其の259:近年の日本製アニメ映画

 筆者は「実写映画」の合間に時々ではあるが「劇場用アニメ」も観る(「萌え系」じゃないよ:笑)。聞くところによると現在、TVで放送しているアニメは予算的な問題があり「視聴率」よりもDVD化された時の売り上げやレンタル店に置かれる状況を見越して製作されているそうだ(=どうりで絵は綺麗だけど、あんまり動かないと思った)。その点、劇場用に製作されたアニメは凄いよ(さすが世界でトップクラス)!!そこで最近観て感心したものを3本ほど紹介します^^


 まず1本目は天才・筒井康隆原作「時をかける少女」(’06)。筆者の世代的には原田知世の実写版だけど(苦笑)。この作品の面白い点はタイムリープするヒロインを新たに創作しながらも、原作のヒロイン(芳山和子)を叔母として(&以前、タイムリープを行った先輩として)登場させている事!オリジナルへの心憎い目配せである。
 「エヴァンゲリオン」の貞本義行がデザインを担当したキャラクターはビジュアルも口調もモロ今時の若者(ヒロインの制服は超ミニスカ)!ここは評価が分かれるところかもしれない。だが溌剌としたキャラクターはとってもグー!
 監督の細田守は当初「ハウルの動く城」の監督に抜擢されるも、ほどなくして某有名大物監督に降板させられた経緯を経て今作を担当したので(=結果、高評価)「ハウルのリベンジを果たした」と言われた(笑)。ただ場面によっては作画の荒いところも多々あったので、次回作はその辺りを注意しながら頑張って欲しいものです^^


 2本目は「鉄コン筋クリート」。監督はアメリカ人のマイケル・アリアス!この人、元々はハリウッド映画でCG作ってたお方(キャメロンの「アビス」とか)。松本大洋の同名原作漫画に惚れ込んだ結果、日本人スタッフを動かして映画にしてしまった。松本特有の硬質な絵や独特の構図をうまく表現していると思う。
 特筆すべきは舞台となる「宝町」の作画。この町こそ「鉄コン」第2の主人公と言っても過言ではないのだが、見れば見るほどものすごく細かい書きこみが!これぞアニメ版「ブレードランナー」(=誉めてます)。
 人によっては「原作のあのエピソードがない!」とか不満もあるだろうし、もう少々、主人公2人が空を跳躍する時の<飛翔感>が出ているともっと良かったとは思うけど。


 ここまで書いて改めて再認識したのは、近年のアニメは「美術」がもの凄く緻密!プラスそれに加えて「時かけ」も「鉄コン」もキャラの作画自体はいかにも「アニメ、アニメ」してるんだけど人の動き方はリアル。実写となんら遜色がなくなってきている。


 映画「パプリカ」は「人の夢」を題材にしたSFテイストの作品。リアルなキャラ&美術に加えて、アニメーションならではの映像(CGも使用)を堪能出来る一作。原作は「時かけ」と同じく筒井康隆大先生(=脇役として声優としても出演)。彼が「断筆宣言」する前に書いた同名小説である(彼ほどの天才が一時期とはいえ断筆するとは、いかに日本の文学界が不自由である事か)。
 監督は今敏(兼共同脚本)。宮崎駿押井守大友克洋に続く才能として世界的に注目されている。作中何度も登場する「モブ(群集)シーン」・・・それも家電製品やおもちゃ他が人間の如く行進するシーンは圧巻!こういう映像を作り出せるのがアニメーション最大の利点だろう(実写でやったら、いくらかかることか)。
 ストーリーもSF、アクションのほかサスペンス、ミステリーに加えてパロディ(「ターザン」や「ローマの休日」の1シーンのほか、今監督の楽屋オチも)まで網羅された非常に豊かで複雑な内容。絶対にお子ちゃまは理解出来ない(笑)。もはや現在のアニメは大人の観賞に堪えるだけでなく、ここまで物語を語る事が出来るのだ!


 ウォシャウスキー兄弟の映画「マトリックス」は日本製アニメの手法を実写に取り入れて、新たな映像を創ることに成功した(兄弟の最新作「スピードレーサー」は日本の某TVアニメ!)。筆者は常々日本は資源がないのだからアニメや漫画といった知的財産や著作権で世界を相手に商売すればいいと思っていたが、ようやく政府も積極的にアニメを外国に紹介することを始めるそうだ(その大使に「ドラえもん」)。大分、動きが遅い気もするけど(苦笑)今後の日本の漫画やアニメがどう発展してゆくのか楽しみではある。