其の662:カルト化必至作^^「マザー!」

 先日、誕生日を迎え、最初に観た映画は・・・ラス・メイヤー監督の「ブラック・スネイク」(’72)でした(笑)。これ、メイヤー初の興行的失敗作としてファンの間では知られている。予定していた主演女優(巨乳)がクランクインの3日前にヤク中で降板。急遽、アヌーシュカ・ヘンプルをヒロインに起用したものの、彼女が“普通のおっぱい”だったゆえ・・・客が入らずコケたという(苦笑)。筆者が観た感じで書くと・・・19世紀ながら奴隷を使って農園を経営している悪徳ヒロイン達のお話で「いかにもメイヤー」っぽいんだけど、正直、ヒロインの脱ぎが少ないんだよね〜!女優が変わった事で当初の予定を変更したのかもしれないけど<メイヤー映画=巨乳女優のヌード>を目当てにしていた70年代の助平な観客は「これは観に来ないな」とは思った。でも、これは映画の出来以前の問題なんで致し方なかろう^^。


 そんな流れの中で観たのが「ハンガー・ゲーム」シリーズのジェニファー・ローレンス主演作「マザー!」(’17・米)。監督・脚本はダーレン・アロノフスキー。今作は去年開催された「ヴェネツィア国際映画祭」のコンペティション部門に出品されたりしたものの、本国で大コケ!その結果、日本では本年1月に公開される予定がパラマウント映画の意向で公開中止となり先日、ソフトが発売されました。そんな映画の出来とは・・・果たして!?ネタばれしないように書きますわ!


 森の中の大きな一軒家。そこには新しい詩が書けずにいる著名な詩人(=「ノーカントリー」のハビエル・バルデム)と、火事にあった家を日々修復する若い妻(=ジェニファー・ローレンス)が暮らしていた。そんなある夜、医者だと名乗る男(=「アポロ13」のエド・ハリス)が2人の家を訪れる。妻の思いとは裏腹に見知らぬ男を泊めさせる夫。これをきっかけに想定外の事態が発生していくー!!


 先述のジェニファー・ローレンスの他、ハビエル・バルデムエド・ハリスミシェル・ファイファーら豪華俳優が出演する本作!しかも監督はダーレン・アロノフスキーなのに日本未公開とは・・・。「これは何かある」と踏んだ筆者。観賞の結果、分かった事は「やりたい事は分かるけど、ストーリーが一見シュールで難解」という事でした^^。「サスペンス」、「スリラー」描写がちょいちょい入ってくるものの、実は「不条理SF」でしたーという趣き。

 内容が内容なんで、余り書けないんだけど(すぐネタばれしそうだし)・・・このテーマをこの設定でやったがゆえに観客からそっぽ向かれた気がしないでもない。他の設定でやっていれば・・・結果は大分違ったような気がするな〜。面白くないわけでは決してないのだけれど。う〜ん、展開がシュール過ぎて・・・ダーレンくんも筆者に言われたくないか(笑)。同じコケた映画でも「ブラック・スネイク」と理由が異なる(笑)!

 豪華有名俳優陣を集めて撮影前に3か月もリハーサルを敢行。カナダに家のセットまで建ててクランクイン。こだわりのフィルム撮影にSFXもあり、お金はめっちゃかかってる・・・程なく「カルト映画」あるいは「底抜け超大作」入りかと思われる今作。ソフトが廃版になる前に是非観てほしい^^!

 この映画でジェニファーは透け乳首やおっぱいポロリも披露して頑張ったものの映画はコケ、交際していたアロノフスキーとも破局。幸い、その後も主演作があるから良かったけど(オスカー女優だし)、アロノフスキーには頑張ってほしいな〜。映画監督なんてヒットが続かないと、すぐオファーなくなるからさ。
 
 
 西城秀樹さんや朝丘雪路さん死去。・・・昭和の大スターが次々亡くなって(筆者もお会いした事あったし)めちゃめちゃ悲しい。朝丘さんは超偶然S君から勝新太郎主演「御用牙」(’72)のソフトを借りていたので久々観直して個人的に追悼。他の方々は違う作品で追悼して下さい!!
 

