其の272:新作映画レビュー2本!

 書きたいネタは色々ありますが鋭意研究中ですので今回は新作レビューを2本ご紹介^^


 まず1本目はシルベスター・スタローン主演・監督・脚本の「ランボー 最後の戦場」。昨年「ロッキー」を(ようやく?)完結させたスタさんがもう1つの人気シリーズも復活させました。ロッキーの成功で味をしめたのかもしれない(笑)。
 タイの山奥で隠遁生活を送るランボーの前に米キリスト教会のメンバーが内戦の続くミャンマー(=劇中ではビルマと呼んでいる)まで案内して欲しいと無謀な依頼をした事がきっかけで(案の定、彼らは軍に捕まり酷い目に遭う)、ランボーが再び地獄の戦場で戦うはめになるというストーリー。前作で15万のソ連軍(=当時のコピーより。でも、そんなにいなかったよ)と戦ったことを考えると・・・遥かなスケール・ダウン(苦笑)。
 「ロッキー」では2作目から早くも監督を手掛けたスタさんだが、名義上ランボーを監督したのは今作が初(前作「怒りのアフガン」は意見が衝突したラッセル・マルケイを解雇して、チーフカメラマンを監督に昇格させているから実質的な監督はスタさんだろう)。勿論、ミャンマーを舞台にすることを決めたのもスタローンなのでロッキー同様、彼のワンマン映画。舞台となるミャンマーは長年、軍事政権が一部民族を虐殺していて(先日、日本人ジャーナリストも殺害された)今作の設定は現実と全く同じで、ホントにシャレにならないが「ミャンマーの実態を世界中に伝えたい」というスタさんの意欲は“買い”だ。
 映画は冒頭からミャンマーの実状を伝える「ニュース映像(本物)」から展開。さらに劇中のアクションは、ドッカンバッカン手足バ〜ラバラの超シリアス描写!イーストウッドの「ダーティハリー」に影響されていない刑事アクション映画が皆無だといわれるように(スタさんの「コブラ」もそうだった)、今作も明らかに「プライベート・ライアン」以降の作り方に習っている。勿論、このようなハードな演出はスタローン映画初。ロケ地・タイの灼熱のジャングルの中で長期間頑張って撮影したと思う。
 ただねぇ・・・意欲と頑張り(60過ぎてよくやった)は認めるけど・・・捕らわれた教会メンバーを助けるために雇われた傭兵たち(こういう人々を教会が雇っていいのだろうか?)と行動を共にすることになった後は収容所に潜入して彼らを助けて、追撃してきた彼らを倒して終わり!ちょっと展開がストレート過ぎる。途中でランボーが身内に裏切られて、敵に捕まると「怒りの脱出」と同じになっちゃうけど、もう少しひねりが欲しかった。そこが惜しまれる。あとはランボーがず〜っとTシャツ着て終わるとこも(笑)。
 邦題は「最後の戦場」となっていますが(原題は「ジョン・ランボー」)スタさんはロッキーと異なり、ランボーはもう1本撮りたいそうだ。もし、それが実現した場合、邦題はどうなるのだろうか?まさか「ランボー・ザ・ファイナル」じゃないだろーなー(今から日本の配給会社に釘さしときます^^)!?

 
 続いて2本目の映画は「幻影師アイゼンハイム」。“幻影師”と聞いたことのない言葉がタイトルについてますが原題は「THE ILLUSIONIST」。ようは手品師や奇術師の類っす^^2006年の作品ながら、ようやく日本でも公開された次第。「プレステージ」のように<手品合戦>はありませんのでご注意!
 19世紀末のウィーン。摩訶不思議なイリュージョンで人気を博していたアンゼンハイム(「真実の行方」、「ファイト・クラブ」のエドワード・ノートン)は劇場の舞台で、幼馴染みの公爵令嬢ソフィ(「テキサス・チェーンソー」、「エリザベスタウン」のジェシカ・ビール)と再会する。ふたりは子供の時、互いに好意を抱いていたものの身分の差を理由に引き裂かれていたのだ。愛が再燃するふたり。だが、彼女には皇太子との政略結婚が間近に迫っていた。そんなある日、彼女が謎の死を遂げる。皇太子謀殺説も囁かれるが、ウール警部(「アメリカン・スプレンダー」、「サイドウェイ」のポール・ジアマッティ)の捜査も暗礁に乗り上げる。そこでアイゼンハイムはソフィの幻影を蘇らさせて真相を暴きだすイリュージョンを試みるが・・・!?
 ねっ、面白そうでしょ!?かのスティーヴン・キングが絶賛し、全米公開時は僅か51館のスタートながら、口コミでロングラン・ヒットを記録した隠れた話題作。大宣伝をした「相棒 劇場版」や「ザ・マジックアワー」だけが話題作ではないのだよ^^
 筆者が贔屓にしているエドワード・ノートンがまず巧い!デビュー作の「真実の行方」からして巧かったけど、今回の彼の抑えた演技といい、奇術師としての佇まいは最高^^彼ならいつアカデミー獲っても何の不思議もない。ポール・ジアマッティは近年、いろんなジャンルの作品でいい味出しているが(「シンデレラマン」の役も良かった)今作でもその売れっ子ぶりがよく分かる好演^^ジェシカ・ビールは・・・まぁ、そこそこ(笑)。
 俳優陣もいいけど、映像もまた優れている(撮影は「秘密と嘘」のディック・ポープ)。特に劇場内の場面はその色合いからも<世紀末ウィーン>をよく表現していてムード満点。ただ予算の都合からか、当時の街並みのロングショットが1度もインサートされないのが残念!オープン(=屋外での撮影)は当時の街並みが残る一角を上手に切り取って撮っているけど、外のシーンの度にそういったアングルオンリーだと撮影してる状況が段々分かってきちゃった(苦笑:これは筆者の職業柄で素人さんは気にならんかもしれんが)。チャチくなければCGでもいいので1発ロングが欲しかったね。
 またストーリーは先述した通りだが、ラストは<意外な展開>に!でも・・・途中でなんとなく読めてしまった。もしかしたら原作通りかもしれないけど(未読)、このオチにしなくても良かった気も若干する。気になる方は是非劇場に足をお運びください。
 タイトルやポスターでは「文芸映画」っぽいけれど、イリュージョンの場面(=最後はもう人間技ではない)含めてなかなか楽しめる映画でした^^


 <どうでもいい追記>ジアマッティも出演する大馬鹿アクション映画「シューテム・アップ」に、クローネンバーグの最新作「イースタン・プロミス」と復活した「インディ・ジョーンズ」、そして「スターシップ・トゥルーパーズ3」が今から楽しみ(パワードスーツ萌え)^^でも・・・そこまで観る時間が取れるかしら?!