其の79:全ての男女に捧ぐ!「エターナル・サンシャイン」

 世の中、そうそう<才能>ある人間ばかりではない。だが、この「エターナル・サンシャイン」の脚本家チャーリー・カウフマンは、数少ない稀有な才能の持ち主だといえよう。ネタ枯れのハリウッドにおいてオリジナリティ溢れる脚本を連発している彼は・・・只者ではない。

 さえないサラリーマンのジョエル(ジム・キャリー)は、ひょんな事から風変わりな女性・クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)と出会い、恋に落ちる。だが、あえなく破局!そんな時、彼はクレメンタインがある<機械>によって、自分との<恋愛の記憶を消去>した事実を知る。ショックを受けた彼はー同じように記憶を消そうとするが、その最中に「やっぱり記憶を消したくない!」と考え直し<脳内逃亡>を試みるのだが・・・!?
 
 チャーリー・カウフマンのこれまで手がけてきた作品は、奇想天外な設定の「マルコヴィッチの穴」と「ヒューマンネイチュア」、原作を自己流にアレンジした「アダプテーション」ー皆<一筋縄>ではいかない作品ばかり(笑)。筆者は同じ<創作者>の身としてよくぞ、ここまで毎回変わった事を考えると素直に尊敬する!
 監督はミシェル・ゴンドリー(フランス人)。カウフマンとはデビュー作「ヒューマンネイチュア」で既にコンビを組んでいる。今回もカウフマンのトリッキーな脚本を持てるテクニックを駆使して映像化!・・・この作品は観ただけでロケが大変だったろうなぁ、と思ってしまった(苦笑)。
 <あらすじ>だけ読むと・・・なんとなく「オチ」がーみえるでしょ?ところが、実は機械を操作する側にも色々起こるという「二段構え」!更に1回終わったと見せかけて、まだもうひと波乱あるという凝りに凝った<構成>ーさすがカウフマンだ(今作でアカデミー脚本賞受賞)!
 映画は「辛い失恋の記憶はない方が幸せなのか?」という重い命題を突きつけ、単純に「面白い」「良かった」と言いにくい奇妙な味わいを観客に残す。この作品は内容とは逆に、観た人誰もが自分の苦い経験を嫌でも思い起こさせ考えさせる<装置>のような役割を果たすものだと言ってよさそうだ。
 
 なお、脇役ながら「ロード・オブ・ザ・リング」のイライジャ・ウッドや「スパイダーマン」シリーズのキルスティン・ダンストも出演!この奇妙な深い味わいの作品に華を添えている事も付記しておく。