小中学生のとき、近くにあった映画館(俗にいう「二番館」や「三番館」)で筆者は傑作から駄作まで浴びるように映画を観た。それが現在の仕事でいかに役立っていることか、当時は知る由もない(笑)。一方、太平洋を隔てた映画大国アメリカにもB級映画を連続上映する「グラインドハウス・ムービー・シアター」がどこの都市にもあった(郊外になると「ドライブイン・シアター」)。独立系プロダクション制作の映画が主でプリント本数が少なく、さんざ使い回されたためフィルムの傷が目立ち、中にはまるまる一巻分のフィルムが消失。いきなり場面が飛ぶことも多かったそうだ(笑)。
そんな「グラインドハウス・シアター」で映画を観ていた少年がー<シネマ・ジャンキー>クエンティン・タランティーノ!!同じ映画的趣味を持つ盟友ロバート・ロドリゲスと共に当時の様子を再現すべく作られた映画が<B級作2本出て>、<フェイク(嘘)予告編>も間に挟んで作られた「グラインドハウス」である(総上映時間:3時間11分)。
ところが「非英語圏」での上映はそれぞれ「単独」で&「嘘予告編」カット!!なので本来の企画意図を汲んで「U.S.A.バージョン」を観に行った次第(なんせ日本全国で東京と大阪のたった2館でしか上映されず8日間の限定公開!こういう時だけは都民で良かった)。
最初は2本まとめて紹介しようと思ったのですが、えらく長くなりそうなので2回に分けたいと思います(苦笑)。ではアメリカ版の公開順に従って、まずはロドリゲス(この企画の発案者)の「プラネット・テラー」から!
テキサスのとある町にある米軍基地。部隊長マルドゥーン(ブルース・ウィリス!)がロン毛の怪しげな男アビーと密かに<あるもの>の取引を行うのだが交渉は決裂。アビーは所有していた機械に銃を放つ。そこから洩れたガスを吸った人はゾンビのような“シッコ”(=「感染者」の意。マイケル・ムーアの映画とは別)に・・・!その頃、ゴーゴーダンサーのチェリー(ローズ・マッゴーワン)はバーベキューの店で元彼レイ(フレディ・ロドリゲス)と再会。店を出た2人が車でドライブしているとシッコたちが来襲!チェリーは片足をもがれてしまう。町には次々とシッコが増殖しつつあった・・・。
ゾンビ映画(今作は厳密に言えばゾンビではない)をこよなく愛するロドリゲスが今企画を思いついた時点で「俺はゾンビものを作る!」と即決。次々と閃いたキャラクターと得意のアクションをぶちこんだのが「プラネット・テラー」である。いつものように製作・監督・脚本・撮影・編集・音楽と1人6役の塚本晋也状態で取り組んだ。「事件の発端」は・・・どうみても「バタリアン」が元ネタ(笑)。
タランティーノの「デス・プルーフ」と比べて今作の方が“遊んでいる”と思う。フィルムの傷、コマ飛びの再現はタラより遥かに多い。特にエロいシーンでは突如、フィルムが燃え上がりいきなり場面が飛ぶ(苦笑:単独では「完全版」の上映なので補完されているとは思うが)。
物語は観客の予想通り、大挙して襲撃してくるシッコと非感染者たちが大バトルを繰り広げるのだが(ゾンビ映画の定番)そのアクションが凄い(編集の切れもよし)!中でも片足をもがれたチェリーは、レイが(いつのまにか)作った<義足式マシンガン(ロケットランチャー発射可)>でシッコを次々と激殺!!どうやって引き金を引いているのかは分かりません(爆笑)。「ご都合主義」と言われればそれまでだが「B級」だからギャグとして笑える(真面目な人は怒るかも)。室賀厚が米倉涼子で撮った「GUN CRAZY」を彷彿とさせる。
デジタル合成はふんだんに使っているし、キャストにもブルース・ウィリスのほか、「ターミネーター」のマイケル・ビーン(太った)、「ゾンビ映画」には欠かせないトム・サヴィーニ御大、更にタラまで出演し怪演を披露(役名「レイプ魔ナンバー1」:爆笑)。「B級映画」の体裁はとっているものの、これは紛れもない「A級娯楽大作」だ。企画意図を踏まえて、シャレの分かる人にはお薦めしたい映画でやんす^^
ちなみに「プラネット・テラーinグラインドハウス」単独ロードショーの際にも、冒頭にある嘘予告「マチェーテ」は唯一上映されます!監督はロドリゲス。出演はロドリゲス映画の常連ダニー・トレホ(「デスペラード」)とチーチ・マリン(「フロム・ダスク・ティル・ドーン」)。アクション&グロ、エロがこん然一体となった魅惑の予告(=金かかってる)。これはマジで長編映画化希望!