其の108:リンチの異常難解倒錯ワールド2作!

 先日、開催された「ベネチア国際映画祭」においてデイヴィッド・リンチ監督数年ぶりの新作が上映されたそうで(我が国では、某女優が出演していた事がマスコミ的に取り上げられた。でもエキストラ扱い・苦笑)。

 リンチ(「私刑」の意味ではない)といえばー良く言えば<難解>、はっきり言えば<わけわからん>映画を作っても許される世界唯一の映画監督(笑)。初期の「エレファント・マン」や「ストレイト・ストーリー」等でごくたまに観客を感動させるものの、それ以外は倒錯した異常世界を描き続けてきた(「ブルー・ベルベット」等)。特にここ数年はその傾向が顕著になってきており、一世を風靡した「ツイン・ピークス」なんて今となってはわかりやすい方(笑)。そこで、ここ2作に絞ってリンチの異常倒錯世界を振り返ってみよう。


 まず、前々作に当たる「ロスト・ハイウェイ」。ビル・プルマン(「インデペンデンス・デイ」)演じる男の元に怪しげなビデオ・テープが送りつけられ、それをきっかけに<難解(=わけわからん)>な世界が展開されていく。1度観ただけで理解出来る人間は、世界に10人といないだろう(笑)。なんせ刑務所に入れられたプルマンが出所した時には別の俳優に変わっている(苦笑)。リンチ的には「精神的なものが男を別人物に変貌させた」という発想らしいが・・・とても常人にはわからぬ!リンチ版カフカの「変身」といったところか。
 「トゥルー・ロマンス」、「エド・ウッド」の2作でおたくのミューズ(女神)となったパトリシア・アークエットの<ヌード>も観られますのでファンの方は是非(笑)!


 そして前作「マルホランド・ドライブ」!ブレイクする前のナオミ・ワッツ主演。女優志望の女の子(=ナオミよ〜)が、ひょんなことから<異常世界>に巻き込まれてゆく(またかよ・笑)。
当然、この作品も・・・わかるようでわけわからん(笑)。実はこの作品も難解になったのには<理由>がある。

 
 本来、「マルホランド〜」は「ツイン・ピークス」同様、本来<TVシリーズ>としてリンチが企画したものだった。そこでアメリカTVドラマ界の慣習にならって「パイロット版(=クチで説明しても理解できぬ上層部の方々ほか向けに製作する<テスト版>のような類いのもの。日本でも昔は作られていたそうな)」を製作。
 ところが「(案の定)わけわからん!ダ〜メ!!」とあっさり却下されてしまった(笑)。すると「このフィルムをもとに1本の映画にしては?」というありがたい声がリンチにかかった。喜び勇んで話になったリンチだが、はたと困り果てた。「ラストをどうするか考えてない!」
 それもその筈、彼は「TVシリーズ」なので、ある程度放送が進んだらオチを考えればいい、と思っていたのだ(爆笑)。


 そんな理由でーオチを<強引>に考え追加撮影した結果、ようやく完成したのが「マルホランド〜」なのである。よって、前半に張られた伏線がまるで意味ないとか、刑事役のロバート・フォスターが一瞬だけ出てきて何もしないという弊害が生じている(笑)。ちなみに「ロスト〜」同様、この作品ではナオミ・ワッツのヌード&レズ・シーンも観られますのでファンの方は是非(でもナオミの「オーディション」場面など、後に彼女がブレイクする一端となる演技力は流石)!


 さて、おそらく先の<新作>はー日本では2007年の公開だろうと思いますが、それを愉しみに待ちたいと思います!そういえば・・・ヒロインの手足を切る映画「ボクシング・ヘレナ」(永井豪の「バイオレンス・ジャック」や「多重人格探偵サイコ」のエピソードを彷彿させますな)を監督した<リンチの娘>は・・・いま何してるんだろ??