其の17:ホラーじゃないよ「戦争のはらわた」

 我ながら連続しての更新!で今回はホラーみたいな酷いタイトルついてるけど大戦争アクション映画が「戦争のはらわた」(←この邦題つけた奴、出てこーい!)。監督は「ワイルドバンチ」や「わらの犬」他で知られるアクション映画の巨匠サム・ペキンパー。その彼が1943年のロシア戦線を背景に、困惑するナチス・ドイツ軍の様子を丹念に描いている。<敗走するドイツ軍>をメインにした異色作。

 男気あふれる主人公には「荒野の七人」、「電撃フリント」シリーズでお馴染みのジェームズ・コバーンブルース・リーの弟子)。彼がドイツ人に見えるかどうかは別として(苦笑)無能な上司を軽蔑し、率先して戦う歴戦の勇士を好演!彼と対立する貴族出身で保守的な大尉(嫌な奴)にマクシミリアン・シェル。キューブリック監督作「ロリータ」で主役を演じたジェームズ・メイソンらが脇を固める。

 この作品はペキンパーの完全主義(&わがまま)で撮影が遅れに遅れ、制作費が途中でなくなり中断されることも度々あったという。だが、その分リアルな戦闘シーンを随所に見せ観客を圧倒!ペキンパーお得意のスローモーションも十分に効果を発揮している(晩年の作品はアル中のために精細を欠いたが)。もし、この映画に「プライベート・ライアン」(スピルバーグ監督作)冒頭の<マジなリアリティ>が加わったら・・・そらおそろしい作品になっただろう(笑)。

 ペキンパーは生涯を通じ、その気性が災いしてしばしばプロデューサーと対立。最終編集権を奪われ不本意な作品になったものが多い事でも知られているが「戦争のはらわた」のDVDに収録されているのは彼の意図した通りの「完全版」!彼のパワフルな演出を存分に堪能してほしいと思う。