其の661:韓流ゾンビもの「新感染 ファイナル・エクスプレス」

 新緑の5月になって半月・・・今月は全然“ツキ”がない!!パチンコやっても単発ばかりで連チャンせず、負けっぱなしだし、先日は数年ぶりに急性胃腸炎になって日曜に救急病院に行き、高〜いお代を支払ったばかり(とほほ)。心身共にマジでツイてないけど、先日観た韓国映画新感染 ファイナル・エクスプレス」(’16)の登場人物たちに比べたら全然マシ!なんせ旅行で乗り込んだ列車内にゾンビが大量発生、襲撃してくるんだから(→比較する規模が違い過ぎるな^^)!!筆者はロマンポルノ同様、そんなに韓国映画も詳しくはないのだけれど・・・ゾンビものは珍しいのではないかしら!?加えて「映画」として素直に面白かったのでチョイスした次第^^。勿論、今回もネタばれしないように書きますが・・・この酷い<ダジャレ邦題>考えた奴、姿を見せろ〜〜〜(まだ英語タイトルの「Train to Busan」にすれば良かったのに)!!


 ファンドマネージャーのソグ(=コン・ユ)は妻とは別居、母と娘のスアン(=キム・スアン)の3人で暮らしていた。ある日、仕事人間の彼は誕生日に何が欲しいのか娘に尋ねると「釜山に行って母親に会いたい」と言う。一度は断ったものの、翌朝、親子2人はソウル発釜山行きの高速列車に乗車した。発車直前、ひとりの女性がおかしな様子で同じ列車に乗り込む・・・。車内には妊娠中の妻・ソンギョン(=チョン・ユミ)を抱える夫のサンファ(=マ・ドンソク)に高校生の野球チーム、高速バス会社の常務・ヨンソク(=キム・ウィソン)等がいた。
 様子のおかしかった女性が倒れていた為、乗務員が近付いたところ、女が急に襲いかかる。彼女はゾンビウイルスに感染していたのだ!!噛みつかれた乗務員もゾンビ化し、次々と周囲を襲い始めた。異変に気付いた乗客達だが列車は走行中のため逃げ場がない!!しかも韓国の各地でゾンビが発生、途中の駅にも停車出来ない状態に!果たしてソグやスアン達の運命はー!?

 
 ・・・とまぁ、ゾンビ映画の熱狂的ファンの方に言わせれば、厳密にいえばゾンビじゃないかもしれないけど、そこは近年公開されたブラピや大泉洋の映画同様、“ニューウェイブ”のゾンビ映画ということで大目に見て頂ければ^^。

 監督はヨン・サンホ。アニメーションの監督ながら初の実写作品との事で。日本でも押井守監督とか、基本アニメだけど、実写も撮る方もいるので個人的には珍しいとは思わないけど・・・韓国では珍しいんだろうなぁ(多分)!もっとも、ヨン・サンホさんのアニメ作品観たことないんで(申し訳ない)、彼の作品の特徴や傾向は筆者分からず。そちらは韓国アニメに詳しい方のサイトを探してご一読下さい^^。筆者は日本のアニメしか詳しくないんで(しかも少し昔の:笑)。

 それにしても初実写作品としては大・大・大、上出来ですよ!!実写だとアニメでは簡単に出来る表現や演出も大分制限されたと思うけど・・・いや〜素晴らしい!また劇中「そもそもゾンビは何故発生したのか?」という理由は説明されないので、気になる方は今作の前日譚「ソウル・ステーション/パンデミック」をご覧あれ。こちらは「アニメ作品」^^!

