小池一夫映画シリーズ第3弾(笑)は「ポルノ時代劇 忘八武士道」で御座います。小池一夫(旧「一雄」)・小島剛夕という「子連れ狼」コンビによる、この劇画の主演は故・丹波哲郎大先生!そして監督は丹波先生の盟友・石井輝男!!「網走番外地」からカルト映画「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」までなんでもござれの天才・石井の手腕が炸裂する痛快娯楽大活劇!ジョン・ウーやタランティーノが憧れるのもよく分かる。
タイトルにある「忘八」とは孝・悌・忠・信・礼・義・廉・恥の8つの徳を忘れたアウトロー(人にして人に非ず)の意味。そんな忘八侍、「人斬り死能」こと明日死能(=丹波先生。にしても凄い名前だ)が花の吉原遊郭の利権を巡る陰謀と殺戮に巻き込まれ大暴れするお話。
なんでも今作は原作の大ファンだった丹波哲郎が自ら東映に映画化を申し入れてきたという。で、念願叶った丹波先生はやる気まんまん!主人公が使う日本刀まで自前で用意する熱の入れよう(笑)。その熱意に打たれた(?)石井輝男も三隅研次のむこうを張り、冒頭から手足スパスパの残酷描写で対抗!最後の大立ち回りでは斬れた首をびゅーびゅー飛ばせ、その腕前を存分に発揮した(笑)。
また映画は吉原遊郭が舞台とあって、石井は大量に裸の女たちを動員(「ウルトラセブン」のアンヌ隊員こと、ひし美ゆり子が脱いでいるのも要チェック)。何故か「くのいち(女の忍者)」は全裸で、火に包まれた人間も女体で消火する荒技まで見せる(笑)。
加えて<異常性愛シリーズ>で培った(?)エログロSM描写も導入(色彩が強烈)!タイトルにある「ポルノ時代劇」の名にふさわしい作品として、その筋のファンを喜ばせた(笑)。
のちに続編も製作されたが、あいにく筆者は未見。だって、主演は丹波先生じゃないし(今作にも出演している伊吹吾郎)監督も石井輝男じゃないんだもーん。
余談だが、丹波先生はこの「明日死能」というキャラクターが大のお気に入りだったようで、後年の石井監督作品「地獄」でも同じ役(ヘアスタイル・衣装もまんま)で登場している(笑)。
小池作品を立て続けに取り上げていくと、つくづくこの時代の日本映画は凄かったと思う。近年、<リアルな時代劇>がもてはやされているが(山田洋次の「藤沢周平3部作」とか)三隅や石井のような荒唐無稽かつ豪快な作品も技術が発達したいま、再びスクリーンで観て見たいと思うのは筆者だけではないと思うのだが、さて。