其の253:エミリオはブリーフ派「レポマン」

 現役医師の書いた医療ミステリー「チーム・バチスタの栄光」を観ましたが・・・まぁまぁでした。もっとも原作読んでないんで比較は出来ませんがね(映画として面白ければいいわけで)。
阿部寛は相変わらずアクの強い役を演じ(=超タカビーな厚労省のお役人)、対する竹内結子の内科医(原作では男性)は阿部ちゃんとキャラを対比させる設定となってますが・・・ちと愚鈍すぎる(苦笑)。日本の医療の現状と諸問題をミステリーという<娯楽仕立て>で浮かび上がらせる筈が、細かいギャグ入れ過ぎて薄まった感あり。この点がちょっと惜しまれました。筆者も対抗してTV局を舞台に連続殺人が起きるミステリーでも書こうかしら。アホADが次々と殺されるとか(笑)。


 さて、ここからが本題!「最近どうしてる監督作品シリーズ」を。パンクでマカロニウエスタン大好き監督アレックス・コックスですが・・・TVドラマ「濱マイク」撮ったあと、何してるんだろ?そのコックス初の商業監督作品といえば「レポマン」(’84)!これもカルトとして、根強いファンを持つ作品ざんす。


 中途半端なヤンキー主人公(エミリオ・エステベス)がひょんなことからレポマン(=自動車ローン滞納者から強引に車を奪い返すお仕事)稼業に足を踏み入れる。そんななか同業者に、パンクなヤンキーの友人(で強盗)、宇宙人の死体を盗んで車に積んだ科学者や政府の組織らが加わり、大変な事態になっていく(笑)!「エイリアン」や「パリ、テキサス」のハリー・ディーン・スタントン共演。

 
 アレックス・コックスは1954年イギリス・リバプール生まれ。オックスフォード大学で法律を学ぶうち映画に興味を持ち始め、1年ほど他の大学の映画科で勉強。のちに留学生としてUCLA映画学科に入った超インテリ!仲間たちと共に設立したプロダクションで作った第1作が「レポマン」である。本当にこんな職業があるのかどうかは・・・知らん(でもアメリカならありそう)。


 主演のエミリオ・エステベス(筆者の好きな「アウトサイダー」や「セント・エルモス・ファイアー」にも出演)は父親がマーティン・シーン(「地獄の黙示録」)、弟はチャーリー・シーン(「プラトーン」、「ウォール街」)という芸能一家の出。エミリオ自身、俳優をメインに活動しながら時には監督業も手掛ける才人であり(ちなみにデミ・ムーアとの交際歴あり)「シーン」の芸名を名乗る一家の中で、ひとり<本名>を貫く反骨心のある「グー」な男(BYエド・はるみ)^^
今作ではバイトはクビになるわ、女は他の男に寝取られるわ、ズボン脱いでブリーフ姿で女に「ヤラせろ」と迫る冴えないボンクラ青年を好演してます(笑)。このダメダメぶりが一部の根強い人気につながっているのだろう。


 劇中に「宇宙人の死体」が出るんでレンタル屋では「SF」の棚に置いてあるけれど、コックス本人が脚本も手掛けた今作の基本テイストはあくまで「青春コメディ」!学歴なし、金なし、女なしの青年が社会に出て(周囲の人々は全て下流)労働の喜びと苦労を学んでゆく。それに終盤「アクション」と「SF」的要素が一気に加わり(ちょっと「未知との遭遇」を彷彿させる)予想外のラストへ!異なるジャンルのミックス加減が絶妙で素晴らしい^^これをドジると橋本忍の「幻の湖」になる(爆笑)。


 今作でヒットを放ったコックスは以後セックス・ピストルズのボーカリストを描いた「シド・アンド・ナンシー」(’86)、マカロニテイスト炸裂の「ストレート・トゥ・ヘル」(’87)ほか次々と意欲作、異色作を発表してゆく。あいにく近年の動向が聞こえてこないのが残念だが、目の離せない監督のひとりである事は間違いない。