其の663:少年の心を忘れない男たち「狼は天使の匂い」

 フランスの名匠、故ルネ・クレマンのソフトが先日4作一挙再発。メーカーもさすがに<クレマン・ブーム>を起こそうとは思っていないと思うけど(笑)。そのうちの1枚、「禁じられた遊び」(’52)はテーマ曲もさることながら名作ですよ、超名作!ベタな映画入門書・初級編に必ず載ってるから、このブログには書きません^^。文芸作から反戦映画まで様々なジャンルを撮ったクレマンだが、彼のサスペンス&ミステリー映画といえばやはり「太陽がいっぱい」が最高傑作(←これは以前、このブログでも書いた)。70年代にはロマン溢れるサスペンスやスリラーに傾倒。残る3枚の内、チャールズ・ブロンソン主演の「雨の訪問者」(’70)は以前ソフトが出た時はすぐに売り切れたので、今回再発されて良かった!フェイ・ダナウェイが出た「パリは霧にぬれて」(’71)、凄い邦題がついた「狼は天使の匂い」(’72)という今回のラインナップですが、筆者は「狼は天使の匂い」をチョイス。ジョニー・トー北野武にも影響を与えたと思われるアクション映画です。勿論、ネタばれは無し❤


 不慮の飛行機事故によって、ロマ(ジ●シー)達に追われる事になったトニー(=「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン)。パリにいられなくなった彼はアメリカを越え、カナダのモントリオールまで逃げてきた。ところが彼らの追跡を交わす為に侵入した万国博覧会会場内で殺人の現場を目撃してしまう。犯人の2人に捕らえられたトニーは、ある小島に連れて行かれる。そこにはギャング一味のボス・チャーリー(=「ワイルドバンチ」のロバート・ライアン)にその情婦シュガー(=レア・マッサリ)、ペッパー(=ミア・ファローの妹、ティサ・ファロー)らがいた。チャーリーはトニーに殺された男が持っていた1万5千ドルの在り処を言うよう迫るが、彼は口を割らない。当初は反発しあうものの、じょじょに心通わせるようになるトニーとチャーリーだったが・・・。


 「ピアニストを撃て」で知られるデイヴィッド・グーディス原作の「暗い金曜日」を作家セバスチャン・ジャプリゾが脚色。この御仁、「不思議の国のアリス」フリークで、前に脚本書いた「雨の訪問者」同様、ルイス・キャロルの文章の一部を引用&原作の大筋だけ頂いて脚本を書いてる(原作にロマとか出ないし)。劇中出てくるビー玉や煙草を3本縦に立てるとかいかにも“子供がやりそうな遊び”を通じて友情を深めていく男達とその絆・・・が描かれてゆく。
 筆者は以前「昔のフランス映画は、たるたるしたテンポだった」と書きましたが、この映画の中盤が正にこれ!主人公がギャング一味に監禁されてから、上記のような遊びほかが描かれて、全然ハードなアクションや事件が起きない(苦笑)。逆に言えばこの雰囲気、ムードがファンにはたまらないのだろうね。ぶっちゃけ筆者はこの辺で一度厭きた(笑:ちなみに上映時間は2時間20分ぐらいある)。この後にヤマとなる強奪事件が展開されるんだけど、個人的にはその前がもうちょっとテンポよく進んで欲しかったナ。
 ジャン=ルイ・トランティニャンマカロニウエスタン「殺しが静かにやって来る」の主人公サイレンス役で筆者のご贔屓俳優のひとり。今作では自身の身を守る為、あれこれ立ち回ったりもするものの、そのうちギャングの女性とねんごろになるのは流石二枚目フランス人俳優^^!一方、ハリウッド俳優、ロバート・ライアンは貫禄の老ギャング役。それにしてもジャン=ルイ・トランティニャンロバート・ライアンのコンビって・・・渋すぎるよね、激渋(笑)。そんな2人が少年の心を忘れてないキャラを演っているから、より印象的。ふと思うに、この頃のクレマンはフランス映画でありながら、必ずハリウッドスターを起用してる傾向あり(←世界配給を考えてのプロデューサー判断と推察)。
 音楽はフランシス・レイ。彼といえば「男と女」、「白い恋人たち」辺りが大メジャー作。「雨の訪問者」も彼なんだけど・・・今作は先述した作品たちに比べると、あまり印象に残らないスコア(残念)。アクション映画ながら小島の森や夕景の美しい映像が多いので、もう少し音楽もエンニオ・モリコーネばりに頑張ってくれたら・・・筆者の映画の全体評価ももうちょい点数上がったのは確実!現代風ハードアクション映画を望んだらガッカリするけれど、一風変わった犯罪映画。一見の価値はあるだろう。

 女性陣からよく「男は身体が成長しただけで、中味は子供の時のまんま」と言われますが・・・その通りだと思う(笑)。筆者も少年時代の気持ちを忘れないようにしながら(気分は中2)、このブログ書いてるところもあるし(苦笑)。あまり現実的過ぎないところに男のロマンがあると思うのだが・・・まぁ、これは女子はわからなくていいです。男と女の間には決して埋まる事のない深〜い河が流れている事を・・・筆者ももう分かってますから!!!

 冒頭にも書いたけど・・・何度聞いても凄い邦題!考えた人は尊敬に値する!筆者は・・・未だ狼や天使の匂いを嗅いだことない(笑)。