其の231:「ブラック・レイン」の思い出・・・。

 先程、久々にDVDでリドリー・スコット監督作「ブラック・レイン」(’89)を見直した。大々的に大阪ロケが行われた事も当時話題になったが、現在では松田優作の<遺作>として有名だろう(学生だった筆者が今作を劇場で観てからすぐに優作が亡くなった)。少々違和感のある日本描写もあるものの、大阪の街は魅惑的に撮られているし、優作の悪役はいま観ても素晴らしい(ロバート・デ・ニーロが「ブラック・レイン」を観て共演を望んだほど)!その分、DVDの特典に入っている優作の「オーディション映像」を観て切なくなってしまった(いま生きていたらなぁ・・・)。そして筆者が個人的に思い出の多い作品でもある(理由は後述)。決して傑作ではないが、今回はそんな個人的な理由で書かせて頂きます!!


 物語はニューヨークで悪さをやったヤクザの佐藤(松田優作)がマイケル・ダグラスアンディ・ガルシア扮する刑事に逮捕され、大阪府警に引き渡される。ところが彼らはニセ警官で佐藤はあっさり逃亡!おまけにアンディも優作に殺される!「異国の地ニッポン」でマイケルは日本の刑事(グレート・アクター高倉健)と共に優作を追う・・・(メジャー作なので「あらすじ」はシンプルに書きました)!


 いまでは渡辺謙真田広之らがハリウッドで活躍していますが、今作にはそれにもまして日本人俳優が大挙出演!先述の高倉健(=これがハリウッド映画3本目)、松田優作のほか若山富三郎(「子連れ狼」!)、内田裕也(ろっけんろーる)、神山繁に安岡力也、ガッツ石松(OK牧場)、小野みゆき(役名も「みゆき」:笑)に無名時代の國村隼島木譲二(ぱちぱちパンチ)まで・・・。日本が舞台だから日本人俳優が多いのは当たり前、と言われればそれまでだが(笑)。でも何故か健さんの子供役の少年はどうみても中国系(苦笑)!


 「エイリアン」、「ブレードランナー」で評価されたもののトム・クルーズ主演「レジェンド/光と闇の伝説」(’86)、トム・べレンジャー主演「誰かに見られてる」(’87)と立て続けに凡作を連発したリドリー・スコット。「ロボコップ」、「氷の微笑」のポール・ヴァーホーヴェン大先生が監督に予定されていたものの、最終的にスコットが引き受けたのが今作「ブラック・レイン」なのだ。スコット独特の光の使い方やスモークが画面全編に冴え渡り(撮影は後に「スピード」シリーズの監督となるヤン・デ・ボン)ちょこっと浮上した、というのが当時の筆者の素直な感想(笑:彼も出来、不出来の差が激しいので)。映画全体の3分の2が大阪で撮影されたものだが(建物の「外観」は日本、「内部」はアメリカに組まれたセットといった具合)当時の日本側スタッフのひとり(=制作進行)が筆者の知人!撮影中は・・・色々大変だったそうだ(苦笑)。


 彼の話によると、スコットの要望で現場には常に「スモーク・マシン」(=お約束)と「散水車」が待機(=路面を濡らすため)。また「食事」は幾つかレストランの入った雑居ビル全体を一定時間借り切ってキャストに好きな店で食べさせた、という(さすがハリウッド)。当時読んだ記事では。この映画の製作費は数十億円あったと記憶しているが・・・こういう大盤振る舞いで金がかかったんじゃないだろうな(笑)。また筆者の知り合いはスコットに頼まれて彼を「ソープランド」に連れて行ったんだと!スコットは「ブラック・レインは楽しい仕事だった」と語っているが、それはソープの件も入っているかもしれない(爆笑:そんな事はないだろう)。筆者は彼(=年上)に上野の「フィリピン・パブ」に連れて行ってもらったが・・・そう考えると、あれから1度も行ってないわ(笑)。


 撮影は大阪府の全面協力(最初は「東京」を舞台に考えていたが、あまりに非協力的なので断念)の下に行われたのだが、アメリカ側に言わせると「規制が多くて困難を極めた」そうだ。実は筆者の<初ディレクター仕事>は約1週間の地方ロケ巡り!そのうちの1つが「大阪」だったのである。ロケを行った際、予定よりも早く撮影が終わったため現地スタッフが気を利かせて「ブラック・レインのロケ地でも廻りましょうか?」と言ってくれたので、何箇所かクルマで案内して貰った^^
その際、ケイト・キャプショー(=スピルバーグ夫人)が浮浪者にお金をめぐむシーンが撮影された橋も見たのだが、現在ではその橋も取り壊されてしまった(残念)。「市内の道路一帯が交通規制されて渋滞がすごかった」とも言っていた。スコット同様、筆者的にもあのロケ地巡りは・・・いい思い出だ。


 また今作は高倉健が歌も披露する「貴重な一作」でもあるのだが、その健さんの行きつけの床屋(都内某所の一流ホテル内にある超高級理容店)で働いていた筆者の友人によると、健さんは「ブラック・レイン」で共演した優作に対して「ガンに侵されていたのに・・・(あそこまでやるなんて)あいつはバカだ」と無念そうに語っていたと言う。マイケル・ダグラス健さんと「いまでも連絡を取り合っている」そうだが、たまには優作の話題も・・・出るのかしら?


 ・・・とまぁ、こんな感じで何故か「ブラック・レイン」関係者(?)に友人・知人が多い筆者なのであります。作品自体を観たのは大学生の時でしたが「業界入り」してから何かと不思議に縁のある、個人的に非常に思い出深い映画の1本・・・それが「ブラック・レイン」なのでした。


 
 <余計な追記>スコットと言えば・・・近日、「ブレードランナー」の「ファイナル・カット」版が公開されるけど・・・一体、何バージョン作れば気が済むんだ(苦笑)?