其の31:戦争映画を変えた!「プライベート・ライアン」

 スティーブン・スピルバーグは世界で最もメジャーな監督といっても差し支えないだろう。家族で楽しめる娯楽作品(「E.T.」、「インディ・ジョーンズ」シリーズ他)と社会派作品(「カラー・パープル」、「シンドラーのリスト」他)硬軟うまく作り分けていると思う。その中でも後の「戦争映画(史劇含む)」に多大な影響を与えた(これからも)のが「プライベート・ライアン」ではなかろうか。

 物語としては「第二次大戦中のヨーロッパを舞台に、1人の兵士(マット・デイモン)のために8人の精鋭部隊(隊長はトム・ハンクス)が命を賭けて救出に向かう・・・」と要約出来るのだが、この作品で重要なのは冒頭の「ノルマンディー上陸作戦」の描き方!!

 機関銃で撃たれ血を流しながら次々と死んでいく兵士。顔が吹き飛んで絶命する者。爆発に巻き込まれ足がちぎれる!もげた自分の腕を拾う奴。内臓を露出させながら泣き叫ぶ若い男・・・かつて、ここまでリアルに戦場を演出した映画はなかった!現在の戦史ではノルマンディーは<実は失敗した作戦>と位置づけられており、先の残酷描写の数々は脚本になかったものの、現場でスピルバーグが付け加えていった(その為、手や足のない方々が多数動員されたとか)。
 実際に作戦に参加し、未だ存命の人々を集めて行われた試写会でこの映画を観た人は「まさにあの通りだった。臭いがない以外にはね。」と答えたそうだ。

 この作品に最も影響を受けたのが、かのリドリー・スコット!彼は「ブラックホーク・ダウン」(おそらく「キングダム・オブ・ヘブン」も)を演出するに当たって「プライベート〜」に刺激された事を公言している。ノルマンディーで兵士が葉巻を吸いながら戦場にいる(笑)「史上最大の作戦」はもう子供だましにしかみえない(苦笑・ファンのかたゴメンナサイ)!