其の279:ジャンル映画の再構築「ホット・ファズ」

 本日より公開された「ホット・ファズ −俺たちスーパーポリスメン!ー」(’07 英)を早速観に行った。これ「ホテル・ルワンダ」同様、日本では公開予定がなく(=既に欧米ではDVDになってる)ネットによる署名運動によって、ようやく公開にこぎつけた曰くつき(?)の作品。内容は田舎の地方警察を舞台にしたポリスアクション・コメディーなのだが・・・快作にして傑作!!このハイレベルの作品を上映しないで一体何をスクリーンにかければいいんだい?実は海外でヒットした作品でも日本では未公開になるものも数多いのだが(=本当です)今作に関しては日本の配給会社は猛省するように!!
 

 ニコラス・エンジェル(「ショーン・オブ・ザ・デッド」、「M:i:Ⅲ」のサイモン・ペッグ。監督と共に今作の脚本も担当)は文武両道、ロンドン一の検挙率を誇るスーパー警察官。シャレがきかない堅物なのが玉にキズだが、その彼が英国内でもっとも平和な村サンドフォードに左遷される。理由は彼が優秀過ぎるので「自分たちが馬鹿にみえるので困る」というしょーもないもの(役人体質丸出し:苦笑)。
 村の警察署に異動した彼は、署長の息子で同じく警察官のダニー(「ショーン・オブ・ザ・デッド」のニック・フロスト)と相棒を組まされる。このダニー、人はいいものの「刑事もの映画」オタクの超ボンクラ(笑)。そんなある日、村で死亡事故が連続して発生!ニコラスは連続殺人事件だと主張するも「平和ボケ」した署のメンバーは誰もとりあわない。そんな時、ニコラスは黒づくめの謎の人物による殺人を目撃する!果たして殺人鬼の正体は!?ちなみに村人のひとりで元「007」のティモシー・ダルトンも出てます(懐)^^


 監督はエドガー・ライト(英:74年生)。2004年「ショーン・オブ・ザ・デッド」で長編映画デビューする。この映画は「ゾンビもの」にオマージュを捧げた大傑作にもかかわらず、日本では未公開(後にビデオスルー)。クエンティン・タランティーノロバート・ロドリゲス監督作「グラインドハウス」(’07)中のフェイク予告「Don’t」(これまた傑作)を経て、今作が2本目の長編。冒頭に書いた「上映署名運動」は「ホット・ファズ(=熱い、イカした警官の意)までビデオスルーにするな!」という意図も多少なりあったと思う(違ってたらゴメンね)。
 

 前作「ショーン〜」を観た方ならお分かりだと思うが(このブログでも以前書いてます^^)ライトは「ゾンビ映画」の基本を守りつつ、ギャグと意外な設定を加え(=ネタバレするので書きません)マンネリ化していたゾンビ映画に新風を吹き込んだ若き才人。その彼が「ゾンビ」の次に挑んだジャンルが「刑事もの」の再構築!
 ライト曰く「退屈な田舎町で大破壊アクションを空想しながら育った。今作でそれを実現した!」そうで、劇中の台詞にはタランティーノの映画同様、数々の映画タイトルが出てくるし、キアヌ・リーヴスの「ハートブルー」にウィル・スミス主演作「バッドボーイズ2バッド」の映像もまんま使用されているが、彼がインスピレーションを受けた作品として挙げているのが先の2作品のほか「複数犯罪」、「ブラニガン」、「スーパー・コップス」、「48時間」、「リーサル・ウェポン」、「ラスト・ボーイスカウト」、「ポリス・ストーリー 香港国際警察」、「ルーキー」、「破壊!」えとせとら・・・(笑)。で、ロケ地は自分の出身地、銃撃戦を行ったスーパーマーケットは昔の自分のバイト先と徹底してます^^
 

 今作のポスターを観ると、ニコラスとダニーが英国旗をベースに2丁拳銃を構えているのでコテコテの馬鹿映画だと思いがちだが(苦笑)、ベタな「刑事もの(あるいは「バディ・ムービー」)」が中盤、突如「スラッシャー映画(例「13日の金曜日」)」&「サスペンス映画」に変化し、謎ときの後のクライマックスはポスター通りの「アクション映画」に変化。いい意味で観客の予想を次々に裏切ってくれる^^
 口の悪い人は「もう世界中に傑作、名作はあるから新しく映画を撮らないでも一生楽しんでいける」と言うが、完全なオリジナルは不可能としても、こういうリミックスなら大歓迎だ!なんでもライトは現在、次回作をハリウッドで撮るためにタランティーノの自宅に居候してるらしいが(ホント?)今度はどのジャンルを再構築してくれるのか。今から楽しみだ。

 
 <追記>「ホット・ファズ」は知る人ぞ知る映画なので空いてるだろうと思ってたら甘かった!なんと初回はほぼ満席!加えて初回上映の後(筆者は知らなかったのだが)「筋肉少女隊」の大槻ケンヂ氏(彼もコアな映画オタクで有名)と漫画家にして映画監督、俳優の杉作J太郎氏(う〜ん、マイナー:苦笑)のトークショーが行われた。これが目当ての観客も多少はいたと思う。ところが杉作氏が本編を観ていない事が早々に発覚(こらこら)!大槻氏が彼に「あらすじ」を紹介したところで時間がきてしまいました。チャンチャン♪