其の178:人生ほど重いものなし!「ブロークバック・マウンテン」

 映画「ロッキー・ザ・ファイナル」の中で、ロッキー(シルベスター・スタローン)は息子に「人生ほど重いパンチはない」と語るがー全くその通りだと思う。まだ若いにーちゃん、ねーちゃんに理解は求めませんが年を重ね、家庭を持ったともならば・・・誰しもがきっと納得する台詞だ(=筆者もその一人)。
 映画「ブロークバック・マウンテン」は「カウボーイ同士の禁断の愛!」とか必要以上にそっち方面であおられた感がありますが、筆者は「人生の苦さ」をしみじみと感じてしまいました。決して男がケツ堀りまくるだけの作品ではない(笑)。以下、読むのが嫌になられた方は「40歳の童貞男」をお薦めします。こっちは健全よん(笑)^^


 1963年、米ワイオミング州ブロークバック・マウンテン。ここに19歳の若者イニス(「パトリオット」、「ブラザーズ・グリム」のヒース・レジャー)とジャック(「デイ・アフター・トゥモロー」のジェイク・ギレンホール)の2人が牧童として長期アルバイトに雇われる。それぞれ家庭環境に問題のあった彼らはやがて山で生活するうち、友情が肉体関係に発展する(勿論、この当時、世間的にも彼ら的にも後ろめたい。特にイニスは過去、同性愛者がなぶりものにされて殺害された事件をトラウマとして抱えている)。
 バイト終了と共に袂をわかった2人はそれぞれ家庭を持って普通の生活を目指すものの、4年後にイニスとジャックは再会。絆を確かめ合った2人はやがて「釣り」を建前に山中で密会を重ねるようになるのだが・・・。


 監督は中国出身のアン・リー(女性じゃないよ)。今作で初のアジア系監督によるアカデミー監督賞を受賞しました。かねてより丁寧な人間描写には定評があり今回堂々のオスカー獲得!中でも目を引くのが中国系でありながらカウボーイの細かい描写のリアルなこと!時代劇や「オールウェイズ 三丁目の夕日」をアメリカ人が撮ってもこうはならんぞ(笑)。この辺りはかなり勉強したとみた。勿論、大西部の雄大な風景も楽しめます(国内を長期あちこちロケした賜物)。


 さて肝心の物語の方ですが、一時期「ゲイ」や「レズ」の方々を主人公に据えた映画が連発されましたが、今作の2人はそっち専門ではない。ちゃんと女性と結婚するし、子供ももうける。で、妻以外の女性とも浮気する(笑)。古代ギリシャでは「純愛(=精神的な愛)は男性同士がするもの」だったとか。その意味では20年に渡り、愛し合う2人はまぎれもない純愛だろう。なにより、この2人の不幸は「家庭生活」に恵まれなかった点にあると筆者は思う。
 イニスは妻に「牧場暮らしをやめて街に出よう」と言われるし、おまけに生活苦で夜の生活もままならない(=子供が2人いるので、3人目が出来たらますます生活が困窮)。
 一方、ジャックは裕福な家の娘(「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイ)と結婚した為、彼女の父親に頭が上がらずバカ扱い使いされながら父の仕事を手伝う破目に。それぞれの奥さん共、悪い人たちじゃないのだがー確かにこの状況では男としてはフラストレーション溜まるよなぁ(女の人は「現実的」だからねぇ:苦笑)。
 そんなストレス生活の2人だったからこそー「心の拠り所」を求めてズルズル密会を重ねたような気がするのだ。まぁ、中にはタマってて性欲処理でその場の同性愛に走る人もいるだろうけど(笑:「池田屋騒動」前の「新撰組」とかはそうだったらしい)。


 主人公に扮したヒース・レジャージェイク・ギレンホールも好演!何せ20年に渡る話なので10代の終わりから30代後半までをビジュアル(髭生やしたり、腹出たり)&演技(発声を低くする)で演じ分けております。下世話な事いうとジェイクはまだキルスティン・ダンスト(「スパイダーマン」シリーズ)と交際しているのか(笑)?
 なにより面白いのは、同性愛がバレてヒースとギクシャクする奥さんを演じたミシェル・ウィリアムズが、実生活ではヒースと結婚したこと!男女の間は何が起こるか分からない(笑)。


 劇中の細かいエピソードやラストどうなるのかは<ネタばれ防止>で書きませんがーこれはある程度、年端のいった男性に是非観て欲しい。筆者はノンケですが、ちょっと2人に同情してしまった。本当に人生とはままならないものだから。
 「男同士の愛なんて観たくねぇ!」という硬派な方にはアン・ハサウェイが今作でおっぱい出してますから、どうぞそちらをお楽しみに(笑)^^