其の138:人間って恐ろしい「柳生一族の陰謀」

 「お正月」という事で今度こそ日本の「時代劇」を(笑)。故深作欣二監督はご存知のようにヤクザ映画「仁義なき戦い」シリーズのほか、文芸作からSF、アクションと幅広いジャンルで数々の傑作を残しました。「柳生一族の陰謀」は群像時代劇とでも言うべき一篇です(後にTVシリーズも作られた)。但しタイトルに<柳生一族>とありますが、柳生家で<真の陰謀>を画策したのは一人だけ!みんな、のせられた(笑)。


 物語は二代将軍・徳川秀忠(=当然、江戸時代よん)が<急逝>した事に端を発し(実はこれが陰謀の一発目)、三代将軍の座を狙うべく長男・家光派(柳生但馬守含む)と次男・忠長派が幕府内はおろか朝廷、浪人たちまでも巻き込んで一代陰謀バトルを繰り広げるー!!


 まず、なにより凄いのが<超豪華キャスト>!「世界のミフネ」こと三船敏郎のほか、一族存続のため陰謀しまくる青白い顔の柳生但馬守萬屋錦之助、その息子・柳生十兵衛千葉真一(やっぱり)!家光に松方弘樹、忠長には西郷輝彦。そして若き日の真田広之志穂美悦子のアクション要員のほか、但馬守のライバルに丹波哲郎と・・・とてもじゃないが書ききれん!凄い俳優が目白押し。・・・ギャラだけで相当、製作費かかってんだろうなぁ(笑)。


 この作品に千葉ちゃんの当たり役・柳生十兵衛が出る、とはいっても彼が大活躍する<アクション>が売りの作品では決してない(勿論、少々はありますが)。あくまで但馬守の<陰謀>によって運命を変えられてゆく人々の流転の様子ー即ち<ストーリーの妙>を愉しむところにある。深作は文芸作品であってもパワフルな描写に変えてしまう稀代の演出家であったが(笑)、今回はそれが存分に活かされチャンバラだけではない時代劇の面白さを堪能させてくれる。<権力への執着>、<出世欲>、<保身>・・・う〜ん、げに恐ろしいのはやはり人間だ。
 更にラストには<史実>を大胆に無視した日本の歴史を塗り替える驚愕のシーンが登場(笑:でも本当)!!これは見てのお楽しみーという事で。
 

 この作品で見られる父・但馬と息子・十兵衛の<確執>がー後の深作の大傑作のひとつ「魔界転生」に引き継がれているのは(=終盤、2人が戦う)・・・あくまで偶然なんだろうなぁ(笑)。