其の151:欧米のニュー・ヒーロー映画!

 「日本」で昔からの<空想上のヒーロー>といえばー手塚治虫の「鉄腕アトム」を挙げる人は多いのではないでしょうか。さすがに「怪傑ハリマオ」や「月光仮面」は古すぎる(笑)。近年、欧米で昔ながらのヒーロー映画が作られてます。それもファンならば思わず笑みを浮かべてしまうマニアックなもの(笑)。そんな欧米のヒーロー映画、2本をご紹介(「タカアンドトシ」の定番ツッコミは無用)!!


 まずは欧州フランスのヒーローといえばモーリス・ルブランによる怪盗紳士アルセーヌ・ルパン!日本的には「ルパン三世」のおじいちゃん(笑)。小学生時代に「ルパン」の本を読んだ人は数多いでしょう。そんな彼を甦らせたのが2004年のフランス映画「ルパン」(まんまやん)!

 19世紀末のフランス。青年アルセーヌ・ルパン(ロマン・デュリス)は貴族や権力者しか狙わない腕利きの泥棒。ポリシーは決して人を殺さない義賊である。そんなルパンがひょんな事からカリオストロ伯爵夫人(「イングリッシュ・ペイシェント」、「モンタナの風に抱かれて」のクリスティン・スコット・トーマス怪演!)を助けた事によって、マリー・アントワネットの隠し財産にまつわる陰謀に巻き込まれてゆく・・・。

 宮崎駿監督による「ルパン三世 カリオストロの城」で御馴染みの「カリオストロ」、「クラリス」の名は宮崎監督のオリジナル・ネーミングではありません!ルブランによるシリーズの一編「カリオストロ伯爵夫人」から取られた名前です。とはいってもアルセーヌ・ルパン(正しいフランス語発音は「リュパン」)という名前自体、ルブランが当時の国会議員の名前を拝借したのだけれど(笑:一応、トリビア)。

 今作で監督・脚本をつとめたジャン=ポール・サロメ(「ルー・サロメ」ではない)は、若きルパンが活躍する原作「カリオストロ伯爵夫人」を下敷きに、他のシリーズ「奇厳城」、「813の謎」まで詰め込んだ(分かる人には分かる)オリジナル・ストーリーを創作!原作ファンなら良く知るルパンの「少年時代のエピソード」や彼の変名「ラウール・ダンドレジー」まで盛り込んだオタッキーな内容(笑)。意外な展開もあり、ファンならかなりお楽しみ頂ける一作です(最後が少々クドくて、爽快感を損ったのが難点)。

 しかし、なにより一番マニアックなのはDVDの「日本語版吹き替え」!ルパンの恋人となるクラリス(演じるのは「007/カジノ・ロワイヤル」のエヴァ・グリーン)の声は「カリ城」のクラリス役:島本須美!更にクラリスの父親の声は小林清志(=次元大介)、カリオストロ伯爵夫人の声は峰不二子増山江威子!!日本の吹き替えスタッフが一番のマニアだ(爆笑)。


 一方、アメリカ発の世界的ヒーローといえば「スーパーマン」!映画「スーパーマン リターンズ」は20年ぶりとなるスーパーマン映画の新作!もう、この時代なんでも戻ってくる(苦笑)。CGや合成技術ほかの発達もあり(飛行シーンは凄いぞ)快作に仕上がってます!で、「ルパン」同様、こちらもかなりマニアック(笑)。

 映画は「スーパーマンⅡ/冒険篇」から5年後の話(3作目と4作目はなかった事に:笑)。長い宇宙旅行から戻ってきたクラーク・ケントことスーパーマンクリストファー・リーブと同じ系統の新星ブランドン・ラウス)が新聞社に職場復帰を果たしたらーかつての恋人ロイス・ロレインには婚約者がいて、おまけに子供まで産んでいた(おまけに彼女は「なぜ世界はスーパーマンを必要としないのか?」という本でピューリッツアー賞まで受賞)!ショックを受け、ロレインにストーカーまがいの行動をとるスーパーマンとは裏腹に(笑)、宿敵レックス・ルーサー(演じるはオスカー俳優ケビン・スペイシー)の陰謀が進行しつつあったー。

 当初、ティム・バートンが企画に携わっていたものの(ニコラス・ケイジが主演候補)結局、降板。その後、ブライアン・シンガー監督が「X−MEN」第3作のオファーを蹴って登板した(昔のシリーズを監督したリチャード・ドナーに仁義を切ったそうな)。

 コミック、そして旧シリーズのファンを自認するシンガーだけにそのこだわりぶりはハンパじゃない(笑)。有名な「スーパーマンのテーマ」はジョン・ウィリアムス作曲のオリジナルをまんま使用。スーパーマンの父親(マーロン・ブランド)登場のシーンは旧作のフッテージを流用している(「1」でブランドは、宇宙人なのにロレックスの時計をはめている:爆笑トリビア)。更にはコミックスで描かれたエピソードや以前の企画ネタなど、知っていれば楽しめる小ネタもあり!

 敵のレックス役にはケビン・スペイシー(前はジーン・ハックマン)。時に冷酷、時におかしいキャラクターを生き生きと演じています。監督のシンガーとは「ユージュアル・サスペクツ」でも組んでいる。実はこの時、まだケビンがマイナーだったためスタジオ側は彼の起用に難色を示したものの、シンガーは強引に彼を採用。ケビンはこれをいまでも感謝しており「ブライアンから出てくれ、と言われたら俺は何があっても絶対にかけつける」という旨の発言をしている(ええ話やな〜)。


 「ルパン」そして「スーパーマン リターンズ」ー監督やスタッフらが原作のファンだからこそ、徹底的にこだわって作られたもの。やっぱりメジャー原作の映画化はこういう姿勢で作らないとね(「生活」の為に「愛」のない映画を作るのはもうやめましょう:笑)^^