其の177:ご家族揃って・・・「グエムル 漢江の怪物」

 ゴールデン・ウィーク真っ最中です^^そこで今回はご家族揃ってお楽しみ頂ける韓流映画「グエムル 漢江(ハンガン)の怪物」を。タイトル通り怪獣映画です(笑)。本国では大ヒットしたのに、日本ではあまり受けなかったなぁ(評価は高かったけれど)。ところが、この怪獣映画、監督が「殺人の追憶」のポン・ジュノだけあってセオリーとはちと異なるのが面白い!!


 在韓米軍が古い薬品を漢江(「ハンガン」と読む。川の名前)に流した事がきっかけで突然変異による巨大生物が出現(それが「グエムル」)、川の周辺で暴れまくる!そんななか中1の娘を怪物にさらわれた家族(祖父、父とその弟・妹)4人が怪物から娘を奪い返すために奮闘する・・・というお話。予算はA級なのに、テイストはB級(笑)!


 まず、なにより面白いのは話を<家族の奮闘>に絞ったところだろう。「ゴジラ」や「キング・コング」ほか山ほど怪獣映画ある中で、こんなに警察や軍隊が活躍せず(=ウィルスを怖れて何もしない:苦笑)いち家族が奮闘する作品は他に例がないのではないか。
 で、普通はその家族が執念で獅子奮迅の活躍をすると思うのだがーところが主人公の娘の父親を含めてこの家族全員あまり賢くない(笑:さらわれた娘が一番頭良くて勇敢)。コメディ的要素も加えられているのだ。これも怪獣映画では新機軸!
 
 「JSA」や「殺人の追憶」、「南極日誌」ほかで知られる名優ソン・ガンホ(=韓国四天王)がアホのグータラ父ちゃんを熱演!妻には逃げられ、中学生の娘にはビールを薦めるとんでもない親父に扮している(苦笑)。このバカ家族がいかにして警察や軍隊の目をかいくぐって(=グエムル出現時に現場にいた事でウィルスに感染してると思われている)怪物の居所を探り、娘を救出するかーで物語は進行していく。

 
 さて<肝心の怪物>の方ですが「川の生き物が突然変異によって巨大化」という設定は「ゴジラ」の昔からよくあるベタなもの(苦笑)。ところがサイズ的にはたかだか10数メートルという事で、妙にデカすぎるよりはリアルといえなくもない。放射能浴びたわけじゃないしね。
 デザインも魚類と両生類を足して2で割りつつ「エイリアン」になったようなグロい造形で身体はヌメヌメ(きもっ)。で、川の周辺でしか活動しない!「ゴジラ」みたいに街の中などに行ったりはしないのですね(=元は川の生き物だから)。普通は街の中で暴れて「地球防衛軍」と戦う(笑)。その点でもリアルだが・・・何故人間を食べるのかは不明(苦笑)。
 
 ニュージーランドに拠点を置き「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「キング・コング」を手がけたスタッフが怪物のフルCGや等身大模型を担当。だからとってもリアル(笑)!さらに監督の趣味でグエムルの動きは竹中直人のコミカル演技を参考にしたという。確かにその話を知っていると、竹中っぽく見えるから不思議だ(爆笑)!


 大傑作「殺人の追憶」を演出し、「韓国のスピルバーグ」(昔はツイ・ハークが「香港のスピルバーグ」と書かれてたし、なんでもスピちゃんにすればいいってもんじゃないだろ。日本の芸能マスコミ!!)と呼ばれるポン・ジュノ監督だけに今作でも映像(スローモーション+完璧な編集)、音響(劇音と現実音の使い方)、構成はまたまた絶妙です。
 下手な映画評論家だと「在韓米軍へのささやかな批判」とか「現実に怪獣が現れた場合の仮想シュミレーション」とか書きそうだけど(笑)そんなベタなことよりも「これまでにない新しい怪獣映画を作ってやる!」という強い意欲を感じました。筆者とポン・ジュノ(=ゴジラのファン)は同世代だし、なんとなく怪獣映画に対する想いは共通だと思うので。そうじゃなきゃ、ここまでの予算と俳優集めてB級映画なんて作らないから(笑)。


 最後のオチは正直、賛否両論あるかもしれません(ネタバレになるので書きません)。もっとストレートに終わった方が良かったかもしれませんが・・・ラストの余韻を含めて筆者は「買い」ました。「コメディータッチのB級怪獣映画」と一線を画す為に創作上、ああしたかも知れませんけどね。
貴方の心には何が残りましたか(って木村奈保子か)?