其の39:「シティ・オブ・ゴッド」はブラジルから来た凄い奴

 日本は余り「ブラジル映画」に馴染みがない。公開されるのは国際映画祭で受賞したような作品ばかりである。多くの日系人もいるというのに残念な事だ。そんな中、日本で公開された「シティ・オブ・ゴッド」はブラジル映画の凄さをまざまざと見せつけた傑作且つ貴重な1本といえよう。

 物語の舞台は通称「シティ・オブ・ゴッド(神の街)」と呼ばれるスラム街。そこに住む少年たちはギャングの一味に属して<金と権力>を得るしか、のし上がる術がない。後にカメラマンとなる少年を狂言回しに約20年にも及ぶ少年たちの青春と成長、そして抗争が生々しく描かれていく・・・。

 全編、これ暴力に次ぐ暴力の応酬だが、なによりその迫力ある映像に圧倒される!撮影技法といい、編集力(いまどきの早回しも多用)といい、<少年ギャングたち>の姿が時にドラマティックに、時にドキュメント・タッチで絶妙に展開していく。狂言回しの主人公以外、全てモデルがいるという事からある種の<実録物>といってもよさそうだ(・・・といってもブラジルの貧民窟の少年たちが全員銃を手にしているかどうかは不明だが)。

 監督は新鋭フェルナンド・メイレレス(これが長編映画デビュー作。CMディレクター出身)。本来は実在する街自体で撮影を行いたかったそうだが、現地で暗躍するドラッグ・ディーラーからクレームがついたので(役者たちを危険な目に遭わせないため)、泣く泣く現地ロケを諦めたそうだ(現にいまのブラジルのスラム街では「少年法」のゆるさもあって以前より状況は悪化している、とは監督の弁)。これから要チェックの監督のひとりだと思う。

 最近の韓国映画といい、見ごたえのあるサスペンスを連発しているスペイン映画といい、わが日本の映画は観客が増えたとしても・・・レベル的には大丈夫かいな??