 アイデアの良さ(「走る高速列車内で逃げ場がない」というナイスなシチュエーション🎵)、ゾンビ周りの演出の巧さは書くまでもなく素晴らしいのだが(マ・ドンソクの男っぷりは要注目^^)、このテの映画の愉しみのひとつは「誰が生き残るか!?」という“展開”にある。ある意味、「大脱走」とかの<脱走もの>と一緒(笑)。「自分だけは助かりたい!」という自己中な奴が今作には多々出てくるので(観ててムカついた)そんな輩も含めて、誰がどうなっていくのかを推理しながら観るのも一興。筆者も「すげー!」とか「マジか!」とか笑ったり、驚いたり一喜一憂しながら観賞した^^。


 ハリウッドでのリメイクも決まってるそうで(誰が出演するんだろ?!)そちらの方も楽しみだが、その流れに乗っかって、香港映画も再びキョンシー映画作ればいいのに・・・って、いまさらヒットは難しいか(苦笑)。
 

其の660:和製サド映画「女地獄 森は濡れた」

 ・・・ゴールデンウィーク(映画業界用語にして和製英語)も終わりましたが、それと同時に極めて個人的な事ですが・・・実父が亡くなり、先日葬式を終えました。そこで伊丹十三の「お葬式」とか(ベタベタ)、父と息子を描いた映画も考えたのですが・・・全てやめて(笑)、神代辰巳監督・脚本作「女地獄 森は濡れた」(’73)に変更(なんでやねん)!!「にっかつロマンポルノ」にして一週間で上映禁止になった問題のカルト作!!・・・この間書いたスピルバーグからの今作!全然、親父ともスピちゃんともまるで関係あらへん!このブログは・・・振れ幅が広いな〜(我ながら笑うしかない)^^

 
 大正時代ー。幸子(=伊佐山ひろ子)は無実ながら女主人殺しの罪で追われ、3日間歩き続けていた。そんな時、洋装の貴婦人・洋子(=中川梨絵)に声をかけられ、自動車に同乗させてもらう事に。洋子は夫と山中にあるホテルを経営しており、幸子は誘われるまま洋館のホテルを訪れる。幸子と洋子が話をしていると、洋子の夫・竜之介(=山谷初男)が現れ、幸子が指名手配されている事を告げる。動揺する幸子に彼は“ある提案”をしてきて・・・!?

 
 原作はかのマルキ・ド・サドの「新ジュスティーヌ」(翻訳された文庫本あり)!舞台をフランスから大正期の日本へ移しての翻案。確かに原作のアウトラインは・・・こんなお話ですな。タイトルだけだと、大勢の女と少数の男が森の中でヤリまくるのかと想像しがちですが、そうではありません(笑)。

 筆者はサド大先生のファンではありませんが、映画化作品はたまたま、ちょいちょい観ていて(本国フランスではロジェ・バディム、イタリアではパゾリーニ、日本でも実相寺昭雄とか撮ってるんで)上映時間65分(尺的には中編)というのは・・・筆者が観たサド作品では一番短いかも!?

 “ロマンポルノ”で撮る“時代物”なので、予算的な問題も多々あっただろうけど(舞台となるホテルの全景ショットとかないし、出演者もごくわずか)怪しさ満点の室内セットは雰囲気出てた^^。先述の粗筋は丁度よい辺りでやめましたが・・・あれ以降は危なくて書けへん(笑)。でも、原作読んでたり、サド作品のパターンわかってれば・・・大体<想定内>の展開になります^^。

 筆者はアラフィフだし、サディズムに興味もないので、鞭バシバシシーンとか観ても笑えたけど・・・若い人(言うまでもなく「18禁」の「成人映画」)が観たらトラウマになるかもしれないね。若き日の山谷初男の“怪演”にも要注目という事で^^。音楽の使い方も印象的でいいんだけど・・・時々、手持ちで撮ってるドリーショットが悪い意味で気になって・・・クレーンなり使えばいいのに、とか思ったけど(まだこの当時は、ステディカムとかないんで)それも予算の問題だな^^!

 以前にも書いた事だけど、筆者はロマンポルノ世代じゃないから、リアルタイムでは観てなくて・・・これからは<勉強>として、ロマンポルノも観ないといけないね。けれど生きてる間、残りどれだけの数の映画を観る事ができるのか?愉しみでもあり、怖くもあり・・・!


