其の260:これぞ快男児!「極悪坊主」

 テレポーテーション(空間移動)能力を持つ青年を主人公にしたSFアクション「ジャンパー」を観たのですが・・・う〜ん、中味のない映画だったなぁ(原作はどうだか知らんけど:苦笑)。アナキン(ヘイデン・クリステンセン)とメイス・ウィンドゥ(サミュエル・L・ジャクソン)による<ジェダイ対決>だったのだが残念無念!これだったら筒井康隆の短編(タイトル忘れた)にある、オナニーしてイクとテレポートする男の話の方が面白いぞ(おまけに主人公の名は「マスオ」:爆笑)。金のかかり具合と出来は必ずしも正比例しないので致し方なし。まぁ、映画館で「インディ・ジョーンズ」の予告を見られたからよしとしよう、うん。


 そんな「ジャンパー」と比べれば、若き日の若山富三郎が演じた「極悪坊主」シリーズ(’68〜71)は単純に面白い^^僧侶の身でありながら酒は飲むし、女郎も買い、博打も打つタイトル通りの破戒僧。けれど悪人に対しては滅法強い正義の漢(おとこ)!要は一昔前の漫画のようなベタなキャラ(笑)。でもね、本当に個性的で味のある俳優が少なくなった現在、こんな男を誰が演じられるのかい??


 弟・勝新太郎に比べ遅咲きだった<お兄ちゃん>が主役を張った第1作が「極悪坊主」(’68)。明治時代を舞台に主人公・真海(「しんかい」と読む)が各地でトラブルに巻き込まれながらもマーシャル・アーツの達人ぶりを披露して事件を解決していくのがシリーズ通してのパターン。で毎回、当時「大部屋俳優」だった川谷拓三が殺されると(笑)。
 人体スパスパ描写で話題の「子連れ狼」シリーズの前に製作されたものだが、既にこの当時から刀に、槍に、空手とトミー(=若山のこと。筆者勝手に命名)の鋭い殺陣が存分に楽しめる。「子連れ〜」の主人公、拝一刀は無口でストイックなキャラだが、このシリーズではよく喋るし、超助平でコミカルな演技も披露(拝一刀と真反対)。そんなキャラが受けて映画はヒット!同年、すぐさま第2作「極悪坊主 人斬り数え唄」が製作された。


 そうそう、このシリーズの<その他の特徴>として、明治時代の社会問題(?)が取り入れられている事もあるんだけど、69年公開のシリーズ第3弾「極悪坊主 念仏人斬り旅」(すげータイトル)では明治政府転覆を図る士族グループとトミーが対決!それに加えて真海の永遠の宿敵、盲目の極悪坊主・了達(「りょうたつ」と読む。演じるのは「仁義なき戦い」以前の菅原文太兄ぃ)とのバトルも加わる。
 どうやらスタッフは今作でシリーズを終了させようと考えていたらしく、ストーリーは終盤ヘビーな展開となり、これで終わりでも納得のいくラストシーンとなっている。


 ところが翌年には4作目の「極悪坊主 念仏三段斬り」が公開!前作の最後で危篤寸前だったトミーは何事もなかったかのようにシャンとしてる(笑)。今作では北九州を舞台にエネルギー問題(炭鉱)を絡めて了達は勿論、真海の幼馴染(演じるのは「風車の弥七」こと中谷一郎)も登場。当時、日本でもマカロニ・ウエスタンが人気を博していたので「残酷リンチシーン」のほか(音楽も前作からちょっとエンニオ・モリコーネ入ってる)、ダイナマイトの爆発で目が見えなくなったトミーが「座頭市」状態になったりもする^^


 定かではないが、文太兄ぃが演じたストイックなキャラ・了達も人気があったとみえ、彼を主人公にした当時としては非常に珍しいスピンオフ作品「人斬り観音唄」(’70)が作られた。
今作はいつもは真海を付け狙っている彼が同じく盲目の少年を連れて旅をする「座頭市」プラス「子連れ狼」テイストのお話。舞台も西南戦争時で前作から少々時間が逆行、「真海」の「し」の字も出てこない(苦笑:トミーは「老眼科医」に扮して顔を見せる)。何故かシリーズよりお笑いとエロ度、グロ度がアップされ、トミー同様、文太兄ぃも華麗な殺陣&鞭さばき(「怪傑ズバット」か)を披露しつつ、女ともヤルことはしっかりヤル(笑)。


 シリーズ第5作にして最終作となったのが「極悪坊主 飲む・打つ・買う」(’71)。このサブタイトル、まんまやんけ(笑)!文明開化で湧く花の大東京を舞台に(「鹿鳴館」と思しき場面もあり)トミーが大暴れ!コミカル度もアップさせつつ(女を抱く前に生卵を飲んだり、「ルパン三世」ばりの変装も披露:笑)志村喬御大がいぶし銀の演技で脇を締める。
 ラストは、大方の予想通り悪い一味を退治した真海と了達の<ガチンコ空手対決>!両者の拳が相手を突く度に流血するケンシロウラオウ状態。何故、東京なのに2人が戦う場所が「砂丘」なのかは謎だが(爆笑)。


 いま観るとベタで泥臭い活劇ではあるけれど(おまけに「放送禁止用語」連発だからTV放送不可)、こういった破天荒なキャラクターが主役をつとめる映画がなくなったのが今の邦画の不幸だと思う。先行きが不透明で、ストレスの溜まる現代社会だからこそ、スクリーンに声援を送る事の出来るヒーローを求めてやまない。

 
 <追記>このブログ執筆に際し、いつも多大な協力をしてくれる「さすらいのマカロニ野郎」こと「Sくん」に改めて感謝!