其の63:陪審員になる前に!「十二人の怒れる男」

 日本でもいずれ「陪審員制度」が適用されますが・・・その前に観ておかないといけない作品が「十二人の怒れる男」であろう。名優ヘンリー・フォンダ(晩年はなんにでも出るようになったが・苦笑)が唯一、製作も担当した大名作である。このブログに書くには似合わないけど^^!

 
 ある少年が犯したと思われる「殺人事件」。陪審員たちは各証言や証拠品から少年の犯行を疑わず「有罪」を宣告しようとした、その時!ヘンリー・フォンダが皆に疑問を投げかける。これをきっかけとしてひとつひとつ推理していく内に、メンバーがひとり、またひとりと無罪を信じるようになるのだが・・・。

 
 元は「テレビドラマ」だったがその出来の良さから映画化が決まり、テレビ同様ほぼ陪審員室で物語が展開するシンプルなスタイル。だが、個性的なメンバーがそれぞれの知識や経験を駆使して推理してゆくさまは極上のミステリー小説を彷彿とさせ、ゾクゾクさせてくれる。ちなみに三谷幸喜の某芝居劇は(=ヒント:タイトルで分かります)この作品が元ネタ(そういえば「古畑任三郎」も「刑事コロンボ」がモデルだしなぁ)。
 監督はこれが初監督のシドニー・ルメット。後にほぼ銀行内で展開されるサスペンス「狼たちの午後」などを演出しているが、既にこのデビュー作で「室内劇」の面白さを十分に堪能させてくれる。10人目の陪審員の意見が変化する瞬間のカメラワーク、そしてラスト、議論を戦わせるフォンダとリー・J・コッブの演技合戦など今みても息を飲むほどの面白さ!全く古びていない。
 映画はアメリカの「民主主義」の素晴らしさ、そして「人が人を裁くことの恐ろしさ」を存分に味あわせてくれる。もし、自分が<陪審員>に選出された暁には、この作品を再見して軽々しいジャッジはしないよう慎重に事にあたらねば、と真剣に思うのだ。