 <どうでもいい追記>なんとスタローンが「ランボー5」作るとの情報!マジ卍!?・・・書いてみたかっただけ(笑)。

其の659:100%スピルバーグ印「レディ・プレイヤー1」

 ・・・今月は殺人的スケジュールで・・・疲れ果てました(涙)。

 そんな中、無理矢理観に行ったのが、今年2本目のスティーヴン・スピルバーグ監督作品「レディ・プレイヤー1」!大ファンの監督の作品がこんな短い期間で2本も観られるなんて超ラッキー^^。日本のポップカルチャーをこよなく愛するオタク作家アーネスト・クラインの小説「ゲームウォーズ」の映画化(クラインは今回脚本も担当)。想定通り、大ヒット公開中につき、ネタバレしないよう短めに書きマスわ^^。


 西暦2045年ー。人類は環境汚染や人口増加に伴うエネルギーの不足、政治の機能不全等により貧富の差が拡大。人々の大半はスラム街で絶望的な生活を送りながらも<オアシス>と呼ばれるバーチャル・リアリティ(仮想現実)の世界で別の人生を過ごす事でかろうじて心の平穏を保っていた・・・。
 現在、<オアシス>内では、5年前に亡くなったシステムの創始者ジェームズ・ハリデー(=マーク・ライランス)の遺言による宝探しゲームが継続していた。<オアシス>内に隠した3つの謎を最初に解いた者にはハリデーの遺産、約5000億ドル(注:現在の日本円に換算して約56兆円)と<オアシス>の所有権が与えられる。だが、未だ第1の関門となる「公道レース」すら誰もクリアーできていなかった。現実世界ではパッとせず、両親も早くに亡くしたアメリカ・オハイオのスラム街に住む若者ウェイド・ワッツ(=タイ・シェリダン)は貧困からの脱出を夢見て<オアシス>内に入っては奮闘する日々。そんなある日のレースでウェイドは<オアシス>内では凄腕と呼ばれる人気アバターの“アルテミス”と出会う。だがゲームには世界第2位の巨大企業「IOI社」の最高顧問ノーラン・ソレントが自社を第1位にする為、遺産を狙って参加者を送り込んでいた。なんとか第1の関門を突破したウェイドの現実世界に「IOI社」が襲い掛かるー!!

 
 映画のスタート早々、ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」が流れてきて一気に気分が上がってくる今作(ベタベタな選曲だが🎵)^^。劇中の“バーチャル・リアリティ”の中には・・・主に80年代前後の映画やアニメ、テレビゲームのキャラが次々と出てきてはバトルしたりして・・・題材的にも「スピルバーグによるスピルバーグ映画」だよね^^。適任だし彼が監督したのは必然だと思う。

 それにしても大量のキャラやネタが投入されていて・・・デロリアンや「AKIRA」の“金田バイク”、アイアン・ジャイアントやファースト・ガンダム(!)辺りは長々出るので分かりやすいけど・・・一瞬しか映らないキャラとかもいるので、筆者も全てを認識する事は出来なかった!DVD出たらコマ送りしてチェックするか(笑)。今作を観る上ではキューブリックの「シャイニング」とオーソン・ウェルズの「市民ケーン」ぐらいは押さえておくとストーリーを理解しやすいかも。

 今作は<大CG大会>にして(お金めちゃかかってそう)冒険あり、アクションあり、ラブあり・・・と単純に観てて面白い映画なんだけど・・・映画で扱っているネタで考えると、1980年代に10代を過ごした筆者の世代にはどストライク!!学生さんよりも、30代後半の人達からがネタ的に本当に愉しめる映画だと思う❤若人よ、申し訳ないね^^。「ペンタゴン・ペーパーズ」のように「傑作!」・・・とは書かないけど面白い映画ではありました!

