其の191:これが本家?「カジノロワイヤル」

 昨年、スピルバーグの映画「ミュンヘン」に出演したダニエル・クレイグジェームズ・ボンド(6代目)に扮したシリーズ第21作「007/カジノ・ロワイヤル」が公開されました。これこそ原作者イアン・フレミングによる「007」第1作!だが、今回がこの小説の初めての映像化ではありません。
 最初の映像化は小説が発表された1954年、CBSテレビの某番組の一編としての放送でした(ボンド役にはバリー・ネルソン)。次いで映像化されたのが今回ご紹介する67年のパロディ映画「カジノロワイヤル」!オールスター・キャストによるドタバタ作品で、「007」の亜流やパロディ数多くあれど、その極めつけが今作です^^


 現役を引退(!)、悠々自適の生活を送っている往年のスパイ、ジェームズ・ボンド(デイビッド・ニーブン)の元へ英・米・仏・ソの諜報機関の幹部が復帰の要請に訪れた。国際陰謀団「スメルシュ」によって各国のスパイが次々と暗殺されている現状をボンドに解決して貰おうというのだ(こらこら)。「ボンド復帰」の報を耳にしたスメルシュはボンドの女嫌い(笑)を利用して「色仕掛け作戦」を敢行するも失敗。それに対抗すべくボンドは敵をかく乱するため「007 ジェームズ・ボンド」の名を4人の男女に名乗らせ(爆笑)敵組織への潜入を図る・・・!


 62年よりショーン・コネリーの本家シリーズが既に始まっているとはいえ、原作を見事なほどの換骨奪胎ぶり(笑)!小説から引用されたのはボンドのほか、M、「最初のボンド・ガール」ヴェスパー・リンド、ボンドと対決するルシッフルといった主要人物と「カジノでの巨額のカードゲーム対決」といった設定だけ。既に「引退」していて「女嫌い」のボンドというだけで笑える(その甥にあたるスパイがお笑い時代のウディ・アレン:爆笑)。おまけに彼は現役時代、有名な女スパイ「マタ・ハリ」と恋愛関係にあって私生児(その名もマタ・ボンド!)までいるという世界史を塗り替える大胆な設定。
 更に凄いのが後半活躍するのがニーブンではなく「007」を襲名したひとり、ピーター・セラーズクルーゾー警部)。彼が同じく「007」を襲名したヴェスパー(演じるのは本家シリーズに出演した初代ボンドガール:ウルスラ・アンドレス!)と共にルシッフル(オーソン・ウェルズ!)とカード対決し、最後にはUFOから「ドクター・ノオ」ならぬ「ドクター・ノア(誰が演じているかは観てのお楽しみ)」まで出てくるんだから・・・もう(笑)。


 ニーブン、セラーズ、アレン、ウェルズの他、「麗しのサブリナ」のウィリアム・ホールデンに名女優デボラ・カー、そしてジャン・ポール・ベルモンド(ちょい役だけど)まで出る超豪華俳優陣!映画「キャンディ」の稿でも似たような事を書いたが、何故このようなドタバタパロディに皆が出演したのかは・・・謎だ(笑:ウェルズだけはギャラに目がくらんだ事は間違いない)。
 監督は「M」役の出演も兼ねたジョン・ヒューストンを筆頭に合計5人(何故?)!!劇中には大量に<美女>が動員されているので撮影はきっと楽しかったことだろう^^音楽はかのバート・バカラックが担当(彼はこういう仕事も多いね)、アカデミー歌曲賞にノミネートされている。巨額な費用(美術も凄い)に豪華俳優陣と一流スタッフが揃ってバカやると(失礼!)・・・こんな作品が出来るっていうことなのかな!?


 
 ちなみに先日、実在したボクサーの感動実話「シンデレラマン」と麻薬の運び屋になったコロンビアの少女を描いた異色青春映画「そして、ひと粒のひかり」を観ました。パロデイ嫌いの方にはこちらをお薦めします!どちらもいい映画ですよ^^