其の127:超ヘビー作・・・「血と骨」

 最近、偶然ながら<実話>の映画化作品をよく観る。「フラガール」をはじめ「9・11」を描いたオリバー・ストーンの「ワールド・トレード・センター」やデンゼル・ワシントンが冤罪の黒人ボクサーを演じた「ザ・ハリケーン」などなど。皆、素直に「いい映画」だと思う。
 今回とりあげた「血と骨」もーその系統につながる<実話の映画化>。但し、先に挙げた作品と違って余りにも重いのだ・・・。


 戦前、日本で一旗あげるべく韓国から日本に来た金俊平(ビートたけし)。彼は持ち前の凶暴性と強欲さをもってーまず近くに住む娘(鈴木京香)を襲い強引に結婚、家庭を築く。以後、舎弟分たちをこき使って「蒲鉾工場」で富を得るものの、一切家族を省みることなく欲望の限りを尽くしてゆく・・・。


 主人公はハッキリ言ってとんでもない人間(苦笑)。それを役者としても天才的な資質を持つビートたけしが演じるものだからー恐ろしい事この上なし!おまけに役作りの為、マッチョに変身!金に汚く、平気で暴力をふるい、次々と愛人を囲う・・・<最強最悪>のキャラクターを怪演。原作者の父親がモデルだというのだから・・・作者一家の苦労は想像を絶するものがある。


 監督は「月はどっちに出ている」で知られる崔洋一(彼自身も韓国籍)。ある意味、日本で産まれ育った<自身のルーツの探求>ともいえるテーマだろう。その題材を得て、重厚かつ骨太な演出。たけし、鈴木京香の他、オダギリジョー田畑智子伊藤淳史ほか豪華俳優陣たちが出演。父親によって翻弄されてゆく姿を巧演している。


 韓国には「血は母より、骨は父より受け継ぐ」という言葉があるそうだが(さすが儒教の国)−とても軽い気持ちで観られる映画ではない。このある種の<重さ(嫌悪感と言い換えてもいい)>は「どこの国」でも、「どこの家庭」でも少なからず存在する重さ、荒み方である。それが究極の形でまざまざと見せつけられ一切<救い>がないものだから・・・余計、胸に、下っ腹に響いてくるのだろう(もし救いがあるなら、哀しくも美しい岩代太郎によるスコアだけかも)。
相当の覚悟を持って向き合わないといけない稀有な一作だと思う。間違ってもカップルで観てはいけない。超気まずくなるぞ(笑:でもホント)!!!