「最近、面白いサスペンス映画がない」と嘆いたばかりだが、つい先日観たジョディ・フォスター主演の「フライトプラン」は、いわば<ジャンボ版「バルカン超特急」>。ジョディの娘が飛行機内で失踪するのだがー犯行の<動機>がちと弱いし、現実的にはかなり無理あり(苦笑)。
一方、ブライアン・デ・パルマ監督の「ブラック・ダリア」は、デ・パルマファンには快作!ただ、長編小説を2時間におさめたため、少々展開に説明不足の点があったことも事実(これは映画「ダ・ヴィンチ・コード」も同じ)。
「バルカン超特急」と「デ・パルマ」とくれば・・・そう<サスペンスの神様>アルフレッド・ヒッチコックが連想される。ヒッチ・サスペンス数あれどー今回は「めまい」をご紹介!その理由は後ほど。
「高所恐怖症」で犯人逮捕に失敗した主人公(ジェームズ・スチュアート)が刑事を辞め、私立探偵となる。そこへ友人から妻の素行調査の依頼が。美貌の妻(キム・ノヴァク)を尾行している内にいつしか恋仲となるのだが、彼女は尖塔から身を投げて死んでしまう。ところが数年後、彼の目の前に現れたのはー彼女にくりそつの女性だった・・・。
さて何故、あえてこの作品を選んだかというとー原作は「悪魔のような女」の作者でもあるフランスのP・ボワロー&T・ナルスジャックの「死者の中から」なのだが、<本格ミステリー>ゆえ当然ラストに<驚愕の真実>が書かれている。それを何とヒッチコックは途中であっさりバラしてしまうよう改変したのだ(=当然、周りには大反対されたが押し切った)!!そして映画の展開的には「想定外」のオチで見事にまとめてしまったのである!!!
その結果ー映画はキム・ノヴァクを妖艶かつミステリアスに描き上げる事に成功(ちなみに彼女はノーブラ:笑)、更に彼女に執着するスチュアートの異常さ、滑稽さを見事に浮き上がらせる事となった。ヒッチ以外の監督には到底出来ぬ芸当だろう。
主人公とヒロインを際立たせる為に成立している物語をも<換骨奪胎>し、ミステリーに加えてさらなる奥行きを作品に与えたヒッチコック・・・。「原作を脚色する」、あるいは「サスペンス映画を作る」というのは、こういう事ではないのかい!?
天才ヒッチコックをひきあいに出すのは酷かもしれないが、サスペンスを作る映画監督や脚本家は「めまい」をよ〜く観て勉強するように!!