其の112:勝手に新作を祝して「スカーフェイス」!

 まもなくブライアン・デ・パルマ先生ひさびさの新作「ブラック・ダリア」(ジェームズ・エルロイの犯罪小説の映画化)が公開されます(注:2006年9月21日現在)!
デ・パルマといえば<サスペンス>映画の巨匠ですが、もうひとつの系譜として<バイオレンス>作品も多々あります。そこで、先生のバイオレンス作品を代表して「スカーフェイス」をご紹介!


 時は1980年・春。アメリカにキューバから大量の人間が渡航してきた。そのうちのひとりトニー・モンタナ(アル・パチーノ)も<アメリカンドリーム>を夢見る男のひとり。彼はやがて無一文から「コカイン」を足がかりに暗黒街のボスにのし上がっていくのだが・・・。


 実はこの映画、ハワード・ホークス監督の古典的名作「暗黒街の顔役」(1932)のリメイク。それを脚本家時代のオリバー・ストーンが現代的観点(1980年代前半当時)で脚色した。コカイン中毒で苦しんでいたストーンはこの脚本の執筆でリハビリしたという(笑)。


 デ・パルマ先生もこれ以前まではもっぱら青春映画かサスペンス映画オンリー。自身初の経験となるハイパー・バイオレンス・フィルム・ノワールの演出に全精力を傾けた。「いい勉強になった」とDVDの特典映像で述懐されております。
自身の趣味(どぎづい暴力描写満載!血糊いっぱい!)を出しつつ、一部オリジナルの「暗黒街〜」の演出をまんま取り入れる映画マニアぶりも見せてくれます。このほか「美術(大金持ちになったモンタナの内面をも表現するケバケバしい部屋の内装)」、「音楽(虚しくも高らかに響き渡るシンセサイザー!担当はジョルジオ・モロダー)」も特筆に値する。


 また、この作品の最大の見所はーなんといってもアル・パチーノの熱演!すでに大スターだったパチーノですが、自分で考えた長台詞で怒鳴りまくるなどアドレナリン全開!!ラストの大バトル・シーンではグレネード・ランチャーまで(人間相手に使う武器じゃ・・・ない)ぶっぱなして敵を血祭りにあげてゆく!!彼以外にもミシェル・ファイファーやF・マーリー・エイブラハムらも出演しております(懐かしい)。


 おそらく「新作」ではいぶし銀の演出を披露してくれるとは思いますが(希望:笑)、先生にはかつてこの「スカーフェイス」のようなパワフルな作品があった事、そして、それがいまではDVD等でいつでも好きなだけ観られる今の状況はー大変有り難い。DVDに収録されている「予告編」もかっこよくて一見の価値ありです!