其の669:池玲子の日活アクション「黒い牝豹M」

 このハードだった夏も・・・少〜し涼しくなってきましたかね!?筆者はちょい年下ですが、ほぼ同年代のさくらももこ先生の訃報に衝撃を受けた今日この頃です・・・。心よりご冥福をお祈り致します。

 平成ももうすぐ終わるこの時期にあえて書くのが・・・“昭和”の日活アクション映画「黒い牝豹M」(’74)!!主演は伝説のポルノ女優・池玲子!共演に成田三樹夫!映画の出来としては全然高くないけど・・・こんな映画もあったと記録する為、あえて書きます(でも短め)^^。


 港町・横浜ー。ここでは関西の広域暴力団・国栄会の横浜支部となる「速水興業」が幅を利かしていた。その社長・速水(=成田三樹夫)の前に“M(=もち池玲子)”と呼ばれる空手使いの女殺し屋が現れる。速水らの背信行為を察知した国栄会の会長が彼を殺すべく凄腕の“M”を派遣したのだ。だが彼女はボディガードらに邪魔をされ、速水の暗殺を失敗してしまう。速水らは“M”を捕えるべく一計を案じて・・・!?
 
 池玲子に関しては、このブログで以前にも取り上げているので、経歴その他は今回は割愛!
 で、先ほども書いたように、映画の出来としてはダメダメ。ストーリーはつっこみ所満載だし、肝心のMは凄腕の殺し屋にしては仕事出来なさすぎ(爆笑)。なんでも製作前の仮題は「ザ・くの一」といって、忍術、空手のほか、超能力も使う秘密諜報員という設定だったそうな(笑)!その片鱗は完成作にも多分に残ってる(・・・蔵原惟二監督、頼みますわ)^^。
 この当時はご存知、ブルース・リー人気の絶頂時(=何故か速水興行内に彼のポスターが貼ってある場面あり)!にっかつも「ロマンポルノ」で東映並にエロアクション映画も作っていた時期で、東映のポルノアクション出演に飽き飽きしていた池玲子が本人曰く<一般映画>と言われて出演したのが今作。だから東映の映画と違って、彼女が脱いでるシーンはほんのちょい(←にっかつ的にはハードなエロシーンも考えていたけど、池の反発で現場で設定変更)!そっち方面(おっぱい)は過剰な期待をしないように^^
 
 あくまで個人的な見解・・・ですが、リアリティーを無視すればファッショナブルなファッションを披露する池玲子の姿を観られる上に、尺もタイト(なんと74分!)。また筆者は横浜出身なので70年代当時の横浜駅や赤レンガ倉庫ほかを観られるのも嬉しい^^。繰り返しますが、あくまで、こんな映画もあった・・・という記録の為に書いた次第。池玲子のほか、当時の社会状況や日本映画界に興味が出てきた方は是非、個人で調べてね❤人間、一生勉強っす^^。

其の668:超絶トムさん「ミッション〜」最新作寸評

 台風が次々に発生している今夏・・・。日本は・・・地球は大丈夫か?

 そんな中、唯一この夏観たいと思ったトム・クルーズ主演、シリーズ第6作「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」を観に行きました。前作からの“続き”にして、撮影中トムさんが骨折した事も大々的に報じられた今作の出来は!?絶賛公開中につきサクッと書きます。勿論、このブログに<ネタバレ>はない🎵


