与田(妻夫木聡)と共に活動を開始するが・・・そこには貧しさゆえ少々の金で組織に売られた幼い少年・少女たちが外国人(日本人含む)の性の玩具として扱われ、HIVに感染した子は手当てもされずゴミとして捨てられる恐るべき現実があった・・・。


 人の性癖には色々あるので一概に非難するつもりはないが、ペドファイル(=幼児性愛者)は欧米のみならず日本人にも数多く(=アジア圏では日本人が圧倒的に多いそうで。児童ポルノの規制が始まるのも当然だ)、映画の舞台となったタイやその他の周辺国で買春行為を行っているそうだ。いうまでもなく勿論、それは「犯罪」です(筆者は同性愛や幼児性愛癖がないので理解できん。すまんね)!!
 この<幼児虐待>のアンダーグラウンドに鋭く切り込んだのが監督・阪本順治(脚本も担当)。このお方、ちょっと当たり外れが大きいんだけれど(例:「どついたるねん」は面白かったが「亡国のイージス」はどっ外し)この攻めの姿勢はグッド^^映画の主旨に賛同してテーマ曲を書き下ろした桑田佳祐も偉い(筆者はサザンのファンなのだ。悪いか?)!


 阪本監督は本の内容は知っていたものの、今回仕事をオファーされてから初めて本気で原作を読み始め、様々な資料を集めたそうだがーその実態を知って相当なショックを受けたという。そこで作者の了解を得て、原作では途中から登場する南部をメインに据え、ラストも衝撃的なオチに変更している(阪本曰く「自分も含めた日本人に問い返してくるものにしなければならない」)。


 映画は2007年4月にタイにてクランクイン(=軍事クーデター直後で、政情不安だった時期)。以前、同じテーマを扱おうとしたドイツ人クルーたちが現地のギャングに脅迫された事もあったそうで・・・内容が内容だけにかなりの危険を伴う仕事であったことは想像に難くない。そんなプレッシャーに加えてスタッフ&キャスト(特に現地の子役たち)にも相当な気を使ったこと&暑さも加わって阪本監督も現場で1回倒れたそうだ(苦笑)。いま公開中の阪本のもう1つの新作「カメレオン(藤原竜也主演のアクションもの)」は「闇の〜」終了後にオファーを受けて監督したもの。「闇の〜」が余りにも強烈だったため、全く違うジャンルを撮ることでなんとか気分を一新する事が出来たという。


 作品には<あらすじ>で書いた江口、宮粼、妻夫木のほか佐藤浩市鈴木砂羽豊原功補らが出演。彼らが出ている部分はさすがに「劇映画」っぽいんだけど、タイ人らのみの場面(中でも何人もの子供たちが柵の中に閉じこめられている売春宿のシーン)は・・・ある種、ドキュメンタリーを観ているかのよう。いっそ、全員無名俳優にすれば作品全体のリアリティーが増すのではないか・・・という意見もあるかと思うが、そうなると余りに重苦しい内容のため、一部の観客にしかアピールできなかっただろう。筆者は幅広い観客層を獲得するために、あえてメジャー俳優を選んだことには賛同する。


 上映始まって未だまもない映画の上、できれば目をそむけたい内容でもあるので(おそらく子供たちの虐待表現には賛否両論あるだろうが・・・そのテのマニアは、子供たちが苦痛の表情をリアルに浮かべれば浮かべるほど喜ぶそうなので手に負えない)これ以上、ここで内容を書くとーそれだけで拒否反応を起こして観に行かなくなる人もいるかと思うので、もう少々書きたいこともあるのだが・・・控えることにする。とにかく是非、この映画を観て考えてほしい。いくつもの要素が複雑に絡みあい、簡単に解決することの出来ない深刻な状況をひとりでも多くの人に観てもらって考えて欲しいと思う。特に先進国・日本の「快適さ」をなんら疑問にさえ思わず、安直に享受している人たちこそ観てほしい。世の中には・・・必ず聞くもおぞましい闇の部分があるのだから。


 最後に筆者が印象に残った劇中の台詞を引用します(ちょっと正確じゃないけど、ほぼ合ってる筈)。組織の男(=かつて彼も性の道具として売られている)が、影でコソコソ嗅ぎ回る江口洋介妻夫木聡にピストルを向けて、こう告げる。
 「お前ら日本人はやりたい放題だ。俺は心の中で何度もお前らを殺してきた!」
 ・・・これ聞いてどう思います、日本人のアナタ??