<其の697>イマヘイ重喜劇「赤い殺意」

 いきなり番号が大幅にとんでいますが・・・実は「2」のブログからの続きナンバーにしてありますので、ご容赦下さい。「2」のリンクは前回貼ってありますので^^。

 同様に、いきなり今日は<夏空>になりましたが(めちゃ暑)・・・関東はいつ梅雨あけするんかいな!?

 

 さて「ドラゴン桜」シリーズほかで知られる三田紀房原作漫画の映画化「アルキメデスの大戦」を試写会で観ました。昭和8年、巨大戦艦建造(後の「大和」)を阻止すべく奮闘する天才数学者たちの姿を描いた作品。当然、フィクションだし、アルキメデスさんは出て来ません(笑)。

 まだ連載中&結果、「大和」は造られ沈没したことは"史実"なので、映画的にどういう終わり方をするのか・・・その辺りの興味で観に行ったのですが、予想を裏切るロジックが展開されて・・・筆者的には面白かった。「大和」のフルCGもリアルで凄かったしね。今作の山崎貴監督は零戦と大和がお好きだそうだが(それ世代的に凄くわかる^^)、「大和」が元となる「宇宙戦艦ヤマト」もすでに実写化されてるし、ご本人も満足されたことでしょう❤

 

 カンヌで二度グランプリを獲った故・今村昌平監督(通称:イマヘイ。🎵「ノマ、ノマ、ヘイ」ではない。助監督時代はあの川島雄三監督についてる)。彼のいわゆる"重喜劇"の中でもソフトが廃盤になっていた「赤い殺意」(’64)が先日、ようやく待望の再発売(^^)!!「にっぽん昆虫記」(’63)も傑作だと思うのだけど・・・ソフト再発を祝って、こちらをチョイスした次第。

 

  仙台市・郊外ー。貞子(=春川ますみ)は幼少期に旧態依然とした旧家に引き取られれ、二代目の次男・吏一(=西村晃)によって半ば強引に結婚させられる。生来気弱なこともあり、結婚後も夫や姑からいびられる日々を送っていた。 夫が出張中だったある夜、家に強盗が!男は貞子を殴打した後、電気スタンドのコードで縛りあげ、彼女を犯して去っていった。死のうと決めた貞子だったが一人息子の事を考えると死にきれず、翌日出張から帰って来た夫に打ち明けようとしたものの、彼女に大して興味のない夫の態度に告白する事が出来ない。すると、強盗を働いた男(=露口茂)が再び彼女の前に現れて・・・!?

 この後、どうなるのかは是非作品をご覧下さい^^

 

 藤原審爾の原作を舞台を変えて今村昌平長谷部慶次が大幅に脚色。前作「にっぽん昆虫記」でも描かれた<地方の土着的社会に生きる女の性とバイタリティー>が今作でも観られる。映画のキャッチコピーに「強盗との愛欲に悶える人妻!」(超過激すぎな文面やわ)・・・って、ほとんどポルノ映画のコピーだと思うけど、エロは期待しないように(笑)。"重喜劇"ですから!

 今作は「日活」作品なのだが・・・<心は●●に魅かれているけど、身体が求めているのは相手が異なる>-という設定は石原裕次郎初主演作「狂った果実」(’56)で既にあったし、後に「日活」は「にっかつ」となってロマンポルノ始める訳だが、このコピーは将来の会社の行く末を暗示した気が・・・しないでもない(←いやいや、映画を売る為にありがちな過剰な宣伝ですよ)^^。

 映画はねちっこい今村演出を受けて春川ますみが頑張ってます。気が弱くて、なんでも「はいはい」いう主体性のない人が次第に生命力溢れる強い女性に変貌してゆく姿を快演。ヒロインが死のうと思って首吊ったら、身体が重すぎて紐が切れるシーン(春川はぽっちゃり体型)なんかは・・・これぞ今村流リアリズムギャグ(笑)。

 「この人がこんな役、演ってる!」というのを発見するのも古い映画を観る愉しみのひとつだと筆者は考えているのだが(「人に歴史あり」)・・・後に「水戸黄門」演ずる西村晃が小心者の旦那(の割に職場に愛人がいる)の他、強盗役を演ってるのは「太陽にほえろ!」の"山さん"こと露口茂(←筆者の世代)!!いや~・・・あの山さんが強盗レイプ犯とはショック・・・って、あくまで「役」の話だけどね^^

 筆者は学生時代から、街角に貼ってあるポルノ映画のポスターを見る度に・・・そのデザインや色彩からぬめぬめ・じめじめとした昭和的性描写を連想してしまって、あまり気持ちのいい感じがしなかったんだけど(アラフィフのいまもまだ少々苦手)、今作は直接描写がない分、セックスの象徴として蚕の幼虫を握り潰すとか(←これは筆者的にはぎりセーフ)独特のイマヘイ演出が全編に満ち満ちている。この土着路線が最終的には集大成「神々の深き欲望」(’68)の神話の領域にまで達する訳。

 

 生前、大島渚監督と比較して「大島は侍だが、俺は田舎の百姓だ」と語ったという今村(生まれは東京だけど)。「赤い殺意」は古くからの閉鎖的土着社会が自分の映画の題材だと目覚めた彼の絶頂期の一作。粘着質のイマヘイ演出をご堪能あれ。

 

 <どうでもいい追記>先日、「スター・ウォーズ」の日本語副題が発表されたけど・・・何、あれ。まんま英語表記の方がはるかに良かったな~!!・・・って、思うのは筆者だけか?!