 ちょっと話はそれるけど、先日、某TV番組観てたら小室哲哉を知らない10代のタレントさんがいて・・・超ビックリしたんだけど(信じられん)、それに比べたら本作の主人公は半世紀以上前のカルチャー・ネタに超詳しい(素晴らしい)!彼に比べて、いまの日本の若い人たちは、自分で率先して物事を調べる人が少ない気がする(ネットですぐにリサーチ出来る時代だから「いつでもできる」という気持ちにより拍車がかかっているのだろう)。この映画観た後でいいので、気になるキャラや音楽があったら自分で調べてみましょうね^^。


 さて、今後のスピさんは・・・「インディ・ジョーンズ5」と「ウエスト・サイド物語」のリメイクを監督予定(キャスティング中らしい)!スピルバーグ初のミュージカル映画も気になるけど、ハリソン・フォードはまだインディ役出来るのだろうか!?動きが鈍いんで<CGキャラ>になったりして(苦笑)。


 <どうでもいい追記>話題のミステリー「屍人荘の殺人」をようやく読了。まさか●●●でクローズド・サークルが出来るとは・・・(あんぐり)!ちょっとビックリしたし、正統な本格とは言い難いけど、これもアリだな^^。そのうちバーチャル・リアリティー内で起きる連続殺人事件とかも書かれるかも(笑)。

其の658:傑作!!「ペンタゴン・ペーパーズ」^^

 新年度が始まりましたが・・・今月はめっちゃハードなスケジュール!!!4月が終わったら、心身ともにげっそりしてそう・・・(怖)!?

 そんな状況の中、合間をぬって観たのがスティーヴン・スピルバーグ監督作「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(’17)。ベトナム戦争に関する最高機密文書・通称「ペンタゴン・ペーパーズ」について暴露した「ワシントン・ポスト」のジャーナリストたちを描いた実話の映画化です。絶賛公開中につき、いつものことですがネタバレは書きません^^

 
 ベトナム戦争が泥沼化していた1971年・アメリカ。亡き夫の後を継いでローカル紙「ワシントン・ポスト」の社主兼発行人を務めるキャサリン・グラハム(=メリル・ストリープ)は会社の経営を安定させるべく奔走していた。6月13日、全国紙「ニューヨーク・タイムズ」はペンタゴンアメリカ国防総省)がベトナム戦争について記録・分析した最高機密文書の存在をスクープ!これに「ワシントン・ポスト」の編集主幹ベン・ブラッドリー(=トム・ハンクス)らは負けじと動き、スタッフが情報をリークした人物との接触に成功。膨大な量の資料を入手する事に成功する。だがニクソン大統領は「ニューヨーク・タイムズ」を国家機密の情報漏洩とし、その後の記事の差し止めを求めて裁判を起こしていた。後追い記事を出す「ワシントン・ポスト」に違法性は!?違法であれば関係者は逮捕されて会社の存続さえ危うい。社内の意見が二分する中、キャサリンに最終決断が迫られるー!!

 
 どシリアスな社会派ドラマ。<実話ベース>だけに話の“オチ”は分かっている。けれども映画は・・・とてつもなく面白かった^^!!!

 現実とは大なり小なり変更されているとはいえ無駄のない脚色に力強い正攻法の演出(画面構成含む)。テンポのよい編集に、大女優メリル・ストリープ&名優トム・ハンクスの好演(これはいつもの事^^)。そしてジョン・ウィリアムズ御大の快調な音楽・・・「完璧」である。スピルバーグ完全復活だ(嬉)!!こんな傑作をマジ映画だからといって売るのに困ったのかもしれんけど日本の会社が大宣伝しなかったのはひたすら残念・・・!
 ・・・これ以上、書く事は大してないのだが、ちょっと短いのでもうちょっとだけ書く(笑)。

 学生さんとかがデートで見に行くジャンルの映画ではないので、観客は筆者含めて、いい年ぶっこいた人々だったのだが・・・泣かせる映画ではないのに、あちこちの席で鼻水をすする音が。“大人の事情”を身をもって経験している世代が観ると、ついつい劇中の人物たちに感情移入してしまい、その勇気ある行動に感動してしまうのだ。筆者も久々映画館で泣きそうになった^^!

