<其の761>どこの国でも起きうる恐ろしさ!!「Z」

 今年も11月中旬・・・。去年と今年はコロナで<社会生活が奪われた2年>でした。来年はその<3年目>にならない事を切に願うばかり・・・。

 

 今回取り上げる映画はコスタ=ガヴラス監督作「Z」(’69仏、アルジェリア)。<社会派ドラマ>、<政治サスペンス>と呼ばれるジャンルです。「マジンガーZ」ではありません(笑)。これも長い間観たかったのだけれど・・・もうソフトは廃版みたいで。でも映画ジャンキーSくんのおかげで先日観る事が出来ました!Sくん、有難う^^!コスタ=ガヴラス作品は、このブログでも前に「ミュージックボックス」(’89米)を紹介しました。今作は彼の代表作の1本なので(=超メジャー作)で、このブログには書きずらいけど・・・どうぞ、お許しを!

 

 地中海沿いのある小国ー。軍事政権が全てを掌握しているここでは、野党の議員にして平和主義者のZ氏(=「恐怖の報酬」、「仁義」のイヴ・モンタン)の存在を苦々しく思っていた。そんなある時、彼が平和集会を開催する事を知った当局は当初予約していた会場を貸さないよう経営者に圧力をかけ、小規模開催での変更を余儀なくされる。政府支持派と反対派が大勢集まる緊迫する状況で集会を終え会場前の広場に出たZ氏は、三輪軽トラックの荷台に乗った男に頭部を殴打されて死亡する。だが政府の公式発表は「交通事故による死亡」。当時現場にいた新聞記者(=「ニュー・シネマ・パラダイス」のジャック・ぺラン)と司法解剖の結果に疑問を抱いた予審判事(=「男と女」、「殺しが静かにやって来る」のジャン=ルイ・トランティニャン)は真相を究明しようと活動を開始。だが、証言者やZ氏の関係者が次々と謎の襲撃を受けて・・・!?

 

 「Z」は1963年にギリシャで平和主義の野党政治家が暗殺された事件をモデルに書かれた同名小説の映画化で、コスタ=ガヴラスの監督3作目。彼はギリシャ出身で映画作りをフランスで学んだ御方(あの「太陽がいっぱい」のルネ・クレマンルネ・クレールの助監督を経験してる)。数年前に故国で起こった事件を大いなる怒りを持って製作にあたった事は容易に推測できよう。

 よってストレートな事件の告発・・・かと思いきや、主要キャストはフランス人なのでギリシャ語ではなく、フランス語で会話。また、ネタバレになるので詳しく書かないけど、唐突に入ってくる<●●シーン>が何も説明もないまま終わったり(笑)、よくある再現もの、政治サスペンスものにはなってない^^。Z氏の関係者が歩いていると、いきなり車に追い回されるシーンとかはハラハラドキドキ!映画全編にコスタ=ガヴラスの才気を感じさせる。

 内容が内容だけに(オープニング中、監督・脚本家の連名で「現実との偶然の一致は意図されたもの」云々と宣言してる!)本国ギリシャではなく、アルジェリアにてロケ。低予算且つ俳優達にも相当リスキーな製作だったそうだが・・・チャラそうにみえるジャック・ぺランの新聞記者が意外と真面目だったり(笑)、終始硬い表情で感情がみえないジャン=ルイ・トランティニャンは恫喝されながらも正義を貫く熱血予審判事だったり俳優陣が見た目とは異なる演技を披露しているのも見所のひとつ!で、最後はね・・・複雑な感情を観客に残す。これが史実ではあるんだけど・・・って、あまり書くとネタバレになるのでここまで!!

 時の政府や上層部が知られるとマズい事件を早々に幕引きする為に、あらゆる手段を取る事は過去、どこの国でも大なり小なりあるとは思うけど、一国民があっさり国家権力の手によって抹殺されてゆく・・・。考えるだけでも恐ろしい!!それだけに、こういう映画が作られる事は本当に大事な事だとつくづく思う。

 

 完成した映画は高く評価され、米・アカデミー賞の主要部門にノミネート。編集賞外国語映画賞を受賞し、コスタ=ガヴラスの名を世界に轟かせた。勿論(?)、「Z」はギリシャでは上映禁止!!心あるギリシャ国民の一部は既に何らかの形で観賞しているとは思うけど・・・もう正式に“解禁”されたのかしら??ギリシャ黒歴史だとは思うけど、もう21世紀だし、解禁されているといいなぁ。