其の126:ネオゾンビ映画「ショーン・オブ・ザ・デッド」

 冒頭から身も蓋もない事を書くがーつまるところ映画は「面白ければよい」と思う。言うなれば<娯楽>!勿論、「芸術映画」と呼ばれるジャンルがあることも認めるが、例えばアンドレイ・タルコフスキーの「ノスタルジア」を観て「ああ、面白かった!」と言う人はいないだろう(笑)。その点、「ショーン・オブ・ザ・デッド」(英)はー完全なる娯楽!!それもあまたある<ゾンビ模倣映画>の中で群を抜いて面白い!「ゾンビ」の創始者ロメロ御大も誉めてマス。


 現代のロンドン。ショーンはいい年こいても悪友エドとパブに入り浸る毎日。それが災いして彼女にフラれてしまう。「このままではいけない!」と生活を変えるべく奮起した矢先、街にはゾンビがあふれかえっていた。さぁ、どうするショーン!?


 「ゾンビ」映画は、周りをゾンビに囲まれる絶望感(ある意味、終末思想)がたまらない魅力のひとつだがーこちらは完全にコメディ・タッチ!ゾンビの動きが遅い事を逆手にとって主人公たちが珍逃避行を繰り広げる(笑)。「恐怖」は「笑い」と表裏一体だと再確認!


 監督や俳優たちが無名なのであえて記載しませんが、制作陣がかなり「ゾンビ映画」を研究した事がよく分かります。主人公たちはゾンビ映画の<お約束>−「頭を潰すとゾンビを倒せる」の基本にのっとって、ありとあらゆる道具を使ってゾンビ退治!ゾンビが大勢いる場合にはー<ゾンビの真似>をして誤魔化すという荒技まで披露する(爆笑)。


 勿論、「笑い」だけでなくーこれまた<お約束>の家族や親友がゾンビとなり、泣く泣く倒すという涙なくしては見られない感動的な場面も!前半、さんざん笑わせ(時には驚かせつつ)後半泣かせるーという構成はビリー・ワイルダーも得意としていたパターン。・・・こうして、よ〜く考えると、この映画はただの「ゾンビのパロディ」の領域ではおさまらない大傑作かもしれない(ホントかよ:笑)。


 また、この映画が<画期的>なのがーゾンビ映画に<意外なオチ>をつけたこと!大抵、最終的な結末は分からずに終わるパターン(=曖昧にボカす)が多いのだがー今作はハッキリ白黒をつけてます。それも、また想定外の内容で(笑)。ゾンビ映画に詳しければ詳しいほど、より愉しめること間違いなし!某亜流作品(リメイク?)の「ダッシュするゾンビ」は・・・俺はダメだったなぁ。大笑いしたけど(苦笑)。


 いま、またジェイソンやフレディ、はたまたレザーフェイスまで次々と復活を果たしておりますが、ゾンビ映画は途切れることなく作り続けられている。もしかしたら「20世紀の芸術」と呼ばれる映画が生み出した最大のスターは・・・ゾンビかもしれない(んなわけ、ないか:笑)。