<其の710>デ・パルマ新作寸評&アガサ・クリスティー原作作品

 先日、ようやく観ました!ブライアン・デ・パルマ監督最新作「ドミノ 復讐の咆哮」(’19)!デンマーク、フランス、イタリア、ベルギー、オランダの合作ということで・・・本国ハリウッド資本で撮れない状況が続いてますなぁ(苦笑)。

 お話は主人公の刑事の相棒がいきなり殺された事をきっかけに、お話がドンドン転がっていって国際的スケールの事件にまで発展していく・・・というサスペンス(タイトル通りの“ドミノ”状態)。

 正直言えば・・・出来は「並」。お話の割には大してスケール感も感じない「B級」です(きっぱり)。ただ、デ・パルマのファンならば、約8年ぶりの新作という事で、これまで通りの華麗なカメラワーク&盟友ピノ・ドナッジオによる不穏さ満点の音楽に酔いしれる筈^^。あくまでファンだけにお薦めしますわ。筆者はファンなので良かったけど🎵

 

 筆者がミステリー小説のファンでもある事は以前から書いていますが・・・近年の話題作「屍人荘の殺人」でも取り入れられた“クローズド・サークル(=閉鎖された空間の意)”という設定は本格ミステリ―にとって基本中の基本のひとつ・・・となってます。その代表作にして、21世紀のミステリー界にも多大なる影響を与え続けているのがイギリスの女流作家アガサ・クリスティーによる「そして誰もいなくなった」。クリスティーといえば、近年リメイクもされた「オリエント急行殺人事件」や「ナイル殺人事件」(これもリメイクされて公開予定)、ビリー・ワイルダー監督による傑作「情婦」他で知られる超メジャー作家。中でもこの有名な作品は場所を変えたりして何度か映画化されていますが・・・一番出来が良かったのは1945年にハリウッドで作られたバージョンだと思います。原作読んでる人も映画はオチ変えてあるのでご安心を^^。

 

 年齢も職業も異なる8人の男女が、とある孤島に招かれ2人の召使が出迎えた。ところが招待状の差出人オーエンは姿を現さない。代わりにあったのは10体のインディアン人形・・・。夕食後、召使がオーエンの指示に従ってレコードをかけると、突如、彼ら10人の過去の罪を告発する声が響きわたる。その直後、1人が突然、毒によって殺された!それは館に置かれた童謡「テン・リトル・インディアン」の楽譜を連想させる死に方で、同時に人形も1体壊されていた・・・。電話もないこの島に迎えの船が来るのは3日後。完全に孤立した彼らの運命は如何に・・・!?

 

 クローズド・サークルに加えて、童謡を使った“見立て連続殺人”!日本の作品でいえば横溝正史の「獄門島」や「悪魔の手毬唄」の世界❤これぞ現実ではまずありえない王道ミステリーの醍醐味(笑)!!

 監督はフランス人監督ルネ・クレール(1898~1981)。ルネさんといえば「巴里の屋根の下」(’30)、「ル・ミリオン」(’31)、「自由を我等に」(’31)の他、「巴里祭」(’32)、「幽霊西へ行く」(’35)、「悪魔の美しさ 」(’50)、「夜ごとの美女」(’52)、「夜の騎士道 」(’55)、「リラの門」(’57) 等で知られる<名作フランス映画入門>には必ず出てくる御方。この当時、彼は戦火を逃れてフランスからアメリカに来ていたのですよ。そこで演出したのが今作。我がブログで彼を取り上げるとは・・・開設当初、筆者も予想していなかった(苦笑)。ちなみに出演している俳優さん達はイギリスの人が多いみたいだけど・・・現代視点でメジャーな人がさほどいないので割愛!

 本格ミステリ―だから余り詳しく書けないし・・・現在視点で観ればつっこみどころも多々ある&モノクロの古い作品ゆえ余り映画観てない若い人だと乗れないかもしれないけど、登場人物たちが疑心暗鬼になってお互いをドアの鍵穴から覗きあう、原作にはないコミカルな場面は笑わせてくれるし、中でも真犯人が姿を現すクライマックスのカメラワークは・・・マジでドキドキした!文章では決して表現できない<映像>ならではの屈指の名場面^^。

 筆者的には舞台となる無人島の描写が「館周辺及び薪小屋」と「館前にある海岸」ぐらいなので、せめて1カットでもいいから空撮で<完全な孤島>である事と<館以外に島には特に何もない>ーという画があれば、映画的に更に良かったとは思う。でも1945年当時を考えれば・・・筆者の欲しがりすぎか(笑)。 

 

 毎年、小説も映画も話題作が刊行&公開されるミステリー界ですが、今作を観る&原作を読んでおくのは生涯において損はしないと思います。マジでお薦めします。

 

 

 <追記>コロナウイルスの影響で映画「ドラえもん」他が公開延期に!!更にこの先、映画館まで閉鎖とかなったら・・・どうしよ!?早く終息しますように(祈)!