其の45:「アメリカン・ヒストリーX」は超重量作!

 ご存知の通り「アメリカ合衆国」は<人種のるつぼ>である(正確にはネイティブ・アメリカン以外、生粋のアメリカ人はいないのだが・・・)。この「アメリカン・ヒストリーX」はタイトル通りアメリカを舞台に「白人至上主義集団」のリーダーである兄と彼を慕う弟の心の軌跡とその顛末を描いた<超問題作>である。


 舞台は現代のカリフォルニア。白人至上主義者でナチを信奉するデレク(エドワード・ノートン)は自宅を襲った黒人を過剰防衛で殺し、服役する破目になる。彼を慕う弟・ダニー(エドワード・ファーロング)は彼の出所を待ち続けるのだが・・・。ネタバレになるのでここまでしか粗筋を書けないのが残念!観終わった時には、下っ腹をドンと殴られたような重さが残るので要注意(マジ)!

 
 イメージ的には<優男>のエドワード・ノートン(「ファイト・クラブ」他)が筋トレをしてマッチョな身体で登場!映画デビュー作「真実の行方」の時からうまい役者だと思ったが、今作でも名演技を披露している。エドワード・ファーロング(「ターミネーター2」他)も健気に兄を崇める弟役を好演!彼は・・・いま何してるんだろ??
 その昔、「マルコムX」の監督スパイク・リーは「人種差別」について「今も昔も大して変わっていない」という旨の発言をしていたが、この映画を観ると人間の愚かさや偏見に悲しくなってくる。髪の色、瞳の色、肌の色、言葉の違い、宗教の違い、国の体制の違いー何百年たっても「ヒト」はそんなレベルさえ乗り越えられず争い続けている(「人の命は地球より重い」というが詭弁だ)。
 この映画もハッピーエンドで締めがちな<ハリウッド作品>でありながら、安易なラストで終わらせる事はしない。アメリカの、引いては世界中のあらゆる地域で起こっている問題に確たる答えを出すことなく、映画は静かに<現実>を見つめているー。