其の190:「ダイ・ハード4.0」を観たけれど

 12年ぶりのシリーズ作「ダイ・ハード4.0」を観ました。ブルース・ウィリスのブレイク作ともあって(ウィリスは製作も兼任)アメリカ各地を舞台に、もの凄いアクションがてんこ盛り!主人公は・・・もう人間ではない(苦笑)。
 監督が「アンダーワールド」シリーズのレン・ワイズマンだけに(「ダイ・ハード」シリーズの大ファンなんだそうだ)ビジュアル的にも(特に色彩)凝った作りになっていました。実際に「スター・ウォーズ」オタクのケビン・スミス(映画監督&俳優&漫画原作者でもある)がまんまの役で出ていたのには笑った!「アクション映画」としては大いに楽しめましたが・・・1作目にみられた設定の良さや脚本の緻密さは・・・もうなかったなぁ(残念)。


 ロデリック・ソープの原作を基に作られた第1作(88年)。クリスマス・イブの夜、テロ集団がロスにある日系企業のハイテクビルを占拠。偶然居合わせたニューヨーク市警のジョン・マクレーン刑事(=ウィリス)が人質となった妻を救うため自分の運の悪さをボヤきつつ孤軍奮闘する・・・!
 監督はアーノルド・シュワルツェネッガーの「プレデター」で頭角を現した監督ジョン・マクティアナン。仕事の依頼が来た時点では十数ページのシノプスがあっただけだったそうだが・・・限定された空間を生かして追いつ追われつのスリリングなアクションを見せてくれた(主人公の背後でヘリが爆発する一連のアクションは凄かった)^^

 「限定された(縦の)空間」という設定のほか、脚本がまた秀逸!冒頭、ロスへ向う飛行機の中で「高所恐怖症」の主人公が隣の乗客から「リラックスする方法」として「裸足」になる事を教わるがーこれが大事件発生後の伏線(=自らを鼓舞し、落ち着くために裸足になる)となる。思いがけず奮闘するマクレーンにテロのリーダー(これが映画初出演となったアラン・リックマン。いまでは「ハリー・ポッター」シリーズのレギュラーとして活躍)は窓ガラスを撃ち、主人公に更なる危機を与える事となる(=サスペンスを加味)。
 また主人公を勇気づけるのがトランシーバーで会話する黒人警官。彼は過去のトラウマで銃が撃てなくなっているのだが、最後には・・・(ネタバレになるので書きません)。本当にうまい脚本だと思った(脚本家のひとり、スティーヴン・E・デ・スーザは後に監督となる)。かの立川談志師匠も絶賛した納得の出来!大ヒットしたのも頷けます。


 2年後に作られたのが「ダイ・ハード2」(これも基になった原作あり)。ビルに続く舞台は「空港」です。監督はレニー・ハーリンにチェンジしたものの奥さんや先の黒人警官、嫌味なTVレポーターの出演のほか、お約束(事件の発生は「クリスマス・イブ」だし、主人公は当然ボヤく:笑)は踏襲されています。ただ・・・ちょっとマクレーンがヒーロー然とし過ぎた感も。もうウィリスもスターだったせいかもしれんが、ちょっと強すぎた。「マカロニウエスタン」のファンとしてはフランコ・ネロ(ジャンゴ!)が終盤出たのは嬉しかったけどさ。


 そして前作「ダイ・ハード3」(’95)。監督にはマクティアナンが再登板。敵役にはジェレミー・アイアンズを迎えたが・・・これまでとは趣向がガラリと変わり、舞台はニューヨーク全域に!更にマクレーンの「相棒」としてサミュエル・L・ジャクソンが同行する事となった(「4.0」もこの形式)。実はこの<設定の改変>にはちょっとした理由がある。
 実は当初「3」は<限定された空間>として「船」が想定されてシナリオが書き進められていたのだが、スティーヴン・セガール主演の「沈黙の戦艦」が大ヒットしたため「ネタがカブる」として却下されてしまった(そのシナリオを流用したのが凡作「スピード2」)。その結果、「リーサル・ウェポン3」用に用意されたシナリオをアレンジして作られたのが「ダイ・ハード3」というわけ(ややこしい話だが)。これで<バディ・ムービー>になった理由が分かったかな?
 ちなみに同じくウィリスが主演した戦争アクション「ティアーズ・オブ・ザ・サン」は当初、「ダイ・ハード4」用のシナリオだったというから・・・ハリウッドのネタ不足はマジで深刻だ(苦笑)。よって4作目にして始めてオリジナル・シナリオが書かれたというわけ。

 「2」同様、「3」も「アクション映画」としてはなかなか楽しめたが、シリーズ本来の良さが失われてしまい、かなり大味。印象が薄い作品になったことは否めない。
 ただ、強さとユーモアを兼ね備えた人間くさいジョン・マクレーンは愛すべきキャラクター。ウィリスは「5」製作の可能性については肯定も否定もしていないが、次あるとしたら再び「限定空間パターン」でひとつヨロシク(笑)!