其の179:ハイパー実録犯罪映画「丑三つの村」

 先日、玉木宏蒼井優主演、カフカじゃなくて東野圭吾原作の「変身」をDVDで観たのですがー主人公が悲惨すぎて筆者はダメでした。いくら何でもあれは・・・酷すぎる(苦笑)。故・古尾谷雅人主演による松竹映画「丑三つの村」も・・・ある意味、凄い話!その昔、深夜にTVで放送していたのを観ていたので久々に再見したのですがーよく、これオンエア出来たなぁ(苦笑)。横溝正史が「八ツ墓村」執筆で参考にした「津山事件」(津山30人殺し)の映画化であります。ちなみにハードな残酷描写の数々が登場するので「18禁」ですからご注意!!


 この事件は昭和13年、岡山県の津山で起こりました。村一番の秀才だった青年(=古尾谷)が肺結核にかかったことで憧れていた兵役に行けず、完全に村八分。人々から馬鹿にされたことの鬱積が爆発し、夜中に完全武装して村民を大虐殺した事件です(犯人はその後、自殺)。このブログはそのテのサイトではないので、事件の詳細については自分で調べてね^^
これが松竹映画「八ツ墓村」で山崎努が逃亡した妻を捜して村人を殺しまくるネタとなりました。古尾谷さんが後年「金田一少年の事件簿」の警部役をやっていたのは単なる偶然(笑)。


 この日本犯罪史上有数の恐ろしい惨劇を監督したのは「にっかつロマンポルノ」で次々と異色作を手がけた故・田中登。古尾谷はまだ若手の頃、何本かロマンポルノに出演しており、田中とは旧知の仲。直木賞候補にもなった西村望の小説を原作に、久々に再会した2人は関西をメインとする地方ロケ(オープン撮影)と東京でのセット撮影(クライマックスの大殺戮シーン)というハードな日程ながら、お互いの情熱のありったけを作品に注いだという(暗い内容に反して現場は楽しかったそうだ)。


 さすがに1983年制作の映画ですので、いま観るとベタな描写も多々あり。主人公がC調ながら金せびる先輩(=実在の人物。演じるのは元「ずうとるび」の新井君)にエロ写真貰って、見ながら股間を押さえるとか(笑)、幼馴染の女の子(田中美佐子!)とじゃれあって目があってドキッとするとか(爆笑)。くさいと言えばくさいが、劇中の音楽と併せて「陰惨な犯罪映画」というより「青春映画」のテイストを取っているのがミソ。これが初主演の古尾谷は体当たりで「夢破れ八方ふさがりとなった青年」を熱演しています(存命中は自身が監督で今作のリメイクも考えていたらしい。いかに本人がこの作品を気にいっていたかがよく分かる逸話である)。


 肝心のクライマックスの大殺戮場面は、松田優作の「遊戯」シリーズほかを担当したトビー門口がガン・エフェクトを担当。この映画では銃器の振り付けに留まらず、流血カットの効果も担当。ショットガンで男の頭部がふっとぶ場面ではスイカを爆発させ、男の断末魔の表情を巧みに編集することでリアルな効果が生み出された(この一連の下りは田中登映倫からクレームが来ることを警戒し、場面によっては2バージョン撮影した箇所もあるという)。邦画のバイオレンスシーンのレベルを大きく向上させた、とも言えるだろう。


 現在では「元祖和製スプラッター映画」として知られる今作ですがー観賞後はさほど下っ腹は重くなりません。ビートたけし主演の「血と骨」や「硫黄島からの手紙」の方がぐっと来る(苦笑)。「いくら作り物とはいえ残酷シーンはダメ」という御仁には池波志乃五月みどり田中美佐子が脱いでいますのでそちらをお楽しみに(笑)。「コメットさん」の大場久美子も出てるけど、彼女のヌードはありません。念のため。