其の575:少女は何処へ?「バニー・レークは行方不明」

 先日、シリーズ完結編となる「アンフェア the end」を試写会で鑑賞。たしかに肝心要のヒロイン・雪平夏見(篠原涼子)の父親殺しの謎は解けたけど、“映画という格”として考えると、この作品の出来は・・・どうなの?!連ドラも含めてこれまでのもの全部観てるんで、展開はある程度読めたし・・・このぐらいのスケールのお話とオチならドラマの2時間スペシャルでよかったのではないかしら?筆者の中ではかなり残念な“締め”ではありました。

 
 このブログもこれまで数百回書いてきて、かなりの割合を<ミステリー・サスペンス映画>が占めていると思いますが(数えたことないから詳細不明)、今回もこれまで通りミステリーを(笑)。TSUTAYAオンデマンドで発注、購入した「バニー・レークは行方不明」(’65)を紹介します。今作も「生きていた男」同様、「ミステリー好きは知ってるけど、ソフト化されていない映画」の1本だった。それが先日、遂にDVD化(嬉)!!で、監督は「ローラ殺人事件」(’44)や「或る殺人」(’59)ほかで知られる名匠オットー・プレミンジャー!!・・・この初級映画紹介本のような作品を取り上げない当ブログで彼のような作家を取り上げる日がよもや来ようとは(苦笑)。


 アメリカからロンドンに引っ越してきたシングルマザーのアン・レーク(=キャロル・リンレー)。雑誌の特派員で現地に住む兄・スティーブン(=ケア・デュリア)が手配した保育園にひとり娘のバニーを預け、新居の準備を済ませたのち保育園に戻った。すると、いるはずのバニーがいない。ところが保育園の先生や園児たちはバニーを誰も見ていないというのだ!!捜査を開始したニューハウス警視(=ローレンス・オリヴィエ)ら警察が保育園のほか、引っ越し先の家を調べたところ、バニーの写真はおろか、彼女の存在を示す持ち物は何もなかった。スティーブンの発言でアンが幼少時代“バニー”という空想上の友達を創って遊んでいたことを知った警察は、アンは子供がいるという妄想にかられていたのではないかという疑惑を深めていく。次第に追い詰められていくアン・・・。


 女流作家イヴリン・パイパーによる同名小説の映画化。今作以前の“人間失踪もの”としては、かのヒッチコックの「バルカン超特急」という名作がある。今作は一部でジョディ・フォスターの「フライトプラン」やジュリアン・ムーア主演作「フォーガットン」等の行方不明をテーマにした作品の元祖と呼ばれている・・・そうだが、ホンマかいな(ただジャンルが一緒だっただけじゃない)?筆者も昔の映画なので最悪「夢オチ」、「妄想オチ」、「宇宙人オチ」も覚悟はして観始めたけど、そうではなかったので安心した(笑)。

 いつものようにネタバレしないよう書きますけど・・・自分自身も含め家族や子供が行方不明になって、その存在を他の人が一切信じてくれなくなったら・・・怖いよねぇ!!いまでこそ免許証や保険証、パスポートに会社のIDカードや預金口座等、<自分の存在・身分を示すアイテム>は沢山あるけど、これが例えば巨大な組織によって、それらが改竄されたり、無効にされたりした上(←コンピュータにハッキングかければ出来ないことはない手口)、所有物は全て極秘に廃棄。家族・友人・知人の類が全て脅迫されたり、買収されたりして「そんな人知らない」と言われたら・・・自分のアイデンティティーをも崩壊してしまうだろう。このテのジャンルが「怖くて面白い」のは、人間の心の根源にある“不安要素”をついてくるからに違いない。オープニング(→ソウル・バス大先生によるビリビリと紙を破いてクレジットを見せていくナイスなもの)から観客の深層心理を煽りに煽る。

 そんな超不安な状況に置かれるヒロインをキャロル・リンレーが好演(→当初はジェーン・フォンダが予定されていたそうだが、線の細いか弱そうな彼女の方で良かった)^^。あまり日本的にはメジャーな女優さんではないんだけど・・・強いて代表作を挙げるなら今作と後年出演した「ポセイドン・アドベンチャー」(’72)でしょうな。「ポセイドン〜」で彼女による劇中歌がアカデミー歌曲賞を受賞してるし(ただし、実際に歌っていたのは別人)。ただ、今作の監督は俳優に超厳しい事で知られたオットー・プレミンジャー。この人、俳優から最高の演技を引き出す為なら何でもやる鬼のような人(笑)。案の定、キャロル・リンレーもダメ出しされまくって、相当きつい現場だっただろう。一方、兄貴役のケア・デュリアは、筆者的には今作の後に撮影された「2001年宇宙の旅」(’68)のボーマン船長の人^^!「2001年〜」は、そんなに台詞多くなかったけど、今作はめっちゃ頑張って妹のフォローのためしゃべりまくってる(笑)。キューブリックも延々撮り直しする監督だったから、プレミンジャーのこの現場が彼にとっては前段のいい試練の場になったかも。世界的名優ローレンス・オリヴィエについては・・・筆者如きが書くまでもない。さすがの存在感でございます^^。そういえばオリヴィエも過去に「スパルタカス」出てたから、ケア・デュリアと“キューブリックつながり”だ(笑)。

 
 21世紀も少々過ぎた<いま視点>で今作を観ると「真実はそうだったのか!!」という大衝撃のオチではないけれど、ヒッチコック映画の如くよく動くカメラワークの中、それまでに伏線として張られた要素が出てきたりして(ここでは書かないけどさ)・・・なかなか感慨深いものがあったラストでした。劇作家のノエル・カワードがSM好きの変態家主として登場、ヒロインにセクハラする怪演を披露していたりもするので<少女消失のミステリー>に加え、いろいろと見所の多い作品。ミステリー&サスペンス愛好者は要チェックで。



 <どうでもいいお話>夫婦揃って爆笑しながら読んでいる漫画「監獄学園」。先日、深夜でアニメも始まり毎週観ているんだけど(くだらなさ過ぎてサイコー^^)・・・なんと秋に深夜ドラマで実写化!!!監督の井口昇はいいとしても・・・あの内容とキャラは実写じゃ無理でしょう。超マイルドにして視聴者から叩かれるのが今から目に浮かぶ(筆者がドラマ制作関係者だったら絶対に考えない)。近年、名作漫画やアニメを実写化って・・・あえて作品名ださないけど、こういう流れ続いてるよね。なにもないゼロからのスタートより、ファン層を見込んでの企画というのがバレバレ。実写じゃ無理な原作漫画は「アニメまで」って決めないと、ただの原作の冒涜化が進むだけ・・・資本主義国家の国民として諦めるしかないのかしら?