 ふと考えると、スピルバーグは以前、エンタメ作「ジュラシック・パーク」のポスプロの間にどマジな実話「シンドラーのリスト」を演出(←彼は早撮りで有名)。今回も日本でもまもなく公開される「レディ・プレイヤー1」(←アメリカその他では大ヒット中)を一旦中断して今作を製作(前とパターンは全く同じ)!スピさんは忙しい時の合間に作った映画は傑作になる事がこれでよく分かった(笑)。

 映画館に見に行く予定の人は、少〜しアメリ近現代史の勉強をしておいた方が良いでしょう。そうでないと、ラストシーンの意味が分からなくて「ポカーン」となる(笑)。あとエンドクレジットの最後に出てくる女性の名前は既に亡くなられている女流映画監督です。

 
 スピルバーグは「(この映画は)現代との共通点がとても多い。だから、すぐにつくって公開したかったんだ。」とコメントしているが・・・批判的な報道をするマスコミを“フェイクニュース”と決めつける某大統領と政府について凄い危機感を抱いているんだろうね(苦笑)。そういや、どこぞでも公文書を“改ざん”、“隠べい”して国民を騙しているようだから・・・地球上に存在する全てのマスコミの方々、正義と国民の知る権利の為に頑張りましょう!!

其の657:「ハードコア」!「絞殺魔」!!

 今年の桜の開花は早いでんな!4月になってないのに、もう満開(苦笑)。今年も道に咲く桜を移動中に眺めるだけで終わりそう・・・(虚)。

 “桜”といえば先日、吉永小百合様主演「北の桜守」を鑑賞。何故観たかと申しますと・・・筆者にも色々<大人の事情>があるからですよ(笑)。小百合様映画だけに、まぁ、いい映画・・・だよね。面白い映画ではなくて、“いい映画”。あと笑福亭鶴瓶師匠と阿部寛は、小百合様映画の完全にレギュラーだって事はよく分かった^^!

 
 筆者も一応、映像業界の片隅に身を置く立場なので、映像に関する新しい事は勉強しなければならないのですが・・・SFアクション映画「ハードコア」(’15・露、米。“ハードコア”っていっても、ポルノ映画のジャンルの方ではないので、ご注意)は<全編一人称視点>で作られた初の映画!!
 どうゆう事かと言うと、主役やる人(顔出しなし)の頭にゴープロ(小さいカメラ)着けてアクションさせると、観客が主人公目線でガンガンアクションした気分になれるというVR(ヴァーチャル・リアリティー)映画です。

 そんな複雑なストーリーではないので、あえて割愛しますけど・・・筆者も以前、15分ぐらいのVR映画は観た事あるのだけれど(軽い恋愛ものだった)、これが長編でアクションになるとね・・・アラフィフのせいかもしれないけど、視神経が追い付けず、観ていて途中具合が悪くなってきた(苦笑)。で、VRという事で安いイメージ抱くかもしれないけど、これがお金かかってんのよ!車はバンバン破壊するわ、バイオレンス描写も超ハード!!撮影した素材まんま使用ではなく、きちんとCG処理してるし。ゲーム好きな方にはお薦め!

 その昔でいえばCG駆使した「トロン」や、登場人物がカメラ回した「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」、時間軸逆につないだ「メメント」に再度3Dを流行させた「アバター」・・・と、技術の進化と共に映画も深化と新しい表現を模索してきた訳で、今作もそんな作品の内の1本になった。特にこういう<アイデア一発勝負>の映画は先にやった者の勝ち!監督・脚本を手掛けたイリヤ・ナイシュラーはこれで世界映画史にその名を残した・・・筈。こうなると次に続くVR映画は何やるんでしょうねぇ??インド映画並に大勢の中でダンスとかやったりしたら面白いと思うけど^^。


