其の52:豪華絢爛!貴族の世界「山猫」

 先日、民主党代表に就任した小沢一郎氏が青年時代に観た映画として「山猫」の台詞の一説(のニュアンス)を引用していたが、筆者もこの作品が大好きなひとり!但し、誰もが観て楽しめる作品ではない。監督ルキノ・ヴィスコンティの<美学>がわかる人だけが楽しめる世界だと言っておこう。カンヌ映画祭グランプリ。


 物語は「イタリア統一戦争」真っただ中のイタリア。時代の波は容赦なくシチリア島の領主である公爵(バート・ランカスター!)にもふりかかる。彼の甥(アラン・ドロン!)は貴族制度を打倒するこの戦いに身を投じ負傷。別荘へ移動した公爵家に身を寄せるようになる。その時に出会ったのが美しい平民の娘(クラウディア・カルディナーレ)。彼は貴族でありながら、その娘との結婚を決意する。以前では考えられない<貴族>と<平民>の融合ー。公爵は、この変化に抗うことなく受け入れる覚悟を決める・・・。


 ヴィスコンティの代表作は(一般的に)「ベニスに死す」や「地獄に堕ちた勇者ども」等の<デカダンス(退廃)>作で知られているが、中でも筆者のイチ押しがこれ!ヴィスコンティ自身が<貴族>の血を引いている男である。「貴族が貴族を描く」今作では(当時としては)破格の予算を投じ、徹底したリアリズムで上流社会を描き上げる。正に「ベルサイユのばら」(笑・でもホント)!!
 上映時間3時間のうち、最大の見所はラスト1時間に及ぶ<舞踏会>のシーン。なんと本物の宮殿に当時の調度品を用意させ、エキストラには「シチリア貴族」の子孫を揃える徹底ぶり!!<完全主義>で知られたヴィスコンティだけがなしえた豪華絢爛たる映像がこれでもか、と言わんばかりに炸裂する。ある程度、世の中の事が分かるようになったらー是非、一度観て欲しい「大人の映画」である。