其の107:ナイスな題名「ヒストリー・オブ・バイオレンス」

 デビッド・クローネンバーグといえば、スティーブン・キング原作「デッドゾーン」、頭から花火が出る(笑)「スキャナーズ」、名作映画のリメイク「ザ・フライ」。<人間と機械が融合>する「ビデオドローム」や「クラッシュ」他の作品で知られる鬼才だが、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」も傑作!いいですよ、これまでの作品と同じく血がグチュグチュして(笑)。ちなみにアクション映画じゃないんで、タイトルだけで勘違いせぬように。


 田舎町でダイナーを営む平凡な男トム(「アラゴルン」ことヴィゴ・モーテンセン)。家庭円満、周囲の人々とも仲良く暮らしていた。ところがある日、トムの店に強盗が!その結果、彼は鮮やかに強盗を射殺する。一躍、街のヒーローとなるが、それを境に<彼の過去を知る>という組織の男(名優エド・ハリス)が現れて・・・。


 「<暴力>は不幸にも人間にとって現実的で避けがたい部分。私はそこから目を背けない」とはクローネンバーグの弁。同名原作の「グラフィック・ノベル」を知らずに監督したものの(笑)、原作と彼の良さが出た快作となった。


 まず<暴力描写>が凄い!銃で撃たれた後、わざわざ死体をインサートして血が噴出していく様子を執拗に描写。それが、もろリアル(笑)。
 そして夫婦の<セックス描写>。脚本にないのにクローネンバーグが追加した「家の階段でことに及ぶ」場面は、<人間といっても所詮は動物>とでもいいたげだ。妻がいい年こいてチアリーダーの格好をして旦那に迫るシーンは・・・そのテの趣味の方は萌えるかも(笑)。


 「トムは一体、何者なのか?どんな過去の持ち主なのか?」という疑問を軸とするサスペンス仕立て。観客は登場人物たち同様、ことの推移を見守らなければならない。やがて明かされる真実に<人間の深部・暗部>を感じずにはいられないだろう。そんな重いテーマを内包した作品である。モーテンセンのファンには・・・はっきり言ってショックかも(苦笑)。


 絶対に観賞後の「爽快感」は期待しないように!クローネンバーグ作品にそんなんあるわきゃないんで(笑)。