其の204:観たぞ!アメリカ版「グラインドハウス」<後編>

 前回に続いて「グラインドハウス U.S.A.バージョン」のご紹介。今度はカンヌにも出品したクエンティン・タランティーノ監督作「デス・プルーフ」です。<シネ友>ロバート・ロドリゲスが「俺はゾンビを作る!」と言ったときに、タラは「じゃ、俺はスラッシャー映画だ」と決めたそうで(彼は「ハロウィン」、「ローズマリー」、「血のバレンタイン」が大好き)。結果、出来上がった映画はスラッシャー映画のテイストに70年代の本格カーアクションを加えた娯楽作となりました。


 アメリカ・テキサス州。ラジオ局の人気DJ、ジャングル・ジュリア(シドニー・ポワチエの娘、シドニー・タミーア・ポワチエ。母親は「冒険者たち」のジョアンナ・シムカス!)は友人たちと街に繰り出して楽しんでいた。その時、彼女たちは顔に傷を負ったスタントマン・マイクカート・ラッセル!)に声をかけられる。マイクは髑髏マークが書かれたシボレーに乗る中年男。警戒するジュリアたちも話をする内に次第に彼と打ち解けてゆく。そこでバーに居合わせたパム(「プラネット・テラー」にも出たローズ・マッゴーワン)が彼の車で送ってもらう事になった。彼女が助手席に乗ると、マイクの態度が豹変!彼は車を使って女性を殺すことを至福の悦びとするキ○○イ殺人鬼だったのだ!


 「デス・プルーフ」とは「耐死仕様」の意。カースタントマンはアクションやクラッシュ場面を撮影するのに備えて車を補強し、己の安全を守る。今作の主人公(よくカート・ラッセル、この役受けたなぁ)はそんな耐死仕様の車に乗っているので安心して、他者の車に猛スピードで突っ込んで殺してゆくわけ(その度に車壊してたら金がいくらあっても足りないけど:笑)。


 今回、タランティーノは監督・脚本・出演のほかにも「ロドリゲスに推されて」自ら撮影も担当!「脚フェチ」で知られる彼だけにオープニングから女性の脚が登場!その他のシーンでも、なめ回す様にひたすら脚を撮っているカットが多数観られた(笑)。勿論、タランティーノだけに数々の映画ネタが作中で引用されている(今回、台詞での「映画トーク」はちょびっと)。


 作品は2部構成。「あらすじ」で書いた女性グループを殺すまで(この場面は凄いよ)が「第1部」。次にマイクの標的になるのが(第2部)「キル・ビル」でユマ・サーマンのスタントを務めたゾーイ・ベルオリバー・ストーンの「アレキサンダー」で脱いでたロザリオ・ドーソン、「ダイ・ハード4.0」でブルース・ウィリスの娘役を演じたメアリー・エリザベス・ウィンステッドら4人。でも彼女たちはスタントマン・マイクの襲撃から辛くも逃れ逆襲に転ずる!!このあたりのヒロインたちの造形はラス・メイヤーの「ファスター・プシィキャット キル!キル!」が元ネタだろう(「ファスター〜」のTシャツ着てるし)。
 

 その時、マイクが乗っているクルマは「ダーティ・メリー、クレイジー・ラリー」(’74)で使われた69年型ダッジ・チャージャー。一方、対戦する女性陣が乗るのは「バニシング・ポイント」(’71)のダッジ・チャレンジャー(ホント、タラって・・・コアだ:苦笑)!
 そんな今や貴重なこの2台をCGなしでガンガンぶっつけ合うクライマックスのカーチェイス(もったいね〜)はスピルバーグの「激突!」や「マッドマックス」を参考に約7週間かけて撮影された。久しぶりに生のクルマのガチンコ対決を堪能しましたわ^^


 同時上映の「プラネット・テラー」と比較すると、本格的に70年代映画の香りを感じたのは「デス・プルーフ」の方なのですが、「第2部」のおねーさん達が出てくる時の「与太話」が長過ぎ(劇場で寝てる観客もいた)。「中だるみ」しました。最後のオチのつけ方も(ここも「ファスター〜」ぽくって筆者は爆笑)人によっては・・・怒るかも(苦笑)。
「プラネット〜」と2本でそれぞれを補完し合っている形ですが、あえて軍配をつけるなら「プラネット〜」でしょうかね。タランティーノ映画作品特有の「はじける台詞」がいまいちだったし。でも、シネコンに占拠された現状を考えると、こういった企画は嬉しいので是非2本共観て「映画の香り」に触れてほしいと思います。・・・映画の起源は「見世物」!全ての映画が純粋培養された「お芸術映画」ばかりになったら・・・固苦しくっていけねぇや(何故か江戸っ子口調)。


 <追記>最後に「アメリカ版」での構成は以下の通り。
 1.<フェイク予告①>「マチェーテ」監督:ロバート・ロドリゲス出演:ダニー・トレホ
 2.映画本編「プラネット・テラー アメリカバージョン」
 3.<フェイク予告②>「ナチ親衛隊の狼女」監督:「マーダー・ライド・ショー」のロブ・ゾンビ出演:ウド・キア、シビル・ダニング(!)、ニコラス・ケイジ(!!)
 4.<フェイク予告③>「Don’t/ドント」監督:「ショーン・オブ・ザ・デッド」のエドガー・ライト
 5.<フェイク予告④>「感謝祭」監督:「ホステル」シリーズのイーライ・ロス出演:マイケル・ビーンティム・ロビンス(!!)
 6.映画本編「デス・プルーフ アメリカバージョン」

 嘘予告にこの豪華スタッフ&キャスト!是非DVDにはつけて欲しいものですな。中でも「ドント」は一番の爆笑予告!必見!!!