 IMFのエージェント、イーサン・ハント(=勿論、トムさん)とその仲間達ベンジー(=サイモン・ペッグ)とルーサー(=ヴィング・レイムス)はベルリンに飛んだ。3個のプルトニウムをマフィアから購入する為だった。ところが前作登場したテロ組織「シンジケート」の残党「アポストル(神の使徒)」がルーサーを人質に!イーサン達がなんとか彼を助けたところ、その隙をついてプルトニウムが奪われていた・・・。プルトニウムをもとに作られた核爆弾の使用を止めるべく、行動を開始する一同。手掛かりは黒幕の<ジョン・ラーク>という謎の男の名前と<ホワイト・ウィドウ>と呼ばれる女性のみ。イーサンはラークに変装し、<ホワイト・ウィドウ>に接触する計画を練る。これに異を唱えたのがCIA長官。イーサンの動きを監視させるべく敏腕エージェントのオーガスト・ウォーカー(=“スーパーマン”のヘンリー・カヴィル)を同行させる。パリでイーサンとウォーカーは<ホワイト・ウィドウ>主催の慈善事業パ―ティーに潜入、トイレでラークを発見した。ラークを気絶させて彼のマスクを作り、イーサンが彼に化ける予定だったもののラークが反撃!彼の強さに苦戦していると、またまた前作登場したMI6の女性諜報員イルサ(=レベッカ・ファーガソン)が乱入、ラークを撃ち殺してしまう!!驚いているのも束の間、時間がないイーサンらは死体を片付けると、ラークの顔を知る者がいない事を利用して、<ホワイト・ウィドウ>の元を訪れるがー!?


 ・・・まぁ、書けるのはここまでですな!ストーリーはこの後、様々なアクションを交えながら二転三転してゆく。前作「ローグ・ネイション」(’15)ぐらいは最低観ておくとより人間関係が分かりやすいでしょう^^。

 これは前作の時書いたと思うけど・・・「1」から「4」までは毎回、完成度が上がっていく唯一無二のシリーズだったんだけど、前作は初めてちょっと落ちたじゃない。今回、シリーズ初の監督続投(クリストファー・マッカリ―)は、その無念を晴らすべくの登板では・・・って、ちょっと考えすぎか^^。まぁ、前作の製作中に今回の話も出たそうだから、そういう流れなんでしょう、きっと。キャラや組織も前作からバンバン出てるしね。・・・ダニエル・クレイグが出てるスパイ映画の元祖「007」に似てきたな(苦笑)。

 ウリのアクションは・・・まぁ、あれこれ凄かったですよ!!スカイダイビングにトイレでの肉弾戦(←以前、他の映画でも観た記憶が・・・)、バイクでのカーチェイスにヘリコプターアクション(トムさんはヘリの免許取った)!マジで今回も凄かった!!トムさんが骨折したのは敵を追って、ビルからビルへ飛び移るアクションでした。その場面、まんま使ってるのがえらい^^!

 タイトでハードなストーリーながら、ちょろっとギャグもあるし素直に面白かったな〜(アクション・スリラー映画はこうじゃなくっちゃ)。これであと「4」のようなスパイ映画お約束“とんでも最新道具”が出てきたら完璧だった(笑)。さて、おそらく第7作目も何年後かにあると思うんだけど・・・あとやってないのは豪華客船とか潜水艦とか出る海での大バトルと宇宙ぐらいか?愉しみに次の作品を待とうと思う^^。

其の667:イーライ・ロス新作「デス・ウィッシュ」

 ・・・7月から8月に入り、死ぬ程暑い日が続いております。先日、熱中症で倒れたご年配の婦人を目撃(驚)!皆様、水分補給をどうぞお忘れなくー!

 そんなある日、「ジグソウ:ソウ・レガシー」を鑑賞。延々続いた「ソウ」シリーズの復活作!あんまり書くとネタバレするので詳細は省きますが・・・タイトな作りでなかなか良かった。無駄がなくて、意外なオチもありで^^。ただ、やっぱり最高なのはどう考えても1作目!

 
 さて、これからようやく本題→「グリーン・インフェルノ」で筆者を大爆笑させてくれたイーライ・ロス監督の新作「デス・ウィッシュ」を試写会で観ました。70年代にチャールズ・ブロンソンが主演したアクション映画「狼よさらば」(及びそのシリーズ)のリメイクです。亡きブロンソンに代わって主演を張るのは「ダイ・ハード」シリーズのブルース・ウィリス!さて、その出来は!?こちらもネタバレせぬようサクッと書きます🎵


