其の168:スピ+トム「マイノリティ・リポート」

 「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」、「ミュンヘン」ほか今や知らない者のいない世界的監督スティーブン・スピルバーグ。そして「トップガン」でブレイクし、一時期ゴタゴタしたもののようやく落ち着きを取り戻した(ようにみえる)俳優トム・クルーズ。この人気者2人が初のコンビを組んだ映画が「マイノリティ・リポート」。これはアクション&ミステリー&サスペンスが渾然一体となった大娯楽作!


 3人の予知能力者を使って犯罪を未然に防ぐシステム「プリコグ」を構築し、犯罪が激減した西暦2054年のワシントン。ジョン(トム・クルーズ)は、そのシステムを持つ「犯罪予防局」に勤めるエリートである。そんなある日、「プリコグ」はジョンが36時間以内に男を射殺する事を予言する。こうして彼は否応なく同僚たちから追われる破目になる。果たして彼は無事逃げのび、真相を暴く事が出来るのかー!?


 原作は「ブレードランナー」、「トータル・リコール」で知られるフィリップ・K・ディックの同名短編小説(タイトルは「少数報告」の意)。勿論、映画は大幅に脚色してます!なんでもトムがこの小説に目をつけ、スピルバーグに映画化を提案したそうだ。主人公のジョンは所属する組織的には「優秀な人物」だが、プライベートではかつて子供が誘拐されたトラウマに苦しみ(おかげで妻とも離婚)、夜な夜な息子の映像を観てはドラッグに依存している。この<二面性>のあるキャラクターが俳優・トムの役者魂を刺激したのだろう。本人がスタントなしで演じる大好きなアクション・シーンもたっぷりあるし(笑)。
そのトムを追うのは「フォーン・ブース」、「アレキサンダー」のコリン・ファレル。嫌味ないかにも「役人」という敵役を熱演!主人公の殺人を予言するエスパーにはウディ・アレン監督「ギター弾きの恋」のサマンサ・モートン。頭を丸刈りにして頑張ってます。で、役名は「アガサ」(勿論、アガサ・クリスティーから来てる)!ちなみに残りの2人は「ダシール(・ハメット)」と「アーサー(・コナン・ドイル)」・・・「ミステリー・ファン」ならすぐ分かるベタなネーミング(苦笑)。この他、トムの上司にイングマール・ベルイマンの常連俳優マックス・フォン・シドー大先生が扮し、渋く脇を固めてます。


 筆者はスピルバーグの監督作品を全て観ているが、アクションは「インディ・ジョーンズ」シリーズをはじめお手のものだとして、ここまで<ミステリー>をメインに据えた作品は初めてだ。これまでの「娯楽路線」同様、テンポよくストーリーが展開。2時間半にも及ぶ長尺をハラハラドキドキさせながら一気にみせてゆく(撮影は「スピルバーグ組」のヤヌス・カミンスキー。何故か製作にヤン・デ・ボン)。ILMの手がけた「未来都市」も一見の価値あり!スピルバーグ得意の分かりやすいギャグも健在である(笑)。音楽は言うまでもなくジョン・ウィリアムズ^^


 スピとトムはこの成功の後、かの有名SF作「宇宙戦争」をリメイクしましたが・・・つっこみどころ満載の珍作となった。「東スポ映画大賞」では「シベリア超特急」、「デビルマン」らが受賞した「特別賞」を受けている(笑)。ふたりの3度目のコンビ作に期待しましょう(あるかどうか分からんが)!!