<其の817>邦画サスペンス2本「#マンホール」、「ロストケア」短評

 新年1発目が洋画からスタートしたので、2発目は邦画にしようかな、と(そんでサスペンス映画を短く2本立てで)。

 

 まず1本目は熊切和嘉監督の「#マンホール」。翌日に結婚式を控えたサラリーマン(=中島裕翔)が会社の同僚にお祝いして貰った帰り道に深~い穴に転落!!目を覚ますと足を大怪我した上に、警察に連絡したもののスマホのGPSの誤作動で自分の居場所が分からない。警察以外で唯一電話に出た元カノ(=奈緒)に助けを求めつつ、「マンホール女」のアカウントをSNS上で立ち上げ、ネットを通じて場所の特定をお願いしてみるのだが・・・!?

 

 ハリウッド映画だと「気づいたら棺桶に生きたまま入れられてた」とか「電話ボックスから出られない状況」とかの<1シチュエーション>作品が時々あるんだけどー邦画ではほとんどないんじゃない!?めちゃめちゃリサーチした訳じゃないから皆無とは書かないけど(笑)。しかも今作は原作なしのオリジナル!!日本映画としては興行的にかなりリスキーではあるけど、製作に踏み切ったその姿勢に筆者はエールを送る次第^^。勿論、筆者がこういう変わった設定の映画が好きなことは書くまでもない(笑)。    

 中島くんが狭い穴の中で色々大変な目に遭う<脱出系サスペンス>・・・と思いきや、更に想定外の展開になるのが今作のミソ(ネタバレするので書けない)。そのためにかなりのツッこみ所が生じているのが難点だが(苦笑)、普通~に観てて、楽しめる作品。SNSの功罪もきちんと描いているところも評価したい。

 

 続く2本目は前田哲監督作「ロストケア」。老人42人を殺害した介護士(=松山ケンイチ)と、彼を取り調べる検察官(=長澤まさみ)のバトルを描いているのだがーこれは単なるサスペンス、スリラーというジャンルを越えた<社会派サスペンス>!!中山七里原作の映画「護られなかった者達へ」は生活保護制度のヘビーな現状を描いていたが、今作は認知症を患った家族を家庭で介護する現状と介護ケア業界の実態をテーマにしている。少子高齢化の現代ニッポンが抱える闇・・・。

 これは誰もがいつかは向き合わなければならない事象で、当然筆者にも考える事が多々思い浮かび、観終えて気持ちがド~ンと重くなった(苦笑)。あえて粗筋を書かないので是非観てほしい。特に中高年の方々には。

 長澤まさみ松山ケンイチはこれが初共演だが、中でも長澤の泣きの芝居は巧かったな~。前田監督の演出は正攻法ながら心象表現として複数の鏡を使ったり、あえて壁のない黒バックのセットで撮影する等、細かな演出が印象深い。

 

 今作が公開当時、大して話題にならなかったのが残念だが「鬼畜」(児童虐待問題)と「護られなかった者達へ」、そして「ロストケア」の3本は令和を生きる日本人はマジで観て欲しいエンタメテイストの社会派作品だ。