 シカゴで救急救命医をしているポール・カージー(=ブルース・ウィリス)は妻(=エリザベス・シュー)と娘(=カミラ・モローネ)と共に平和に暮らしていた。彼の誕生日の夜、家族でディナーを過ごす予定だったものの、緊急の呼び出しで病院へと向かうポール。その晩、自宅に押し入った3人組の強盗によって妻は殺され、娘は頭を撃たれて昏睡状態になった・・・。
 遅々として進まない警察の捜査。セラピーにも通うようになったポールだが、次第にこの街には“自衛”ではなく“自警”が必要と考えるようになり銃を入手、人知れずトレーニングを開始する。ある夜、車を狙った強盗と遭遇!激しい銃撃戦の末、相手を射殺する。この様子を居合わせた一般人が動画で撮影、ネットで拡散した事からポールはマスコミに<死神(リーパー)>と呼ばれ注目の的となる。果たしてポールは妻子の仇を討つ事は出来るのか!?


 ブロンソン御大が演じられた全5作のシリーズは<家族を殺された男の復讐>という昔から山ほどあるお話にして、「キック・アス」とか<自警ヒーローもののルーツ>とも言える内容。今回のリメイク版は1作目をベースに他の作品要素をちょいちょい混ぜた贅沢な内容になっている。この辺りのアイデアは脚本書いた映画監督ジョー・カーナハン(「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」他)によるものかも^^。オリジナルへのリスペクトはビンビンに感じるものの、原作小説の影はかなり薄いかも(苦笑)。

 ぶっちゃけ、ブルース・ウィリス出てるからといって安易に「ダイ・ハード」みたいな大掛かりなアクション(爆発あり)を想像しちゃダメ!!あくまで割とリアルな復讐劇なんで^^。ブルースが動画に撮られて(←幸いフードを被っていたから顔バレせず)それがネットに出て人気が出るなんて(「キック・アス」と同じだけど)“今どき”の設定も加えて、なかなか楽しめる一作でしたよ!復讐方法にイーライ・ロスの<グロ趣味>も出てるし(笑)。出演してるブルース・ウィリスの「ダイ・ハード」シリーズも、奥さん役のエリザベス・シューが出た「ベスト・キッド」もリアルタイムで映画館で観てる世代なんで少々贔屓もしてるけど(笑)。

 映画「デス・ウィッシュ」は日本では10月公開予定。勿論、筆者は今作の宣伝に全く関与しておりません^^。



 <コアな映画ファンに向けての追記>先日、日本でも公開が始まったトム・クルーズの某人気アクション映画シリーズ最新作ですが・・・なんと、ムビチケの発売がなかった(怒)!!ついこの間の某有名SFアクション映画の真似しないで欲しかったな〜!恐竜映画シリーズ最新作以外に、さほどライバル作が上映してない&興行成績上げるための戦法は分かるけど日本は世界一、映画の入場料高いんだからマジでやめてほしかった。他の作品も追随しない事を切に願う。

其の666:ファン必見!巨匠、自らを語る「デ・パルマ」

 日本列島を猛烈な暑さが襲い続けております。この国は・・・大丈夫か!?

 
 今回でこのブログも実に666回!そこで、この回に書くなら「オーメン」(勿論、ダミアンの数字にからめて^^)と思ったものの、止めまして(笑)・・・唐突にブライアン・デ・パルマ(笑)!!オリジナル版の「キャリー」や「スカーフェイス」、「殺しのドレス」に「アンタッチャブル」etc・・・サスペンス映画を中心に数々の作品を手がけてきた巨匠監督であります。そのブライアン・デ・パルマにインタビューしたドキュメンタリー作品が今回紹介する「デ・パルマ」。このブログ、ほとんどドキュメンタリーないからね・・・。にしても、まんまなタイトルだな(笑)。デ・パルマ御大が幼少時代から最近作「パッション」まで全作品を語り尽くします。ちなみに近日公開されるトム・クルーズ主演「ミッション:インポッシブル」シリーズの第1作目はデ・パルマ監督ですから!!加えて、ドキュメンタリー作品なので、いつもの粗筋はなし^^。

