其の30:オタク帝王のデビュー作「レザボア・ドッグス」

 筆者には尊敬する監督や俳優が大勢いる。クエンティン・タランティーノ監督もそのうちのひとりだ。私もオタクなので、彼とは会った事もないが勝手に<同士>だと思っている(笑)。その彼の記念すべきデビュー作が「レザボア・ドッグス」!私の個人的意見では、いまのところの彼の<ベスト>だと思う。

 この作品も今ではメジャー作(公開時はヒットせず)となったのでストーリー紹介等は省くが、有名な冒頭の「ライク・ア・ヴァージン論」に始まり、時間が前後しながら進行する凝った展開、問題となった耳削ぎシーン、そしてラストの拳銃三つ巴・・・。低予算ではあるが、タランティーノの才能が存分に発揮されている(脚本も本人)。タラは次作の「パルプ・フィクション」がカンヌを獲った事で<時代の寵児>となったがー私はこの作品を劇場で観た時点から「こいつはいつか来る!」と確信した(自慢です)。

 ・・・と同時に観ていて「元ネタ」が分かりまくった(笑)。まず<設定>自体、某香港映画まんまだと指摘されているが、時間が前後する<展開>はキューブリックの「現金に体を張れ」からの引用だし、<拳銃三つ巴シーン>はもろにジョン・ウー(笑)。<耳削ぎ>場面に至っては「続 荒野の用心棒」そっくりである。だが「銀行強盗前の様子」をみせておきながら、普通はこのテの映画と肝となる「強盗シーン」は一切描かず、いきなり「逃走後のシーン」につながる大胆な2部構成。ハイテンションな会話(この映画がキッカケで登場人物が話の筋とは関係ない「無駄話」をする様になる)!タラが単なる<映画オタクのパクリ屋>ではない事の証明だ。

 「パルプ〜」や「ジャッキー・ブラウン」「キル・ビル」1&2も嫌いじゃないが、この作品ほどの緊張感はない。彼の次回作を期待して待つ!!(ちなみにタラが1挿話を演出したオムニバス作「フォー・ルームス」の存在もどうぞお忘れなく。)