其の271:ウーの新作を期待して「男たちの挽歌」シリーズ

 本当はケン・ラッセルの映画か、傑作SFアクション「ヒドゥン」にしようかとも思いましたが延期して(ごめんね、B型なもんで)懐かしの香港映画を^^
 近年のオリジナルの映画は漫画になったり、パチンコ台になったりと新旧作品含めて色々と<タイアップ>が目立ちますが<ゲーム化>もその内のひとつ(ゲームが映画になるパターンもありますが)。中でもジョージ・ルーカスジョン・ウーはゲームソフトの製作にも力を入れている。で、そのウーがプロデュースしたのが「ストラングル・ホールド」。チョウ・ユンファが2丁拳銃で暴れまくる!やりて〜!!!・・・けど、これPS2のソフトじゃないんだよね。1枚のゲームの為にわざわざハードまで買ってられない(涙)。「チョウ・ユンファ」に「2丁拳銃」と来れば、そのルーツは勿論「男たちの挽歌」(’86)!「香港ノワール」なるジャンルを生み、海外に多数のウー信者を生み出した大ヒット作にして大傑作であり、チョウ・ユンファレスリー・チャンをスターダムにのし上げた作品としても有名である。


 物語の舞台は香港(当然、中国返還前よ)。ホー(「酔拳2」のティ・ロン。何気に石橋正次似)は紙幣偽造シンジケートに身を置く黒社会の男(=極道)。相棒のマーク(チョウ・ユンファ)と共に組織を支えている。ホーの弟で正義感の強いキット(「覇王別姫」の故レスリー・チャン)は兄の正体を知らぬまま刑事の道を歩んでいた。そんなある日、仕事で台湾へ行ったホーは取引相手に裏切られ、警察に逮捕されてしまう。組織はホーの口を封じるため実家を襲撃、彼の父親を殺す。ホーの逮捕を知ったマークは単身報復するものの足を撃たれてしまう。3年後、出所したホーが見た現実は、ホーを許さず執拗に組織を追う鬼と化したキットと、足が不自由となり組織の下で使いぱしりにされていたマークの姿だった・・・。


 筋書きは公開当時も十分古かったけど(笑:脚本はウー本人が担当。ちなみに彼は小林旭の大ファンである)、ストーリーの弱い分、ウーが見せたアクションは本当に凄かった!!やはり有名なのは「ユンファの報復シーン」。刺客たちが宴会している店へ行き、ホステスのねーちゃんたちと楽しみつつ、拳銃を廊下の植木鉢へ隠しておく。そして扉を開けるなり誰彼かまわず拳銃乱れ撃ち(注:ウー作品の拳銃はいくらでも弾が出る)!再見すると「撃つユンファ」、「血しぶきあげて倒れる敵」のカットバックという非常にシンプルなモンタージュなんだけど、その殺しっぷりが凄まじい!ラストの港でのファイナル・バトルに到っては、もうあちこちドッカンバッカン大爆発。もうほとんど「戦争映画」!ヤクザ同士の抗争のレベルじゃない(笑)。


 先日亡くなった「ベン・ハー」ほか大作史劇で御馴染みのチャールトン・ヘストン主演作「猿の惑星」の猿のモデルが日本人というのは有名なトリビアですが(=本当。原作者ピエール・ブール第2次大戦中、日本軍の捕虜になった経験を基に「戦場にかける橋」と「猿の惑星」を書いた。映画では当時、アメリカを席捲していたブラック・パワー(=黒人)の脅威を猿に投影して描かれた)、今作にも似たようなお話がありまして・・・実は今作はウーと「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」で知られる映画監督&プロデューサーのツイ・ハーク(一時、ハリウッドに進出)のことを描いたお話なのです。


 23歳のとき映画界に入り、27歳で初監督作を発表したウーは彼より5歳下でまだ売れていなかったハークに大手映画会社ゴールデン・ハーベストを紹介、彼に仕事の世話をしてあげた。その後、香港から台湾に渡って活動したウーだったが(彼も無名の頃、ジャッキー・チェンカンフー映画やホイ3兄弟の「Mr.Boo!」シリーズの製作に携わっていた)興行成績はどれもいまひとつで苦しい日々を送っていた。そんな彼に救いの手をさしのべたのがプロデューサーとして頭角を現していたハークだったのだ。香港に戻ったウーはハークにかねてからのアイデアを伝え、ハークはその映画化を強く勧めプロデュースを担当。こうして完成したのが「男たちの挽歌」なのだ!ウー自身「(固い友情に結ばれている)ホーとマークの関係は、自分とツイ・ハークがモデル」とコメントしている。で劇中、2人仲良くエキストラとして出演^^


 どこの国の映画界でもヒットすれば<続編>を作るのが常のようで(苦笑)、翌年にはすぐさま「男たちの挽歌Ⅱ」がウー&ハークのコンビで製作される。タランティーノが脚本を書いた「トゥルー・ロマンス」で劇中引用される映画の内の1本がコレ(主演のクリスチャン・スレーターはハリウッドに進出したウーの「ブロークン・アロー」と「ウインドトーカーズ」にも出てる。因縁か?)。アクションはパワーアップ、特に最後は銃撃戦のほか日本刀による大立ち回りも楽しめるのだが・・・筆者的には前作の<ファースト・インパクト>が余りに凄かった事と、既に前作で●●したチョウ・ユンファが××という設定で再登場するのが(ネタバレ防止のため伏字)強引過ぎて、ちょっとノレなかった。「北斗の拳」に例えれば、死んでいた筈のユリアを「実は生きていた」として登場させたぐらいの強引さ(笑:分かる人には分かるでしょ)!


 邦題はシリーズ状態だけど、実は全く違うウーのいまのところの最高傑作「狼/男たちの挽歌・最終章」(’89)もハークがプロデュース。だが・・・このあと、真の続編「男たちの挽歌Ⅲ」でふたりは決裂。突如、「Ⅲ」をハークが自分で監督すると発表した為だ(舞台がベトナムだった為、ベトナム出身のハークの血が騒いだようで)。元々の企画はウーのものだし・・・相当、モメたんでしょうね(苦笑)。その後、ウーはまたまた邦題だけシリーズ状態の「ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌」(’92)を監督して(=先述のゲームソフトはこの時のユンファをモデルとしている)渡米するのであったー。大人なんだから、いい加減仲直りしようよ。


 ウー先生はここ2本ほどは残念ながら外してますけど(「ウインドトーカーズ」&「ペイチェック」)年内には三国志の「赤壁の戦い」を描いた超大作「レッドクリフ」2部作が公開!最初の1本は赤壁の途中あるいはその寸前で終わるに決まってるけど(笑)期待して待ってますぜ!!

 
 <どうでもいい追記>あと今年楽しみなのは夏公開の「スターシップ・トゥルーパーズ3」!シリーズ完結作にしてようやくパワードスーツ(=ガンダムモビルスーツの元ネタ)が登場する(喜)!!でも、予告編観たら、ちょっとイメージが違う・・・(困)。その為、つい邦訳(=「宇宙の戦士」)の挿絵のフィギュア(デザインは「スタジオぬえ」)を衝動買いしてしまった。果たして映画のパワードスーツは吉と出るか凶と出るか!?