其の422:終わりよければ全てよし?「トプカピ」

 ついに「SPACE BATTLESHIP ヤマト」を観ましたわ!勿論、人が買ったDVDを借りて無料で(笑)。筆者の友人・知人で映画を観た10数人(普通のリーマン含)がひとりとして誰も誉めない・・・という、ある意味“問題作”だった「ヤマト」(普通はそんなに映画を観ない奴1人、2人ぐらいは誉めたりするものなのだが)。当然「映画秘宝」でもぶっちぎりの「トホホ第1位」(ってゆーか、わざわざ自爆しにいくライターたちもいかがなものか)。ここまで評判悪いと逆に観たくなったわけ(「幻の湖」パターン)^^。
 で感想(これから観る人のために詳細は書きません)。いや〜・・・細かい設定変更やオチまで聞いていたものの・・・なんでこうなるの?!プロデューサーたちの発案か?それとも監督か?あるいは脚本書いた監督の女房のせいか?誰もがいうコメント「実写版デビルマンより、ちょっとマシ」、「スターかくし芸大会みたい」に筆者も同意する。オリジナルをリアルで見ていた世代としては「ヤマト」とは似て非なるもの、と割り切るしかない(う〜ん、大人)。タイトルもわざとちょい変えてるんだから、いっそ「宇宙戦艦ムサシ」とか「SPACE BATTLESHIP キムタク」にすればここまでボロクソ言われなかったと思うけどね(爆笑)^^


 さて“前ふり”は、これぐらいにして<本題>へ。1964年公開の映画「トプカピ」は、宝石泥棒たちを描いたサスペンス・コメディ(→専門的に書けば“襲撃(ケイパー)映画”)。本篇2時間のうち約1時間半は、メッチャたるいんだけど(苦笑)それを我慢した後にたどり着く<泥棒シーン>のハラハラドキドキ感はハンパねー!!今作ならDVDを借りるにしても金払う価値は十分にあるゾ(笑)^^

 トルコ、イスタンブール。「トプカピ王宮博物館」にある“サルタンの宝剣”に狙いをつけた女泥棒エリザベス(=メリナ・メルクーリ)は、以前恋人だった同業者ウォルター(=マクシミリアン・シェル)と再会、宝剣強奪の話を持ちかける。“サルタンの宝剣”のある部屋の床は少しの重量が加わっても警報ブザーが鳴る鉄壁の防犯システムで知られていた。そこでウォルターは発明マニアに怪力男、口のきけない体操選手ら“警察にデータのない素人たち”を集めて強奪計画を立案する・・・。ところ変わってギリシャ。エリザベスとウォルターの2人はリッチな観光客を装い、イギリス人のインチキガイド、シンプソン(=ピーター・ユスティノフ)にトルコまで高級車の運搬を依頼する。その車には計画に必要な銃や道具が隠されていた。そんなことはつゆ知らずシンプソンは報酬につられて仕事を受けたものの、トルコ国境の検問所で車内の武器を見つけられてしまう!警察はシンプソンを雇った2人を“テロリスト”だと考え、彼に逮捕する代わりに2人へのスパイとして働くよう強要する。しぶしぶ了承したシンプソンが目的地のホテルまで車を届けた際、警察の作戦によって彼はメンバーの現地での運転手として雇われる事となる。内部にスパイを抱え、果たしてエリザベスたちは無事、宝剣を盗むことが出来るのか・・・?!

 上記<あらすじ>でお分かりのように、冒頭、カメラ目線で“自己紹介”するエリザベスが“主人公”ーと思いきや、シンプソンが出てきた途端、メインが彼に突如“チェンジ”するという困ったちゃんな構成(苦笑)。これが先述したダラダラ感の原因でもあるのだが、いざ“視点”がチームの行動開始に移行すると・・・この緊張感たるやお見事(それにしても「トプカピ王宮博物館」も“宝剣”も実在するもの!いくら原作小説があるとはいえクレームがつかなかったもんだ)♪強奪作戦も奇想天外なもので・・・絶対、モンキー・パンチ先生やブライアン・デ・パルマは今作観て自作に取り入れてるな(あくまで筆者の推測)。

 で今作の監督は・・・ジュールス・ダッシン(1911〜2008)!!普通、彼を紹介する場合は「裸の町」とかフィルム・ノワールの「男の争い」を“代表作”として紹介するのが、ベタな映画入門書のセオリーなのだが・・・このブログは、そうじゃないということで(笑)。

 ↑の文章のパターン、「唇からナイフ」のジョセフ・ロージーの回を念頭に置いて書いたんだけど、このダッシンもロージー同様、<赤狩り>で母国アメリカを追われ、ヨーロッパに行った方。で、同じように毎回ヒロインが着替える女泥棒の映画を作った、というとこまで共通してる(笑)!

 メリナ・メルクーリ(1923〜1994)といえばーカンヌで主演女優賞獲った「日曜日はダメよ」(’60)の金髪美女(ギリシャ人)。81年にギリシャで政界入りした際、女優業を引退した(享年70)。今作では“男にモテモテな自称:色情狂の女泥棒”という凄い設定だが、撮影当時は40過ぎていたから・・・少々トウが立ちすぎ感は否めないけど(→「黒衣の花嫁」の時のジャンヌ・モローと同じパターン。その年で、どこが“新妻”やねん!)今作の後、ダッシンはメリナと結婚して自作に出し続けたから・・・まぁ、そういうことだ(笑:ちなみに「日曜日〜」もダッシン監督作)。

 マクシミリアン・シェルは“筆者的には”ペキンパーの「戦争のはらわた」で嫌な役やってた人の印象(苦笑)。今作では“出来る”名泥棒としてメリナといちゃいちゃしながらもリーダー役を好演。一方、ピーター・ユスティノフは筆者世代では後年のエルキュール・ポワロ役(特に「ナイル殺人事件」)が印象深いんだけど、若いときは今作のほかコミカルな役も多かった。ある意味、主人公(?)を演じた今作でアカデミー助演男優賞受賞を受けているから本領発揮作といえるだろう。

 ダッシン演出もオープニング&タイトルバックは派手な映像(奇抜な色彩に合成、早い編集)と“いかにも”な音楽で展開するものの、“見せ場”の泥棒シーン(いかにして盗むのかは本篇観て確認してね♪)は、カラフルさが一掃された超リアリズム描写!音も現実音のみの使用で、さすが「男の争い」の監督(ちなみに彼はヒッチコックの助監督経験者だが、その作品はコメディの「スミス夫妻」なので、師の技を勉強したか否かは不明)!!似たような題材&境遇でもロージーとは、ここが違ったね^^!

 
 トウの立った熟女ヒロイン(そのテのマニアはいいかもしれない)にダラダラした展開で進んだ大マイナス面を“最後の30分(泥棒+オチ)”で、チャラにした上にお釣りまでくる作劇となった「トプカピ」。中々こういうパターンも珍しい。ここまでハラハラドキドキさせてくれる犯罪映画の秀作は・・・近年ないですなぁ・・・(残念:誰か巧い人、作ってくれぃ)。