 観ていて「これ凄いな〜!」と思ったのが、作品に第三者のナレーション的な要素(音声や字幕)が一切ない事!完全にデ・パルマの“ひとり喋り状態(の編集)”。監督したのは「ヤング・アダルト・ニューヨーク」、「イカとクジラ」他のノア・バームバックと「マッド・ガンズ」のジェイク・パルトローの2人。自分たちの声を完全に切ってつないだのか、あるいは質問のカンペ出して聞いたのか・・・。最終的にこうした理由と、言い出しっぺがどちらかは不明だが、テレビマンとしてちと驚いた。テレビ番組でこれでプロデューサーに見せたら絶対直し食らう(笑)!

 あと個人的に筆者はヒッチコックからの流れでデ・パルマのファンでもあるのだけれど(その昔、デ・パルマはさんざんヒッチの模倣だと言われ続けた)さすがに学生時代の自主映画や日本未公開作品は観れてないので(当たり前だが)、その辺りの作品が一部とはいえインサート映像で見られたのは嬉しかったなぁ。つい、いくつかの作品を観直したくなったよ。御大が影響を受けた監督や作品(「めまい」や「欲望」ほか)の映像もコメント通りにインサートされてたし。この辺りは許可取るの大変だったと思う(苦笑)。

 長い間、映画評論家やレイティング指定と戦ったデ・パルマ御大ですが、随所に興味深い裏話を披露!それは観てのお楽しみということで❤。ファンの期待を裏切らず、あっという間に上映時間が終わりますゼ^^。

 
 筆者が知る限り、日本では研究書が2冊しかないし(キネマ旬報社の「デ・パーマ・カット」&洋泉社の「ブライアン・デ・パルマ World is yours」)、「パッション」から、ここ数年新作のないデ・パルマ。ところがつい最近、2本ぐらい企画が発表されたそうで。もう御大もいい年だから、早く撮らないと死んじゃう!もうなんでもいいから早く新作を撮って下さい!宜しく頼みます!!


 <追記>劇場版「エヴァ」、2020年公開決定!・・・って、間あきすぎだって!

其の665:暑い夏にマカロニを観よう^^「ミネソタ無頼」

 猛暑が続いております!暑い時には、あえて熱いもの食べて、汗かいて涼しくなるという発想がありますが・・・今回は同様の考え方で今夏、暑そうな砂漠で撮影されてる「マカロニウエスタン」を観賞するのは如何・・・という事で文章を進めます(無理矢理・笑)。

 既にこのブログで何度も取り上げているセルジオ・コルブッチ監督作品ですがこれも前に書いた気もしますけど、日本では最初に「イタリア製西部劇(=マカロニウエスタン)」を作ったのはセルジオ・レオーネ、と認識されているけど(「荒野の用心棒」が世界的大ヒットしたから)、実は先に撮ったのはコルブッチ!「荒野の用心棒」の前年、「グランド・キャニオンの虐殺」というウエスタンを演出してる(筆者、あいにく未見)。今回紹介する「ミネソタ無頼」、これも「荒野の用心棒」より早い!コルブッチのウエスタン初期作にして、マカロニウエスタンというジャンルの初期作ともいえる超重要な一作!・・・でも、あくまでファンだけね(苦笑)。


 無実の罪で長年、強制収容所に収監されている凄腕のガンマン、ミネソタ・クレイ(=この主人公の名前が映画の原題。演ずるは中年のキャメロン・ミッチェル)。眼病にかかっていて視力が著しく低下している。そんなある日、隙をついて脱獄に成功!自分の正当防衛を知りながら証言をしてくれなかったフォックスに会うため、かつて住んでいた町へと戻る。ところが町は今や保安官として君臨するフォックス達とメキシコの山賊オルチス一味の主導権争いで殺しあいが続いていた。再会したフォックスはクレイに無実の証言をする事を断る。友人のジョナサンを訪ねたクレイは、そこで彼が面倒を見ている娘・ナンシーと出会う。彼女の手首には「母の形身」という半分に切った金貨が着けられていた。それを見たクレイは、ナンシーが自分の娘だと知る。実はクレイの女・エリザベスに横恋慕していたフォックスが罠にかけてクレイを監獄に送り、その後、ナンシーを産んだエリザベスがいう事をきかなかった為、彼女を射殺していたのだ。怒りに燃えるクレイ。だが、彼の目は既に見えなくなってきていて・・・!?