 “新しいこと”と言えば・・・映画も撮影のみならず“編集”する際、様々な技法を発展させてきましたが(ワイプとかオーバーラップとか)・・・画面のマルチ(分割)って、どの作品が最初にやったんでしょうね??その辺りは詳しい方の著書かサイトを読んで欲しいのですが・・・「絞殺魔」(’68・米)はそのマルチを全編において多用した作品。現在の作品でもデ・パルマとかないことはないけど、ここまで全編に渡って使っている映画もそう多くはない。その代表として今作を挙げます。


 アメリカ・ボストン。1962年6月、一人暮らしの老女が絞殺されて発見された。市警察のディナターレ刑事(=ジョージ・ケネディ)らが捜査に当たるも手掛かりはなく、更には同じ手口で老女の絞殺事件が続発する事態に。検事総長補佐のボトムリー(=「荒野の決闘」、「ウエスタン」のヘンリー・フォンダ)が捜査本部長に任命されたものの犯人は分からない。おまけに老女から今度は若い女性ばかりが絞殺されるように犯行が変化していった。一方、ボイラー工のアルバート・デサルボ(=「スパルタカス」、「お熱いのがお好き」のトニー・カーティス)は、テレビで故ケネディ大統領の葬儀を見ていたものの、妻と子供たちを置いて自宅を出て、女性を物色し始める・・・。


 1962年から64年にかけて13人の女性が殺害された「ボストン絞殺魔事件」の映画化。なんせ事件が終焉を迎えて僅か4年後に公開されているから(この年に「2001年宇宙の旅」も公開)まだ犯人や関係者も存命中という事で、めっちゃ早い企画といえるでしょう。これぞ東映も真っ青の映画屋さん的発想(笑)。

 監督はリチャード・フライシャー。ディズニー映画「海底二万哩」や「ミクロの決死圏」あたりが有名だけれど、このブログでも以前書いている「マンディンゴ」も演出している、単なる職人監督ではないお方(黒澤明が監督降板した「トラ・トラ・トラ!」のアメリカ側監督もこの人)。映画の前半はスプリット・スクリーンを駆使してセミ・ドキュメンタリータッチで進行していくのだけれど、これはフライシャーがキャリアの始めにドキュメンタリーやニュースフィルムを手掛けていた事と無縁ではないだろう。で、後半は逮捕されて尋問される犯人の内面を描く展開に推移していく。あえて死体をハッキリ見せない演出は巧いし、劇伴(音楽)を使わない点も映画のリアリティーを増していてグー!

 俳優陣に目を向けると、自ら犯人役を志願したトニー・カーティスは偉いっ!出番は映画の半分しかないし(上映1時間経って、ようやく登場)、そもそもイケメン俳優で売っててイメージダウンのリスクもあっただろうに、こういう難しい役に進んで挑戦する俳優さんを筆者はリスペクトする。晩年、自伝でマリリン・モンローと不倫してたと書いたのははいかがなものかと思うけど(笑)。ジョージ・ケネディヘンリー・フォンダはどんな映画にでも出る印象あるけど(笑)、ベテランだけに、安定した芝居で好演。

 実話だけに、事件の顛末とその後は・・・気になる方は各自で調べて下さい。これも勉強ですよ、勉強(笑)。調べる前に観るか、調べてから観るかは・・・貴方次第という事で。昔の角川映画のコピーか(ひとりツッコミ)。


<どうでもいい追記>M・ナイト・シャマラン監督作「スプリット」(’16・米)は「絞殺魔」と設定に共通している部分があるんだけど、シャマラン映画の代名詞の“オチ”がアレっていうのは・・・(絶句:ネタバレするから書かないけど)!自分の過去の作品を観ていなければ分からないというのは、あまりフェアではないと思うのだが・・・加えて、これの続編製作決定って、マジか!!


 

其の656:リンチ作品のルーツ?「裸のキッス」

 ようやく少〜し、春めいてきた今日この頃。その分、花粉症でキツい・・・!

