其の185:シュールな恋愛映画「あの胸にもういちど」

 ダウンタウン松本人志の初監督作品「大日本人」を観ましたが・・・予想はしていましたが超シュールな出来でした(苦笑)。1968年に制作された「あの胸にもういちど」も超シュール!日本人的にはアラン・ドロンの作品と思われがちですが、主人公はパツキン美女マリアンヌ・フェイスフル。一時期、ローリング・ストーンズミック・ジャガーの恋人として話題を振りまいた方でごんす(乳出しあり)。


 レベッカ(マリアンヌ・フェイスフル)は、恋仲となった大学教授ダニエル(アラン・ドロン)と結婚後もずるずると関係を続けていた。ある朝、彼女は彼からプレゼントされたハーレーダビッドソンに乗って一路フランスからダニエルの住むドイツへと向うのだが・・・。


 「あら筋」を書くと上の様に非常にシンプルな内容(原作はアンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの著書「オートバイ」。ヒロインがバイクに乗るのは「イージー・ライダー」ほかの<アメリカン・ニューシネマ>の影響だろう)。だが、この道中に彼女のモノローグ(いかにもフランス的アンニュイな感じ)と回想シーン&幻想シーン、さらにフィルムの色調をいじりまくった映像が入り乱れてくる!!これを耽美的と表現するかシュールと感じるかは・・・観る人によって異なるだろう(苦笑:「黒水仙」や「アフリカの女王」ほかで知られる撮影監督ジャック・カーディフが監督・脚本・撮影を兼任)。
 それにしても「マゾヒズム」の語源となったマゾッホ原作の「毛皮のヴィーナス(ラウラ・アントネッリ出演版)」といい、どうもこの時代の倒錯系恋愛映画はーいま観ると奇妙なカメラワークや実験映像が多くて笑えますな。


 この作品で最大の見所(?)はヒロインとドロンとのラブシーン・・・ではなく、彼女が素肌に黒革のバイクスーツを身につけている事(=男子の妄想度アップ)!このスタイルはアニメ「ルパン三世」の峰不二子を彷彿とさせる。これに対して我が友人から「檄文」が届いた。本人了承のもと、以下その文章を少々引用するがー筆者も彼と全くの同意見である。

 「最近の雑誌ライター系(特にサブカルチャー系)の連中は、ろくなリサーチもせずに、他人の書いた記事を書き写し書き飛ばす風潮にあるようで、何の根拠もない仮説がいつのまにか「定説」になってまかり通っているという世の中であります。その典型的な例がこの映画のヒロイン、マリアンヌ・フェイスフルがアニメ版ルパン三世峰不二子の原型になった、という話です。
(中略)そもそも<レザージャケットを着て大型バイクに乗る>ヒロインはマリアンヌ・フェイスフル以前にもいたわけで、アニメ版ルパンのスタッフはそっちを見ている可能性もあるわけです。」

 さらに友人は英・TVドラマ「アベンジャーズ(後にユマ・サーマンレイフ・ファインズショーン・コネリーの出演で映画化。駄作だったけど)」がそのルーツではないかと推理している。確かに彼が読んだであろう雑誌記事を筆者も目にした<記憶>がある。巨大な映画史を辿っていくとこういう事例が多々あるものだ(例えば「スター・ウォーズ」のヨーダの名は、溝口健二作品で知られる脚本家・依田義賢に由来するという説も有名だが、ジョージ・ルーカスはそれを一蹴している)。このブログでは埋もれた映画を紹介すると同時に、「誤った定説」も今後、可能な範囲で訂正していきたいと思う。


 さて次回はーさらにマニアック特集として「セッソ・マット」や「華麗なる殺人」、「ショック集団」とか「キッスで殺せ」。はたまたフリッツ・ラングのサイレント大作「ニーベルンゲン」・・・どれにしようかなぁ(笑)!