 コルブッチが観たかどうかは不明だが“マカロニ版「座頭市」”とか“「誇り高き男」の模倣”とも呼ばれる本作(「盲目ガンマン」の元ネタか?)。映画の大半は砂漠とか荒野とかそんなんばっかでめちゃ暑そう!スタッフ、キャストが炎天下の中、延々撮影していたかと思うと頭が下がる。そんな今作は、クーラーの効いた部屋で冷たいビールを飲みながら鑑賞する事をお勧めします^^!

 ある程度、マカロニ観ている賢明な読者の方々ならもうお察しの通り、後のコルブッチ作品に出てくる“ハンディを背負う主人公”が早くも今作に(「ジャンゴ」や「サイレンス」のルーツ)。あとはマカロニお約束の行動原理“復讐”に(あとは“お金”ね^^)、派手なドンパチ・・・これでハードな拷問シーンが出てきたら、今作でマカロニウエスタンの必須構成要素がほぼ揃っていた事になる。この先見性・・・凄っ(素直に尊敬)!

 主人公は中年のおっさんだし(40代後半から50代)、昔の映画ゆえストーリー展開はベタだし、この後コルブッチが作る諸作より完成度は落ちるものの、今作の白眉はクライマックス・・・ほとんど目が見えなくなった主人公が闇夜の中、音と勘を頼りにフォックスとその部下達に立ち向かう。あんまり書いちゃうとネタばれするんでダメだけど、この下りの<編集>に注目してほしい。映像ならではの緊張感と醍醐味が味わえるマカロニ重要作にして秀作の1本🎵

 
 筆者はセルジオ・レオーネの作品も好きだけど、コルブッチのファンでもある。残りの余生を使って、もっともっとコルブッチの功績を世に広めたい^^

 
 <どうでもいい追記>なんと「ガンダム」がハリウッドで実写映画化!!いまのCG技術なら巨大ロボットもオッケーだと思うけど・・・「新しい世界観」って、どういう事?最低でも「モビルスーツ=兵器」という線だけは外さないで欲しい。作品的に「ドラゴンボール」、サンライズ的には「ガンヘッド」にならぬよう、ただひたすら祈るばかり!!

其の664:大人のエロスファンタジー「水のないプール」

 日本代表がなんとかワールドカップの決勝トーナメントに進んだと思ったら、史上初めて関東の梅雨が6月中に明けました・・・。地球の気候は大丈夫か?

 廃版になった映画のDVDソフトがファンの間で高額取引される事はよくある事ですが、今回紹介する日本映画「水のないプール」(’82)もその内の1つ。もっとも先日、再発売されたので、それも解消されたとは思いますが。主演は内田裕也(ロックンロール!)、故・若松孝二監督、初の一般映画となったファンタジックな作風の実録映画です(でもってエロい^^)。


 切符をひたすら切る平凡な地下鉄職員の男(=もち、裕也さん)。ある大雨の日の夜、公園のトイレで暴漢に襲われていた女・じゅん(=ピンク・レディー解散直後のMIEさん)を助ける。それが彼にとって、若い女性に目を向けるきっかけとなった。ある夏の日、男は子供にせがまれ、昆虫採集のために家族でピクニックに出かける。そこで偶然、青姦に耽るカップルを目撃、男の中で何かが弾けた。彼は昆虫採集セットをヒントに部屋にいる女性をクロロホルムで眠らせて犯す事を思いつく。準備を開始した男は、行きつけの喫茶店に勤めるねりか(=中村れい子)の仕事終わりを待って彼女の後をつけて・・・!!