 
 さて、今回紹介するのは・・・またしても、知っている人は知っているカルト映画「裸のキッス」(64・米)!ジャンル的には<サスペンス>です(どうも今年は年頭から最新作&正統派映画を書いてしまったので、その反動が脳内に来ている:苦笑)。以前ここで書いてる「ショック集団」や「ストリート・オブ・ノー・リターン」のサミュエル・フラーが製作・監督・脚本を兼任しております。ちょい邦題似てるロバート・アルドリッチ監督「キッスで殺せ!」(’55・米)ではないのでご注意あれ。


 娼婦のケリー(=コンスタンス・タワーズ)は金をピンハネする売春宿の元締めを殴り倒し、自らの取り分を奪って立ち去った・・・。
 2年後、彼女はグラントヴィルという小さな町にやって来る。シャンペンのセールス嬢をやっている、というケリーに魅かれた警部のグリフ(=アンソニー・B・アイスリー)は彼女と一夜を共にした後、町を去るように忠告する。ところが彼女は部屋を借り、町の身障児施設の看護婦として働き始める。怪しんだグリフがケリーに詰め寄ると自分は更生したいから、過去については黙っていて欲しいと懇願される。ある日、町の創設者の子孫で富豪のグラント(=マイケル・ダンテ)からプロポーズされるケリー。過去は気にしない、という彼の申し込みに考えた結果、ケリーは結婚を承諾する。結婚の準備に追われていた時、彼女はグラントの思わぬ秘密を知ってしまう・・・!!

 
 いや〜、書けるのはここまでですな!後半の方が面白いんだけどネ。続きが気になる方は是非ご自分の目でお確かめを^^。「モノクロ映画」なので若い人たちは嫌厭しそうだけど、ストーリーだけではなく、いかにもサスペンス映画らしい映像(特にライティング。照明よ^^)にもご注目頂きたい。
 映画のド頭、いきなりヒロインがカメラ目線で男を殴りまくる!で、その直後、彼女のかつらが取れてスキンヘッドの頭部がむき出しになって超驚いた(←売春宿の主人が女が逃げないように髪を刈ったのだ)!!これで観客の“つかみはOK”(笑)!映画にぐいぐい引き込まれてゆく。
 監督のフラーについては以前書いている(筈)なので詳細は省きますが(監督作品の大半が異色作といえるだろう)、前作の「ショック集団」に続き、“人間の暗部(ダークサイド)”を描く本作。どこにでもありそうな小さな平和な町、そこに住む大人しそうな人々。だが、そこには恐るべき闇が広がっていた・・・という内容は、デヴィッド・リンチの「ブルーベルベッド」や「ツインピークス」(先日、続きがありましたな)につながる内容。よって、フラー・・・いや今作「裸のキッス」は、リンチ作品のルーツ的存在・・・?って、誰も書いていないから書いておこう(笑)。リンチがフラーのファンとか、今作に影響受けているのか否かは筆者は読んだ覚えはないので、単なる個人的推測です^^。
 タイトル<裸のキッス>の意味を書いてしまうとネタバレするんで書けないけれど・・・現在でもなかなか衝撃的な内容。公開当時の60年代はーもっとだっただろう(ラストは別のバージョンも撮ったものの、観客の心情を考えて、いま観られるラストを選んだそうな)。そのせいかどうかは知らんが・・・今作はあまり当たらなかったらしい。残念の一言(これ以降、フラーの制作ペースは極端に落ちた。製作費調達が難しくなったからか?)。

 
 どんなジャンルにしろ、時代の先を行き過ぎたり、危ないとこ攻め過ぎると大衆の反感を買って潰されるのが・・・遺憾ながら、人の世の常なのかもしれない。で、大分経ってから評価される・・・今作も現在ではバッチリ評価されている1本。サミュエル・フラーの努力は無駄じゃなかった^^!!
 もっともヒロインのケリーは美人だけど馬鹿ではないし、キチンと自分の考えを持っている人物なのに何故娼婦に身を落としたのか、とかその辺りの背景が知りたい・・・と思ったのは筆者だけか??