<其の747>ミステリーコメディーの快作「名探偵登場」

 東京は梅雨を前にして暑い!これで本格的に夏がきたら・・・どうなるんや??

 

 筆者はミステリー小説のファンで連続殺人事件が起きて、名探偵が解決する王道の<本格ミステリ―>が好みなのですが(ホームズやポアロ金田一とかね)今回取り上げる「名探偵登場」(’76・米)は、著名な名探偵達が郊外の怪しげ且つ外に出られない豪邸内に閉じ込められ、予告された殺人の謎を解く・・・というミステリー・コメディー。筆者本来の趣味とは異なるけれど、こういったパロディーミステリーは小説では山ほど書かれていながら、映画ではそれほど数がない気がする。コメディーも筆者はそんなに好きではないけれど・・・これは観ながらクスクス笑えた^^。ミステリー・サスペンスの小説を沢山読んでいる人やそのテの映画を観ている人には愉しめます❤

 

 風変りな謎の億万長者ライオネル・トウェイン(=トルーマン・カポーティ)は盲目の執事(=アレック・ギネス)に命じて世界的に有名な名探偵達を屋敷へと招待する。ライオネルは顔を揃えた探偵5人とその助手の計10名に「午前零時までにこの部屋にいる誰かが殺される」と予告。見事解決した者には100万ドルの報酬を与えると告げ、建物中全ての出入り口を封鎖して部屋を後にした。完全に密室になった邸内で探偵達が午前零時を迎えたーその時、現れたのは背中を12か所刺されて絶命しているライオネルの死体だった。・・・この事件の真相やいかに!?

 

 今作の発案者にして脚本を担当したのはアメリカの大物喜劇作家ニール・サイモン。日本でいえば・・・三谷幸喜的な立ち位置の人(違うか?!)。この御仁が子供の時から本読んだり、映画観ていた様々な探偵キャラ達を集合させて書き上げたのが今作。<密室と化した屋敷>という設定は「そして誰もいなくなった」ほか大定番のクローズド・サークルだし、<12か所刺されて殺される>のはクリスティーの「オリエント急行殺人事件」のパロディー。探偵が屋敷に到着した際、必ず石像が落とされるというのはー元ネタは「ナイル殺人事件」からかも。この他、常に屋敷に雷鳴が轟いているとか、「ミステリーあるある」ギャグが散りばめられているので、その辺りも要注目で。

 コメディーとはいえ出演俳優は超豪華!!先述のアレック・ギネス・・・筆者世代的にはオビ=ワン・ケノービ・・・が、冒頭からギャグやるのも凄いが、探偵達には「刑事コロンボ」でお馴染ピーター・フォークがハードボイルド「マルタの鷹」のサム・スペードのパロディー、その名もサム・ダイヤモンド役。勿論、映画のボギーにはまるで似ていない(笑)。あと、日本ではそんなにメジャーでない俳優さんがエルキュール・ポアロミス・マープルのパロを担当。見た目もちょい似てる^^。

 デビッド・ニーブンとマギー・スミス演じるチャールストン探偵夫妻はダシール・ハメット原作の映画「影なき男」に出てくる夫婦のパロ。そしてピーター・セラーズ演じるシドニー・ワンはアール・デア・ビガーズによる「チャーリー・チャン」シリーズのパロディー。めっちゃ胡散臭い中国人を怪演してる(笑)!さすが「ストレンジラブ博士」を演じたセラーズ、流石である^^。

 特筆すべきは・・・全ての発端となるライオネルを演じているのが作家のトルーマン・カポーティだということ!!あの「ティファニーで朝食を」や「冷血」の作者よ!彼は作家デビュー直後からマスコミによく取り上げられていた人ではあったが、いきなり俳優としてこんな重要な役を・・・(驚)。本来はオーソン・ウェルズが候補だったそうだが(撮影と舞台出演が重なって出演できなかった)、ウェルズならもっと貫禄たっぷりに演じただろうが、このちょっと浮世離れした変人感はカポーティで良かったと思う。逆に有名俳優達がちょっと食われ気味だし。彼の演技は必見。ちょっとエルトン・ジョンに似ていると思うのは・・・筆者だけか(苦笑)。

 オチは勿論書きませんが、二転三転・・・ゴロンゴロンどんでん返しが続いて、最初観た時は永久に終わらないんじゃないかと思った(爆笑)。「あそこの部分の謎は何だったんだ?」という箇所もあるけど・・・そこはコメディーという事でスルーしましょう(笑)!

 ちなみに邦題が「名探偵再登場」という作品もあって主なスタッフやキャストは同じながら、こちらはハードボイルド映画のパロディーで設定は引き継いでいないので御注意あれ。

 

 最後に・・・ニール・サイモンによるとアレック・ギネスは今作の撮影の合間、次に出る映画の台本を読んでいたという。その映画のタイトルは「スター・ウォーズ」!!

脚本を誉めていたという。以上、スター・ウォーズファンにはちょっといい話でした^^