 1981年に宮城県仙台市で発覚して世間を驚かせた「仙台クロロホルム連続暴行魔事件」が元ネタ(当時、マスコミも大々的に取り扱ったのにーネットではあまり記載がないネ)。映画ではひと夏の出来事っぽく描かれてるけど、実際の犯人(地下鉄職員ではなく、当時46歳の建設メーカーの営業マン)は5年以上に渡ってドアの鍵穴(映画では「窓の隙間」)からクロロホルムを注入して部屋の中の女性を眠らせて宅内に侵入していた。その数、70人を超えるという半端ない強姦魔による凶悪事件なのだ!・・・それが翌年に映画化されてるというのは・・・このスピードもいま考えたら大迫同様半端ないって^^。

 一説では裕也さん(←まだ若いから、金髪&ロン毛じゃないゾ)自ら企画を持ち込み(逮捕された犯人のコメント「バージンはひとりもいなかった」に爆笑したそうな)、若松監督が旧知の内田栄一(藤田敏八監督とのコンビが有名)に脚本を依頼したという。劇中、学校教師を装ってクロロホルム買うとか、犯す相手にコンドーム使う&ポラロイドで記念写真も撮るーとかは事実まんま。先に挙げたちょいちょい事実と異なる点は→→→内田栄一氏の脚色と思われる。ちなみに画面に向けて裕也さんが舌を出すのは裕也さんご本人のアイデアだって^^。

 内容が内容なんでローバジェット(低予算)ではあるのだけれど・・・元ピンク・レディーが出ているのも凄いけど、<ちょい役>でメジャーな人が続々登場(俗にいう「友情出演」の類いだろう)!沢田研二に安岡力也、原田芳雄常田富士男(「まんが日本昔話」)にタモリ赤塚不二夫先生まで!!この辺りがロックンローラー裕也さんの人脈だな^^!内田裕也はこの年「コールガール」、「さらば相棒」に出演した他、80年代は「十階のモスキート」(’83)や「戦場のメリークリスマス」(’83)、「コミック雑誌なんかいらない!」(’86)等の話題作・問題作に出演していった。当時を知る筆者から見ても<80年代の時代の寵児>のひとりだったような気もしますわ。

 
 ラスト(ネタばれするので書きませんが)も実際はあんなんじゃない。タイトルロールの「水のないプール」や印象的な映像が多い映画ではありますが、あくまで"夢犯"という<大人の男向けファンタジー>として描く故の脚色という事で。映画観て、主人公みたいに将来に煮詰まってるからといって、実際に真似したらアカンよ!!当時と違って街中に監視カメラはあるし、家のセキュリティーも格段に進歩してます。確実に逮捕されますから絶対にダメよ!!!


 ・・・異常に早く梅雨明けしたので、熱く長〜い夏になりそうだ・・・。水不足にならぬ事をただ祈るのみ。


 

其の663:少年の心を忘れない男たち「狼は天使の匂い」

 フランスの名匠、故ルネ・クレマンのソフトが先日4作一挙再発。メーカーもさすがに<クレマン・ブーム>を起こそうとは思っていないと思うけど(笑)。そのうちの1枚、「禁じられた遊び」(’52)はテーマ曲もさることながら名作ですよ、超名作!ベタな映画入門書・初級編に必ず載ってるから、このブログには書きません^^。文芸作から反戦映画まで様々なジャンルを撮ったクレマンだが、彼のサスペンス&ミステリー映画といえばやはり「太陽がいっぱい」が最高傑作(←これは以前、このブログでも書いた)。70年代にはロマン溢れるサスペンスやスリラーに傾倒。残る3枚の内、チャールズ・ブロンソン主演の「雨の訪問者」(’70)は以前ソフトが出た時はすぐに売り切れたので、今回再発されて良かった!フェイ・ダナウェイが出た「パリは霧にぬれて」(’71)、凄い邦題がついた「狼は天使の匂い」(’72)という今回のラインナップですが、筆者は「狼は天使の匂い」をチョイス。ジョニー・トー北野武にも影響を与えたと思われるアクション映画です。勿論、ネタばれは無し❤


