其の334:失われし艶笑コメディ

 その昔、テレビ東京の昼間に繰り返し放送されたイタリア映画「青い体験」(’73)。こういう「プライベート・レッスンもの(=このタイトルずばりの映画もあり)」もAVの台頭と共に消えましたな(いいんだか悪いんだか)。その「青い〜」に出演していたお姉さまがラウラ・アントネッリである。良識ある健全な映画ファンはルキノ・ヴィスコンティの遺作「イノセント」(’75)の人ぐらいの認識だろうけど筆者はそうじゃないんで悪しからず(以前、ここで「セッソ・マット」も紹介したし)。
 そのアントネッリの主演作のひとつが「続・禁断のインモラル」(’74)。俗にいう<艶笑コメディ>だ。艶笑コメディとは簡単に書くとHネタの喜劇のこと。イタリア映画はこのテのジャンルを一時期量産しており、日本で有名なのはソフィア・ローレンの「ボッカチオ’70」(’62)とか「昨日・今日・明日」(’63)あたりになるのだろうが筆者的にはこれが御薦め!何故ならばローレンは脱がないけど、アントネッリは脱ぐ(これ大事)!!

 
 お話はアントネッリ扮するシチリア修道院で育ったウブな貴族の婦女子(処女)が結婚することになったものの、なんとお相手が<腹違いの実の兄>だと分かってさ〜大変!その兄貴は兄貴でヤレば近親相姦、離婚すればゆくゆく相続する財産が失われるということで(=平民の出だから)泣く泣く離婚せず寝室を別にすることに。ところが新婚旅行先のパリでスケベなフランス人に粉かけられたアントネッリは次第に性に目覚め、キリスト教の教えの間に悩みながらもHがしたい思いにかられてゆくのだが!?

 タイトルだけ聞くと男女のセックスがどろどろヌメヌメ描かれる映画かと思いがちだが、そうではありません!演技も音楽も完全なコメディ調。イタリア人特有のハイテンションな台詞回しとオーバーアクションが笑える。凄いのがこのテのジャンルは普通、女の裸を売りにして<低予算で確実に男性客を動員する>のが基本だが、今作は違う。1910年から20年までの10年間が描かれるコスチュームプレイもので(笑)衣装やセットは豪華!エキストラ多数!さらにフランスロケまである(エッフェル塔ノートルダム寺院ほかも登場)お金のかかった艶笑コメディなのだ^^。ヴィスコンティも今作を観て、彼女を「イノセント」で起用したのではないかと筆者は推測している(文献ほか何の証拠もないけど)。
 ちなみにスタッフ的には監督はマイナーなんで割愛するけど(めんご)、撮影監督にはセルジオ・レオーネの最高傑作「ウエスタン」(’68)を担当した名手トニーノ・デリ・コリ!これだけでもエロのみを売りにした安い作品でないことがわかるだろう。展開的には浮気したり、レズったりしつつもオチはベタベタだけど(苦笑)。

 ラウラ・アントネッリは1946年、旧イタリア(現クロアチア)生まれ。ナポリの高校卒業後、体育学校の教師(!)やCMモデルを経て映画界に入る。最初に注目されたのが「マゾヒズム」の語源となったマゾッホ原作の「毛皮のビーナス」(’71→これ、ぶっちゃけ凡作。アントネッリの裸は良かったが)。2年後、エロい家政婦を演じた「青い体験」(’73)が大ヒット!75年には続編も作られ、当時「ヨーロッパで最もセクシーな女優」と謳われた。基本的に出演作では必ず脱ぐので、青少年たちの胸と股間を熱くしたことは想像に難くない^^。そんな彼女と一時期同棲していたのがフランス人俳優、ジャン・ポール・ベルモンド・・・羨ましいぞ、ベルモンド(怒)!そんなアントネッリ(この時28歳)がウブな処女役というのは・・・いやはや南友(BY永井豪)。

 さて「邦題」に関して。「続〜」と表記されていますがーちなみに当時のサブタイトルは「快楽に身を焦がす女たち」(笑)ー勝手に配給会社がでっち上げただけなので気にしないように。何故か82年のアントネッリ作品のタイトルが「禁断のインモラル」!年代の逆転現象が起きている(苦笑)。で、これの副題が「魔性に彩られた処女喪失の館」(爆笑:2時間サスペンスか)!

 さすがに現在ではラウラ・アントネッリが何をしているのか知る由もないが(=興味のある人は自分で調べてみてね)彼女の名前と「艶笑コメディ」というジャンルを後世に残すため今回記した次第。70年代、引いては昭和も遠くになかりけり・・・。


 <どうでもいい追記>つい先日、「NEWバットマン」ことクリスチャン・ベイルにインタビューしたのだけれど・・・彼には申し訳ないが、どうも「ターミネーター4」は観る気がしないなぁ。やっぱりシュワちゃんが主演してアクションしてくれないとあかんシリーズだと思う。「デジタル合成で出演」と言われても・・・ねぇ。
 加えて<人類と機械が地球的規模で全面戦争している時代>という設定も「人間が使う武器・弾薬はどこで製造しているのか?材料の調達方法は?」、「そもそも食料はどこで作られているのか?」、「機械軍の動力源は?」とか色々突っ込んでしまう。・・・年食って素直に映画が観れなくなってきたかも(苦笑)。