 不慮の飛行機事故によって、ロマ(ジ●シー)達に追われる事になったトニー(=「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン)。パリにいられなくなった彼はアメリカを越え、カナダのモントリオールまで逃げてきた。ところが彼らの追跡を交わす為に侵入した万国博覧会会場内で殺人の現場を目撃してしまう。犯人の2人に捕らえられたトニーは、ある小島に連れて行かれる。そこにはギャング一味のボス・チャーリー(=「ワイルドバンチ」のロバート・ライアン)にその情婦シュガー(=レア・マッサリ)、ペッパー(=ミア・ファローの妹、ティサ・ファロー)らがいた。チャーリーはトニーに殺された男が持っていた1万5千ドルの在り処を言うよう迫るが、彼は口を割らない。当初は反発しあうものの、じょじょに心通わせるようになるトニーとチャーリーだったが・・・。


 「ピアニストを撃て」で知られるデイヴィッド・グーディス原作の「暗い金曜日」を作家セバスチャン・ジャプリゾが脚色。この御仁、「不思議の国のアリス」フリークで、前に脚本書いた「雨の訪問者」同様、ルイス・キャロルの文章の一部を引用&原作の大筋だけ頂いて脚本を書いてる(原作にロマとか出ないし)。劇中出てくるビー玉や煙草を3本縦に立てるとかいかにも“子供がやりそうな遊び”を通じて友情を深めていく男達とその絆・・・が描かれてゆく。
 筆者は以前「昔のフランス映画は、たるたるしたテンポだった」と書きましたが、この映画の中盤が正にこれ!主人公がギャング一味に監禁されてから、上記のような遊びほかが描かれて、全然ハードなアクションや事件が起きない(苦笑)。逆に言えばこの雰囲気、ムードがファンにはたまらないのだろうね。ぶっちゃけ筆者はこの辺で一度厭きた(笑:ちなみに上映時間は2時間20分ぐらいある)。この後にヤマとなる強奪事件が展開されるんだけど、個人的にはその前がもうちょっとテンポよく進んで欲しかったナ。
 ジャン=ルイ・トランティニャンマカロニウエスタン「殺しが静かにやって来る」の主人公サイレンス役で筆者のご贔屓俳優のひとり。今作では自身の身を守る為、あれこれ立ち回ったりもするものの、そのうちギャングの女性とねんごろになるのは流石二枚目フランス人俳優^^!一方、ハリウッド俳優、ロバート・ライアンは貫禄の老ギャング役。それにしてもジャン=ルイ・トランティニャンロバート・ライアンのコンビって・・・渋すぎるよね、激渋(笑)。そんな2人が少年の心を忘れてないキャラを演っているから、より印象的。ふと思うに、この頃のクレマンはフランス映画でありながら、必ずハリウッドスターを起用してる傾向あり(←世界配給を考えてのプロデューサー判断と推察)。
 音楽はフランシス・レイ。彼といえば「男と女」、「白い恋人たち」辺りが大メジャー作。「雨の訪問者」も彼なんだけど・・・今作は先述した作品たちに比べると、あまり印象に残らないスコア(残念)。アクション映画ながら小島の森や夕景の美しい映像が多いので、もう少し音楽もエンニオ・モリコーネばりに頑張ってくれたら・・・筆者の映画の全体評価ももうちょい点数上がったのは確実!現代風ハードアクション映画を望んだらガッカリするけれど、一風変わった犯罪映画。一見の価値はあるだろう。

 女性陣からよく「男は身体が成長しただけで、中味は子供の時のまんま」と言われますが・・・その通りだと思う(笑)。筆者も少年時代の気持ちを忘れないようにしながら(気分は中2)、このブログ書いてるところもあるし(苦笑)。あまり現実的過ぎないところに男のロマンがあると思うのだが・・・まぁ、これは女子はわからなくていいです。男と女の間には決して埋まる事のない深〜い河が流れている事を・・・筆者ももう分かってますから!!!

 冒頭にも書いたけど・・・何度聞いても凄い邦題!考えた人は尊敬に値する!筆者は・・・未だ狼や天使の匂いを嗅いだことない(笑)。